本焼き包丁は、どんな包丁か、お話します②

和包丁の極み、と言えば、だれもが知ってる、本焼き包丁、でしょう。
刀と同じ作り方をしている包丁、とか、
鋼をわざわざ使って作るんだ、とか、
テレビや配信されるのを、お好きな方も、多いと存じます。
ですが、
素人の方が、本焼きを扱うお店様にいらして、「これください」
と、おっしゃっても、
良心的なお店様ほど、「扱いきれないと思いますよ」
と、売って下さらないことがあります。
よく切れる、と評価が高いのに、プロにしか扱いきれない、何でだろう?
本日は、そんな疑問に、ある程度、お答えできたら、と思ってのコラムです。
扱いきれない、の、本当の意味は
大工道具で、私も、やはり、同じようなことがございました。
まな板を削りたくて、
プロ・オンリーのお店に、ちょっとイイ鉋を買いに行ったら、
「素人さんはダメだ」と、断られちゃいました。
鉋は、刃も大切だけど、「台」の木の養生が、とっても大事だそうで。
そうとは知らなかった私、どうしても必要だったので、
お店のオーナーに頭を下げて、初心者向けの鉋を教えて頂きました。
包丁に、話を戻します。
私のような板前が、若い頃、本焼き包丁を、人生で最初に手に入れた動機、は、
見栄、とか、飾るとキレイ、とか、自慢できる、とか。
あー、ほとんど、見栄ですね(笑)
昔も高かったですが、現在ほど、本焼き包丁が、高嶺の花だった頃でもない。
とにかくプロらしく、1本は手に入れて、と思っていたのが本音。
たいていは、扱いきれなくって、まずどこかに仕舞う。
すぐサビるから、たとえば、チョッとかわいい後輩に、あげちゃう。
ー。
本当に必要になるのは、そんな時から10年くらいしてから、でしたか。
どうしてそうなるのか、を、お話するのに、
本焼き包丁の、性能的なお話をしましょう。
良いポイント:とにかく切れる。切れ味が3倍長持ちする。オーダーできる。
悪いポイント:研ぐのが辛い。1日で錆びる。おっかない。
この中でですね、「おっかない」って、ありますね。
おっかないお話は、皆様もお好き、と存じますので、
本日はこれをお話しましょう。
板前さんですから、包丁で手を切っちゃったり、当然します。
本焼き包丁で誤って切ると、
切れた瞬間は、案外そんなには、痛くないです。大丈夫。
でも、そのすぐ後で、思い知ります。
思った以上に深く、スパッと行かれた傷口。ぼたぼた出血。
ぞぉ~っ。
未体験の「切られ感」です。全然、大丈夫じゃない。
ご存じの方は、落語の「首ちょうちん」、あれの指先版だ、と思ってください。
何と申しましょうか、「心」が切れる感じです。
一度やってしまうと、もぅ~~、次は、
手に持つだけで、腕とか足が、少しすくみます。
これが、本焼き包丁が、おっかない理由です。
その、おっかない包丁を、切れるようにするのに、
普通の包丁なら、10分もあれば、ギンギンに研ぎあがるのに、
本焼き包丁は、30分は、かかります。
「この、おっかない包丁を、30分も、砥石に当てるのか・・・」
ね。どんどん、リフレインしちゃう。
これがすべて、とは申しませんが、
他に、もっと便利で、怖くない包丁が、いっぱいありますから。
たとえば、こんな感じで、半端な職人は、扱いきれなくなるわけです。
ーその2へ続くー
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