人手不足倒産はどうして起きるか

河野創

河野創

テーマ:ハローワーク、人事、労務、採用、リテンシ


社会保険労務士ですが、採用コンサルタントとして、毎月「ハローワークを活用した超低コスト採用セミナー」を開催しています。

対象者は経営者と採用担当者と書いて案内するのですが、たいていの場合、参加者の多くは総務・採用担当者で、経営者はほとんどいらっしゃいません。

顧問先にの社長さんにお話を聞いても「採用は担当者にまかせているよ」といわれますが、「売り上げや利益には興味はあるけど、採用は興味がないし苦手でね」というケースが本音のようです。

しかし、2019年は経営者が採用から避けて通れなくなってきている、つまり「採用」を無視すると大変な時代になってきています。

■少子高齢化のツケは採用で払っている

今の日本は少子高齢化社会です。

人手不足だ、人がとれないと悩んでいるのは中小企業の皆さんだけではありません。
実はオリエンタルランド(ディズニーランドの運営会社)のような誰でも知っている有名企業も人手不足で悩んでいるのはご存知でしたか。

オリエンタルランドはもちろん東京近郊でも求人を行っていますが、実は仙台市でもやっています。

浦安、市川、幕張といった東京側の京葉地域では、オリエンタルランドのほかに、アマゾンの大物流センターや、イオンの本社など、大量の求人が必要な企業がひしめきあっています。

そんな求人激戦区では、あのオリエンタルランドですら求人に苦労しているのです。
千葉で人とれない、だから仙台で採用案内を出している。インターネットで求人状況を覗いてみると、こんなキャッチコピーが踊っています。

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仙台駅の駅前では求人チラシも配っているそうです。
大企業のオリエンタルランドですらそれくらいがんばって人探しをしています。

■会社の成長に必要なこと

日本では人を雇用して会社経営をすることがとても難しい時代になっています。
会社の成長は、すべて採用から始まります。しかし今は、従業員一人採用するだけでも難しい時代になってきています。

採用してから次にすべきことは、採用した人を育成して業績アップにつなげていかなければなりません。

そして採用と並んで大事なことは、せっかく手間とお金をかけて採用した人や、今あなたの会社で働いている人に会社を辞めてもらわないような対策(引止め策)を講じなければならないことです。

この3つがそろわないと会社の成長はありえません。

■成長企業の必須科目

しかし、2019年もバブル期並みの求人難です。まず会社を成長させようにも、その入り口の採用で躓いている中小、零細企業がほとんどです。

そのうえ、今働いているひとさえ賃金や就業時間などの条件のいい会社に簡単に転職してしまいます。これでは成長どころか業績維持も危ういところです。

もっと大変なのは、優秀な人がある日突然やめていくことです。
こうなってくると業績維持どころか、下手をすると人材がショートして企業が倒産する時代です。

経営者にとっては、全力で販売、調達、資金繰りを行いながら人を採用し、教育し、さらに人がやめないように目配り、心配りができていないと大変な状態な状態になってきています。

■資金ショートと人材ショート

私もかつて零細卸売業の社長でしたので「資金ショート」の言葉を聴いただけで背筋が凍ります。「今月2000万円払ってくれるはずの会社が倒産しました。月末500万円足りません。」なんて経理から報告を受けた瞬間に、営業も広告も販売計画もすべて頭の中から吹っ飛んでしまいます。

まず銀行に今月の返済は来月に延ばせないか相談します。

次に取引先に事情を説明して、来月入金を今月だけ払ってもらえないか、または今月末の支払いを来月支払いに延ばせないかお願いします。

それでも足りないときは、まず自分の定期預金を解約します。家でも車でも抵当に入れられるものや売れるものは現金に換えます。奥さんのへそくり150万円を借ります。それで足りないときは両親に頭下げ、奥さんのご両親に頭下げる。

そして月末はなんとか凌げる、となったら半年先までの資金繰りを必死で計算します。来る日も来る日も胃が痛くなる毎日です。

次の何ヶ月かのうちにもう一軒お客様が倒産したら、完全に資金ショートで自分の会社も連鎖倒産です。

でも、人材がショートすると会社が倒れるということをなかなか実感していません。

■人材ショートに危機感を持たない経営者

人材がショートすると、たいていどの会社も放置します。経営者は、「すぐに求人を出すから残っている社員でがんばれ。」といいます。

しかし、求人難の状態ですから求人広告や求人票を出しても、おいそれと人を採用できるわけではありません。

残った社員で、抜けた人の穴埋めをするわけですが、仕事の量が増える、でも相変わらず経営者は何もしてくれない。

これが続くと人がやめていくんです。

引止め策、つまり優秀な社員の引止め作がどうして必要かと言うと、優秀な人がやめてからでは間に合わないからなんです。

大事なことは優秀な人がいればその人にやめていかないような目配りはしてますか?気配りはしてますか?

これがないと、いざその人がいなくなると会社をやっていけなくなる。これが人手不足倒産です。
■まとめ

日本の2019年の採用はこれだけ切実でしんどいことになっています。小手先を変えただけで人手不足の問題を根本的に改善できるものではありません。

経営者がもし、人事の方針に無関心で、「勤務条件、社風、福利厚生、従業員のスキルアップ」を全部無視して会社経営したら、たとえば勤務条件マイナス、社風マイナス、福利厚生ゼロ、スキル身につかない、そんな会社であれば倒れてしまいます。

まずは、経営者自らが人事・労務に積極的にかかわることが会社成長の根幹の時代になっているのです。

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河野創
専門家

河野創(社会保険労務士)

青山人事労務

前職で、人事評価制度の見直しにとり組んだ経験で、中小企業の働き方改革に強みを発揮する。また、自身の海外駐在経験から、日本の労務管理では対応できない海外駐在員の人事労務のノウハウを持つ。

河野創プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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