起業準備にいくらかかるか分からず怖い場合のお金の整理法

新井一

新井一

テーマ:起業

怖いのは金額ではなく見えていない状態

――新井さん、会社員の方から「起業準備にいくらかかるか分からず怖い」という相談は多いのでしょうか?

新井:多いですね。いきなり何百万円も必要なのではないか、貯金が少ない自分には無理なのではないかと、動く前に止まってしまう方は少なくありません。でも、ここで見てほしいのは金額の大きさより、金額が見えていない状態そのものです。見えないものは誰でも怖いですよ。

――「いくら必要か分からない」ことが、不安を大きくしているのですね。

新井:そうです。店舗を借りる人と、自宅のパソコンで始める人では、必要なお金がまったく違います。だから平均額を見て「自分には無理」と決めるのは早い。まずは自分の始め方なら、最初にいくら、毎月いくら、いくら入れば回るのか。この3つを仮の数字で出してみることです。

お金の不安は3つの数字に分ける

――具体的には、どんな順番で数字にすればいいですか?

新井:最初に「始めるのに最低いくら要るか」です。道具、登録、材料、オンラインツールなど、最初の1回に必要なものだけを出します。開業届そのものに費用はかかりません。次に「毎月いくら出ていくか」。通信費、仕入れ、場所代などですね。最後に「いくら入れば回るか」。この順番で見ると、不安がだいぶ小さくなります。

――正確な見積もりでなくてもいいのでしょうか?

新井:最初はざっくりで構いません。大事なのは桁を見ることです。数万円なのか、10万円台なのか、100万円単位なのか。それが見えるだけで、「怖い」から「では規模をどう下げるか」に変わります。起業準備は、いきなり大きな勝負にする必要はありません。会社員のまま、小さく試す前提で考えると選択肢が増えますよ。

高い始め方を前提にしない

――費用を考えると、会場、広告、教材などを全部そろえたくなる人もいそうです。

新井:そこが落とし穴です。最初から立派に見せようとすると、お金はいくらでもかかります。たとえば講座を始めたいなら、最初から会場を借りなくてもいい。知り合い数人にオンラインで教えて反応を見る形でも始められます。広告を出す前に、身近な人に一度提案してみることもできます。

――「起業にはお金がかかる」のではなく、「お金がかかる始め方を選んでいる」場合もあると。

新井:まさにそうです。起業18フォーラムでも、元手をかけない始め方の実例を見て「あ、こんなに小さくていいんだ」と安心する方がいます。食品メーカーで品質管理をしていた40代の方は、最初は会場や教材を全部そろえようとして止まっていました。ところが、オンラインで1人に教える形に変えたら、元手は数万円で済んだのです。

安く売れば安心というわけではない

――費用を抑えられると、次は「安くすれば売れる」と考えてしまいそうです。

新井:それも気をつけたいところです。お金の不安を減らそうとして単価を下げすぎると、今度は働くほど苦しくなります。材料費、移動時間、準備時間を考えたら、手元に残らない価格では続きません。元手を抑えることと、安売りすることは別です。

――最初の単価は、どう決めればいいでしょう?

新井:まず一件あたりの原価と手間を出します。材料がいくら、準備に何時間、対応に何時間。ざっくりでいいので数字にする。そのうえで、相場の一番安いところに合わせるのではなく、自分の手元に残る線から考えます。最初から高額にする必要はありませんが、赤字の仕事を増やしても自信にはなりません。

数字を出すと相談できる不安に変わる

――一人で数字を出しても、それが現実的か分からない人も多そうです。

新井:だからこそ、出した数字を誰かに見てもらうことが大事です。「最初に3万円かかりそうです」「毎月の固定費は5,000円くらいです」「1件1万円で売れれば回りそうです」。ここまで具体化できると、相談する側もされる側も話が進みます。漠然と「お金が不安です」だけだと、解決策も漠然としますからね。

――怖さを消すというより、扱える形にするのですね。

新井:そうです。不安があること自体は普通です。むしろ、お金のことを何も考えずに始めるほうが危ない。今日できることは、紙に3つの数字を書くことです。最初に必要な額、毎月出ていく額、回すために必要な売上。この3つが見えれば、起業準備はぐっと現実の話になります。

――「何百万円ないと無理」と思い込む前に、自分の始め方で数字を出してみることが大切ですね。

新井:はい。会社員のままなら、収入の土台を残しながら試せます。小さく始めて、数字を見て、少しずつ直す。お金の不安は、頭の中で膨らませるより、手元の数字にしてしまったほうがずっと扱いやすいですよ。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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