会社員が起業しやすい時代に「それでもやれない」と言う人の頭が良すぎる理由|起業18フォーラム代表・新井一氏が語る「セカンドペンギン起業術」と無限の可能性
違和感は危険信号ではなく出発の合図
――新井さん、30代に入ってから会社に違和感があるのに、辞める踏ん切りはつかない。こういう状態で起業準備を始めてもいいのでしょうか?
新井:始めていいですよ。むしろ、辞めるか辞めないかを決める前に始めてほしいですね。30代は仕事も回せるようになり、評価もある程度固まってきます。その一方で、「この先10年も同じ働き方なのか」と急に息苦しくなる。これは甘えではなく、次の選択肢を探し始める合図です。
――違和感があるなら、すぐ退職を考えるべきなのかと悩む方も多そうです。
新井:そこを二択にしないことです。会社に違和感があるから退職、という順番にすると重くなりすぎます。まずは会社員のまま、自分で動かせる小さな仕事の種を探す。準備が進むと、辞めるかどうかは後から考えられるようになりますよ。
辞める踏ん切りを入口にしない
――踏ん切りがつかない自分を、優柔不断だと責めてしまう人もいます。
新井:責めなくて大丈夫です。生活も収入もあるわけですから、簡単に辞められないのは自然です。むしろ守るものがある人ほど、いきなりゼロか百かで考えない方がいい。毎月の給料がある状態は、起業準備ではかなり強い土台です。焦って安売りしなくていいし、失敗しても生活がすぐ崩れない。
――会社員の立場は足かせではないのですね。
新井:はい。足かせではなく、試すための余白です。退職を先に置くと、準備が「人生を賭けた大勝負」になってしまいます。でも在職のままなら、週末に一つ相談を受けてみる、知人に困りごとを聞く、外の勉強会に出る、といった小さな行動で始められる。踏ん切りは、手応えが出た後で十分ですよ。
最初に変えるのは付き合う相手
――では、具体的には何から始めると動きやすいですか?
新井:最初に変えるのは、付き合う相手です。毎日会う人が同じ会社の同僚だけだと、違和感はモヤモヤのまま残ります。会社の外で、自分の仕事を持っている人や、準備を始めている人と話す時間を作る。これだけで、見える景色がかなり変わります。
――情報収集より、人に会うことが先ですか?
新井:そうですね。ネットで調べると、成功例も失敗例も一気に出てきて、かえって動けなくなる人が多いです。けれど、一歩先の人に「最初の半年は何をしましたか」と聞くと、行動が具体になります。週末の講座でも、体験会でも、少人数の勉強会でもいい。今の自分より半歩先にいる人の空気を浴びることが大切です。
頼まれてきたことが仕事の種になる
――外の人と話すと、自分に何ができるかも見えてきますか?
新井:見えてきます。ここで多くの人が、新しい資格や特別なスキルを探しに行きます。でも、最初に見るべきなのは、これまで頼まれてきたことです。資料づくり、後輩の相談、社内の調整、面倒な段取り。本人には普通でも、他の人にとっては助かることがある。そこに仕事の種があります。
――30代だと、職場での役割も少しずつ増えている時期ですね。
新井:そうです。20代の頃より、任されてきたことが増えている。だから棚卸しの材料もあるはずです。たとえば生産管理をしている人なら、中小工場の段取り改善を手伝えるかもしれない。営業事務をしている人なら、見積りや顧客対応の整理を支援できるかもしれない。起業の種は、遠くの派手なスキルではなく、近くの頼まれごとに隠れていることが多いですよ。
小さな手応えが選べる位置を作る
――実際に、違和感から準備を始めて変わった方はいますか?
新井:います。メーカーで生産管理をしていた30代後半の方は、会社に違和感を持ちながらも辞める決断はできませんでした。最初は独学で情報を集めて止まっていたのですが、起業18フォーラムの勉強会で一歩先の人たちに会い、自分の経験を中小工場向けの業務改善サポートとして整理していきました。
――会社は辞めずに進めたのですか?
新井:辞めずに進めました。平日の夜と週末だけですから、立ち上がりはゆっくりです。でも、相談を一つ受け、紹介を一つ増やし、18カ月ほどかけて月10万円前後の副収入が見えるところまで来ました。大事なのは金額だけではありません。「辞めるしかない」ではなく、「続けることも、将来辞めることも選べる」位置に立てたことです。
今日やることは、決断ではなく入口に立つこと
――最後に、今まさに踏ん切りがつかず止まっている方へ、今日の一歩を教えてください。
新井:退職願を書くことではありません(笑) 会社の外で、一歩先の人がいる場を一つ選ぶことです。オンラインの無料講座でも、体験会でも、少人数の勉強会でもいい。申し込みボタンを押すだけなら、生活は何も崩れません。でも、そこから会う人が変わり、言葉にする内容が変わり、頼まれてきたことの見え方も変わります。
――踏ん切りより先に、環境を少し変えるのですね。
新井:はい。違和感は、今すぐ辞めろという命令ではありません。今の場所だけで人生を考えなくていい、という知らせです。まずは在職のまま、小さく外へ出て、自分の仕事の種を言葉にしてみる。準備が進めば、決断はもっと静かに、現実的にできるようになりますよ。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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