介護で時間ゼロでも起業準備はできるのか? 朝晩30分から積み上げる『非同期型ビジネス』の現実

新井一

新井一

テーマ:起業

「介護が始まった日、起業準備は終わった」と思っていませんか?

――新井さん、今日は深刻なテーマなのですが、親の介護が始まった会社員の方からの相談が増えていると聞きました。本当に介護中でも起業準備って続けられるものですか?

新井:相談は本当に増えていますよ。「半年前に親の介護が始まりました」「在宅勤務にしてもらいましたが、空いた時間は介護に消えます」と。一番多いのは40代後半から50代前半の方ですね。皆さん、介護が始まった瞬間に「起業準備はもう無理だ」と思ってしまいます。

――それは諦めるしかないのでしょうか?

新井:いえ、結論から言うと、僕の経験では「介護があるからこそ作れる事業の切り口」があるのですよ。実際、起業18フォーラムには実父の在宅介護をしながら起業準備を続けたKさんという50代女性がいまして、介護開始から24カ月後にカウンセリング業を立ち上げました。最初の3カ月はまったく動けなかったのに、ですよ。

――24カ月……。長いようで、現実的な期間ですね。

新井:そうですね。介護はゴールが見えないからこそ、「いつ終わるか」で考えると消耗します。先に「続けられる形」を作ってしまうことが先決ですよ。

転機は「まとまった時間を取ろうとするのを諦めた」こと

――Kさんはどうやって時間を作ったのですか?

新井:これが本当に大事なポイントですが、Kさんは「半日まとまった時間」を取ることを完全に諦めたのです。代わりに固定したのが、朝5時半から6時の30分と、夜21時から21時半の30分。合計1時間ですよ。

――たった1時間ですか? それで足りるのですか?

新井:足りますよ。1日1時間でも、24カ月積み上げれば720時間になります。これだけあれば、ブログ60本書いて、商品設計をして、モニター10名を獲得することまで普通にできますね。介護中の方が陥りがちなのが「土曜日にまとめて3時間やろう」というプラン。これは100%崩壊します(笑)

――確かに、土日に何が起きるか分からないのが介護ですものね……。

新井:そうですよ。だから時間の単位を「半日」から「30分」に切り替える。これが介護中の起業準備で続ける唯一のコツですね。

介護中だからこそ向いている『非同期型ビジネス』

――時間が確保できたとして、どんなビジネスを選べばいいのでしょうか?

新井:介護中の起業準備に向く条件は3つあります。1つ目が「非同期型」、リアルタイムでお客様と対面しなくていいこと。2つ目が「短時間で完結」、30分単位で作業を区切れる業態ですね。3つ目が「ストック型」、書いた記事や録画した動画が後から動き続けるもの。

――Kさんは何を選んだのですか?

新井:「介護経験のあるカウンセラー」というポジショニングですね。介護中の人向けに、メールでやり取りする非同期型のカウンセリングを月8,000円で提供しました。同じ立場の人にとって、Kさん自身の介護経験そのものが価値になったのですよ。

――自分が抱えている苦労が、そのまま誰かの助けになる。すばらしい発想ですね。

避けてほしい『介護中NG』の起業準備パターン

――逆に、介護中に手を出してはいけないジャンルもありますか?

新井:はっきりありますよ。1つ目が納期が厳しいクラウドソーシングの受注業務。中断しにくいので、急に親が体調を崩したときに動けません。2つ目が定期的なオンラインミーティングが必須のサービスですね。3つ目が在庫を抱える物販。発送業務で外出が必要になりますから。

――どれも、介護のリズムと相性が悪いですね……。

新井:そうですよ。「すぐに収入になりそう」という理由でクラウドソーシングを選ぶ方は多いですが、介護中に手を出すと続かない。ここは僕が現場で何度も見てきたパターンです。

制度面の追い風も使い切ってほしい

――最近は「仕事と介護の両立」を支援する動きも出てきていますよね。

新井:はい、経済産業省が2026年3月に「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を更新しました。会社の介護休業制度や在宅勤務制度を最大限活用しつつ、自分の事業は朝晩30分で積む。この合わせ技が、これからの会社員のスタンダードになりますよ。

――個人で頑張るのではなく、使える制度は全部使う、と。

新井:そうですね。「介護があるから無理」と諦めるのか、「介護があるからこの切り口で進む」と腹をくくるのか。同じ状況でも、選ぶ言葉でその後の景色が変わってきますよ。

最後に伝えたい、続けられる人の共通点

――介護中で「もう自分は終わった」と感じている方に、メッセージをお願いできますか?

新井:介護はゴールが見えないからこそ、自分の時間の単位を小さくして「続けられる形」を作ることが何より大事なのです。Kさんは24カ月後に違う景色に立っていました。あなたも、明日からの朝晩30分を、まずは1週間だけ続けてみてください。それだけで「自分にもできる」という小さな確信が芽生えますよ。

――焦らず、でも諦めず、ですね。今日は本当に勇気をもらえるお話でした。ありがとうございました!

新井:こちらこそ、ありがとうございました。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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