「独立したら収入ゼロの期間がある」は本当ですか? 在職中にできる唯一の対策
売れるかどうかは机の上では分からない
――新井さん、起業アイデアが本当に売れるのか不安で、作り込む前に止まってしまう方は多いのでしょうか。
新井:とても多いです。慎重なのは悪いことではありません。むしろ、外したくないと思えるのは本気で考えている証拠です。ただ、売れるかどうかを机の上で考え続けても、答えは出ません。答えを持っているのは、頭の中ではなく、お客様の反応だからです。
――調べても、競合を見ても、不安が消えないことがあります。
新井:それは情報が足りないのではなく、一次情報が足りないのです。あなたの商品案に、目の前の人がどう反応するか。そこは出してみないと分かりません。調べれば調べるほど「もう誰かがやっている」「市場が厳しそう」と、動かない理由ばかり増えます。まず小さく出す順番に変えることが大切です。
完成前に告知を出して反応を見る
――小さく出すというのは、商品が完成していなくてもよいのですか?
新井:よいです。完成品ではなく、告知を1つ出して反応を見ます。誰の、どんな悩みを、いくらで解決するのか。それだけを書いた案内を1枚作る。申し込みボタンまで置ければ十分です。SNSで「こういう相談を受けようと考えています」と投げるのもいいし、知り合い3人に金額つきで聞くのもいいですね。
――作ってから売るのではなく、売れるか確かめてから作るのですね。
新井:そうです。拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』でも、完璧主義は起業準備の大きな敵だと書きました。100点を目指して半年止まるより、20点の案内を出して反応を見るほうが前に進みます。反応が返ってくると、直す場所が具体的になりますよ。
反応ゼロは失敗ではなくデータ
――告知を出して反応がなかったら、やはり落ち込みそうです。
新井:落ち込みますよね。でも反応ゼロは、即「アイデアがダメ」という意味ではありません。届く相手が違ったのかもしれない。言葉が伝わっていなかったのかもしれない。本当に需要が薄いなら、悩みの向け先をずらせばいい。反応ゼロも、「この出し方では届かない」と分かった貴重なデータです。
――作り込んでから知るより、早く安く知れるわけですね。
新井:まさにそこです。検証の目的は、いきなり当てることではありません。外れを早く、安く見つけることです。お金をかけてサイトを作り、教材を作り、全部整えてから「誰も欲しがらない」と知るほうが痛い。会社員のままなら、生活を守りながら小さく外せます。
小さな検証で見る3つのポイント
――反応を見るとき、どんな点を確認すればよいでしょうか。
新井:3つ見てください。1つ目は、いいねではなく申し込みに近い反応があるか。2つ目は、相手がどの言葉に反応したか。3つ目は、お金を払ってでも解決したい悩みなのか。この3つです。「いいですね」が100あっても、誰も買わないならまだ検証中です。逆に1人でも有料で頼みたい人がいれば、そこには芽があります。
――数よりも、財布が動くかを見るのですね。
新井:そうです。ある会社員の方は、Web系のスキルで起業を考えていました。最初はメニューを増やしすぎて、料金表も複雑になり、半年たっても告知できませんでした。そこで悩みを1つに絞り、案内を1枚だけ出した。最初の問い合わせは月3件です。でも、そのうち1件が紹介につながったことで、直すべき言葉と対象が見えました。
お金をかける前に確かめる意味
――最初の反応が小さくても、そこから育てればよいのですね。
新井:はい。先ほどの方も、半年ほどで問い合わせが月8件になり、8カ月目には月12件の相談が安定して入り始めました。最初から完璧に作り込んでいたら、1年たっても出せなかったかもしれません。小さな反応から直したから、無駄な作り込みを避けられたのです。
――準備にお金をかける前に、検証する意味がよく分かります。
新井:日本政策金融公庫総合研究所の2024年度新規開業実態調査では、開業費用の平均は985万円、中央値は580万円です。もちろん全員がそこまで必要という話ではありませんが、世の中にはかなりのお金をかけてから始める人が多い。だからこそ、会社員のうちに小さく反応を見る価値があります。
会社員のままなら何度でも試せる
――最後に、アイデアを出すのが怖い方へメッセージをお願いします。
新井:商品が固まっていなくても、テスト販売の告知を1つだけ出してみてください。誰の悩みを、どんな形で、いくらで解決するのか。それを書くだけで、机の上では絶対に見えなかった反応が返ってきます。反応がなくても、信用が大きく傷つくわけではありません。まず狭い範囲で試せばいいのです。
――検証は、怖さを減らすための行動でもあるのですね。
新井:そうです。会社員という安全網があるからこそ、何度でも試せます。慎重さは弱点ではありません。完成を待たずに反応を見る形に変えれば、慎重さは回り道を減らす武器になりますよ。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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