月末締め翌々月払いは受けていい? 支払期日60日以内の見方

新井一

新井一

テーマ:起業

給料日の感覚のまま受けると入金の谷が見えない

――新井さん、初めて個人で仕事を受けた方が、納品後に「月末締め翌々月払い」と気づいて不安になるケースがあります。これは受けても大丈夫なのでしょうか?

新井:大丈夫かどうかは、金額だけでは判断できません。最初に見るのは「いつ納品して、いつ入金されるか」です。会社員の給料は毎月決まった日に入りますよね。でも個人で受ける仕事は、納品した月に1円も入らないことがあります。月初に納品して月末締め翌々月払いなら、入金まで70日、90日近く空くこともある。まずその空白を、自分の生活費と事業の支出で持ちこたえられるかを見ます。

――「単価がよければ受ける」だけでは足りないですね。

新井:そうです。10万円の仕事でも、入金が2カ月先なら、それまでのカード代や交通費、外注費は先に出ていきます。逆に5万円でも翌月に入るなら資金繰りは楽になる。独立や起業準備の初期は、利益よりも現金の流れが大事です。受ける前に締め日と支払日を聞く。これだけで見え方が変わります。

フリーランス法の60日は受領日から数える

――支払期日には法律上の上限もあると聞きます。どこを押さえればいいですか?

新井:フリーランス・事業者間取引適正化等法では、報酬の支払期日は、給付を受領した日から起算して60日以内に定めることになっています。ここで大切なのは「検収が終わった日」ではなく、発注側が成果物を受け取った日から数えることです。月末締め翌月末払いなら、月初納品でおよそ60日です。ところが月末締め翌々月10日払いや翌々月末払いになると、月初納品では60日を超えやすい。

――では、60日を超えていそうならすぐ断るべきでしょうか?

新井:いきなり断らなくて大丈夫です。相手の規模や取引形態によって義務のかかり方は変わりますし、再委託の例外もあります。ただ、発注条件を書面やメールで明示してもらうことは大切です。「納品予定日から入金予定日まで何日になるか確認したいのですが」と聞けば、攻撃的にはなりません。60日を大きく超えるなら、翌月末払いにできないか相談する余地はありますよ。

金額を答える前に締め日と支払日を聞く

――実務では、どんな聞き方をすれば角が立たないでしょう?

新井:いちばん簡単なのは、見積額を答える前に「締め日はいつで、その締め分はいつ振り込まれますか」と聞くことです。これは値上げ交渉でも催促でもありません。経理処理の確認です。むしろ、ここをすぐ答えられる担当者は管理がしっかりしています。返事は電話だけで終わらせず、発注メールや注文書に残してもらう。あとで自分が資金繰り表に転記できる形がいいですね。

――支払日以外にも見落としやすい条件はありますか?

新井:あります。請求書の提出期限、支払日が休日に当たったときの扱い、検収の締め、納品日が締め日の翌日にずれた場合です。締め日を1日またぐだけで、入金がまるごと1カ月後ろへ行くことがあります。だから「月末締め」だけで安心しない。納品日、締め日、支払日の3つを横に並べて、実日数で数えてください。

2カ月空いても止まらない受け方に変える

――入金が遅い仕事でも、受けたい場合はどう備えればいいですか?

新井:まず毎月の固定支出を小さくします。初期費用、通信費、外注費、広告費をいきなり膨らませない。僕は会社員のまま起業を始める方には、生活費とは別に、事業の運転コスト6カ月分は見ておいてほしいと話します。売上が大きいから続くのではなく、入金が遅れても止まらない支出の範囲にしてあるから続くのです。

――単発の仕事ばかりだと、入金の波も大きくなりそうです。

新井:その通りです。単発を追うだけだと、忙しい月と入金の月がずれ続けます。少し慣れてきたら、月ぎめの契約や継続的な確認業務に組み替えられないか考えてください。たとえば資料作成だけでなく、毎月の更新、チェック、相談対応まで含める。請求の締め日もそろえる。これだけで、生活費をいくら残すかの判断がかなり楽になります。

受けるか断るかは日数を数えてから決める

――最後に、支払条件を見て不安になっている方へ、最初の一歩をお願いします。

新井:手元の注文書や発注メールを開いて、納品予定日、締め日、支払日を書き出してください。その間が何日あるかを数えるだけで、怖さの正体が見えます。月末締め翌々月払いを必ず悪と決めつける必要はありません。ただ、知らないまま受けるのは危ない。入金までの空白を知ったうえで、支出を下げる、支払日の短縮を頼む、継続契約に変える。この順番で動けば、個人の仕事はもっと安定して受けられますよ。

――「いつ入るか」を聞くのは、お金に細かいのではなく、仕事を続けるための確認ですね。ありがとうございました。

新井:まさにそうです。続けるための確認ですから、遠慮せず聞いてください。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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