中高生のための初時事英語!“民主主義の行方が決まる、歴史的な選挙の年”
主体を曖昧にする日本語にとって代名詞は無用の長物
小学低学年から中高生への移行期、中間にある、小5~小6対象の「トランジッション・クラス」の今週の文法タスクの肝が「代名詞」です。
なんとしても、中学に入る前に、代名詞を制覇、反射的に出るよう、右脳に叩き込んで欲しいと思っています。
というのも、中高の教師時代を含め、長く英語教育に関わった経験から、日本の生徒にとって、代名詞は、英語嫌いになるか否かの分岐点であることを痛感しているからです。
そもそも、日本人は言語化を避け、空気を読み合い互いの意図をさぐり合う民族です。
実際の会話において名詞さえ省くのに、なぜ、その代替となる代名詞などいちいち口にするでしょう?
私はまず代名詞を教える前に、それが日本語にとっていかに不自然なものか、そのリアルな違いをまず把握してもらいます。
英語の教科書によくある例の代名詞の表を見せながら、授業で、
「you, your, youの和訳、あなた、あなたの、あなたに、という言葉を日常使ったことありますか?」と問うと、
「ないよ。あなた、なんて。」
「生まれて一度もないかも。」
と口々に言います。
元気なサッカー少年が、
「おまえ、とか、おめぇ、とかだったらありますよ。」
と言えば、あるしっかり者の女子さんが、
「悪さしている男子に注意する時、あなた、って使ったことがあるかも。」
彼らの「あなた論」になるほどと思いました。
小学生といえどもあなどれません。
そして、ずばり、he, his, him, (彼は、彼の、彼を、彼に)she, her, her(彼女は、彼女の、彼女に、を)について「普段言ったことある?」と聞くと、すかさず、口々に
「ないない!彼とか彼女なんて。」
「そんな言葉使ったら、キモイって言われます。」
「カレカノとか恋話(こいばな)の時だけじゃない?」
「でも、彼氏なんかいないし、使ったことない~。」
とまあ、大盛り上がりです。
さすが、トランジッション・クラスは、各教室から集まった小学高学年の精鋭たちの集まりです。
こうして、日本語にはめったにない外国語の表現を日本の日常に敢えてリアルに置き換えることができるのは、言語能力に長けている証拠です。
代名詞は、主格、所有格、目的格を、いついかなる時でも、逐次明確にする日本語にはない英語の特徴で、その境界線が曖昧な日本語話者にとってやっかい極まりないものです。
よって、代名詞となると、当会でも「英語ってめんどくさ~い!先生、やっぱ英語ってやんなきゃいけもんですか?」などという生徒は必ずいます(笑)。
私はこの違いを逆に、「おもしろい。」と思って欲しいのです。
代名詞を制覇するには、主体である自身を基軸とし、二人称、三人称、一人称複数、二人称複数、三人称複数といった相関関係を瞬時にメタ認識する必要があります。
その時、「私、俺、我々」などと、他者との関係性によって主語さえ変化する日本語表現では見えてこない、心象景色が浮かび上がるのです。
代名詞が親子間でも対等な個の一線を引く
それは、親密な家族関係でも違ってきます。
下記、カナダの大学から長期休暇で一時帰国している娘との実際の英会話です。
(父親に不都合な話題について、母娘でいつの間にか英語で話すのようになっています。
それは例えば、最近できた娘の日本人の彼氏についてだったりします。)
私は、中3からカナダ留学している娘の、カナダでは当たり前のその直截的な物言いが、日本の男の子には、かなりきつく感じるのではと、懸念しています。
日本語において「彼」という言葉はボーイフレンドについてしか使わないという、トランジッション・メンバーの指摘にも叶った好事例、娘の許可を得て公表します。↓
Me: Hey! How is going with your boyfriend, honey?
私:ねえ、彼氏とは最近どう?
My daughter: It’s kind of OK.
娘:まあ、うまく行ってるよ。
Me: Well, I think you’d better refrain yourself a little bit to get along with him.
私:あのさ、彼氏とうまくいくために、ちょっと控えめにした方がいいなじゃい?
My daughter: What do you mean?
娘:どういう意味?
Me: I mean Japanese boys are not used to a straightforward girl like you.
私:日本の男の子ってあなたみないにはっきり物を言う女の子に慣れてないってことよ。
Daughter: Come on! I always want to be just myself.
Besides, he's not the type of guy to be judgmental like you.
娘:あのねぇ。私はいつだってただ自分らしくありたいの。それに、彼は、ママみたいに、人を決めつけるような人じゃないから。
I : Really? But maybe he's only pretending that way at first to get you to like him.
私:本当?あなたに好かれていと思って、最初のうちだけそんなふりをしてるだけじゃないの?
Daughter: Mom! You are so annoying. None of your business.
Stay out of my private stuffs. Zip your mouth, period!
娘:ママは、ほんと、うざいのよ。大きなお世話。私のプライバシーに口出ししないで。口を閉じて。以上!
まず、和訳において代名詞がほとんど消えていることがおわかりでしょう。
そして英語において、親子といえど、Iとyouで個人として平等に対峙し、個の一線を引くものだという英語圏の思考がわかるかと思います。
元編集・ライターでもある私は、日本語を無論愛しています。
しかし、正直、英語で話している時に、日本語で思考している際には不透明だった自身の考えや対人関係問題が、霧が晴れるようにクリアになることがよくあります。
小学高学年、トランジッション・クラスは、思春期の入り口に立った子どもたちです。
まさに自己確立期のスタートラインにおいて、英語の代名詞を制覇することは、極めて意義深いことだとご理解いただければと思います。