会社員の起業準備、自己資金はいくら必要? 資金計画で失敗しない「0円起業の落とし穴」と現金管理の本質
65歳からの起業は無理をしない設計から始める
――新井さん、再雇用が終わる65歳前後の方から「年金に少し足すくらいの起業はできるか」という相談はありますか?
新井:あります。しかも、かなり現実的な相談です。65歳から何かを始めるというと、若い人と同じように頑張らなければいけないと思う方がいますが、そこは違います。年金という土台があるなら、目指すのは大きく稼ぐことより、体力と時間に合う形を先に決めることです。
――「いくら稼げるか」より、「どのくらいなら続けられるか」が先なのですね。
新井:そうです。月3万円でも5万円でも、年金に足せる収入があると気持ちはかなり変わります。ただ、そのために毎日詰め込んで体を壊したら意味がありません。週に1回なのか2回なのか、半日だけなのか。稼働量を先に区切るほうが、結果的に長く続きます。
まず年金にいくら足したいかを決める
――最初に決めるべき数字は、売上目標でしょうか?
新井:売上より先に、暮らしにいくら足したいかです。年金の見込み額を見て、毎月あといくらあれば安心かを出します。3万円でいいのか、5万円ほしいのか、10万円必要なのか。この額によって、選ぶ仕事の形も稼働量も変わります。
――大きく始める前に、必要な規模を下げて見るわけですね。
新井:そうです。月5万円なら、毎日働かなくても届く可能性があります。相談業なら月に数回、教える仕事なら少人数の講座を月に何回か。地域の手伝いなら、体調の良い日に入れる。最初から会社員時代のフルタイム感覚で考えないことです。65歳からの起業は、自分で量を調整できるのが強みですよ。
経験をそのまま小さな仕事に変える
――どんな仕事が向いているのでしょうか?
新井:大きく3つあります。1つ目は、現役時代の専門を相談の形にすること。経理、総務、品質管理、技術職など、長く担ってきた分野は中小企業にとって価値があります。フルタイムで雇うほどではなくても、月に数回だけ見てほしいという需要はあります。
――経験を「薄く長く」提供する形ですね。
新井:2つ目は、趣味や好きなことを教える形です。写真、家庭菜園、書道、楽器、パソコン操作など、長く続けてきたことを同世代に教える。大きく稼ぐというより、感謝されながら続けやすい形です。3つ目は、地域の軽い手伝い。庭の手入れ、簡単な修理、買い物代行、ペットの世話などですね。どれも、これまでの生活や仕事の延長線上にあります。
前職のつながりは自然な入口になる
――最初のお客さんは、どう見つければいいですか?
新井:いきなり知らない人に売り込まなくても大丈夫です。前職で関わった取引先、地域の知人、趣味の仲間など、「この人なら自分のことを分かってくれている」という相手に、小さく声をかけるところからでいい。たとえば元メーカーの品質管理職の方なら、「月に2回だけ工程チェックを見ましょうか」と提案できます。
――営業が苦手な人でも、声をかけやすそうです。
新井:そうですね。65歳からの起業で大事なのは、勢いで広げることではありません。すでに信頼のあるところに、できる範囲の役割を出してみることです。最初の1社、最初の1人に必要とされる感覚が戻ると、それが続ける力になります。金額以上に、「まだ自分の経験が役に立つんだ」という手応えが大きいのですよ。
体力を守るために仕事量を先に決める
――うまくいき始めると、頼まれた分だけ受けてしまう人もいそうです。
新井:そこは本当に注意してほしいです。頼まれるとうれしいですからね。でも、無理をして続かなくなると、相手にも迷惑をかけます。最初から「週2回まで」「午前中だけ」「月に4件まで」と決めておく。仕事が増えたら単価や内容を調整する。量を増やすことだけが成長ではありません。
――体調の波も見込んでおく必要がありますね。
新井:はい。65歳からは、体力を前提に組むのではなく、体力を守るために組む。調子の良い日に動ける仕事、急に休んでも代替しやすい仕事、移動が少ない仕事。このあたりを選ぶと続けやすいです。起業は自分で設計できる働き方ですから、自分に厳しすぎる設計にしないことです。
今日できるのは足したい額を一つ決めること
――最後に、再雇用終了後の働き方を考えている方へ、最初の一歩をお願いします。
新井:まず、ねんきんネットなどで受給見込みを確認して、毎月いくら足したいかを一つ決めてください。3万円でも5万円でも構いません。その数字が決まると、必要な仕事量が見えてきます。そこから、自分の経験、好きなこと、地域で頼まれてきたことを並べてみる。
――大きな起業計画より、暮らしに合わせた設計図を作るのですね。
新井:その通りです。65歳は、働き方を選び直せる年齢です。これまで積んできた経験は、まだ十分に使えます。大切なのは、若い頃と同じ走り方をしないこと。年金に少し足す、体力に合わせる、必要とされる範囲で続ける。この順番なら、無理なく自分の名前で収入を作っていけますよ。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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