【本の紹介】テストの点数だけでは見えない力とは?『「非認知能力」の育て方』を読んで考えたこと
「勉強したらご褒美をあげてもいい?」
「子どもはたくさんほめた方が伸びる?」
「ゲームをすると成績が下がる?」
「勉強しなさいと言った方がいい?」
子育てや教育については、
いろいろな「こうした方がいい」があります。
私自身も学習塾で多くの子どもたちを見ていると、
「こういう子は伸びやすいな」
「こういう勉強の仕方はうまくいきにくいな」
と感じることがあります。
ただ、ここで気をつけたいことがあります。
「自分がそう感じた」ことと、
「実際に多くの子どもに効果がある」ことは
同じではありません。
そんなことを考えさせてくれる一冊が、
教育経済学者・中室牧子さんの
『「学力」の経済学』です。
今回は、
この本をきっかけに、
家庭での子どもとの関わり方について
考えてみたいと思います。
「自分の経験」だけで教育を考えていませんか?
教育について話すとき、
よく登場するのが自分自身の経験です。
「私は子どものころ毎日3時間勉強した」
「私は親に厳しく言われたから勉強した」
「自分は塾に行かなくても大丈夫だった」
もちろん、
一人ひとりの経験には意味があります。
しかし、
一人の成功体験が、
すべての子どもに当てはまるとは限りません。
兄弟でも性格は違います。
同じ言葉をかけても、
やる気になる子もいれば、
逆にやる気をなくす子もいます。
『「学力」の経済学』のおもしろいところは、
教育について「私はこう思う」だけではなく、
多くの研究やデータをもとに考えていくところです。
これは、
未来舎の記事を書くうえでも
大切にしたい考え方です。
塾で実際に子どもたちを見て感じたこと。
研究によって確認されていること。
この二つを混同しない。
教育だからこそ、
「なんとなく良さそう」だけで
判断しないことも大切だと思います。
「テストで100点ならご褒美」と「本を1冊読んだらご褒美」は違う?
この本の中で、
保護者の方にも身近でおもしろいテーマの一つが
「ご褒美」です。
子どもにご褒美を与えることについて、
「ご褒美で勉強させるのはよくないのでは?」
と感じる方もいると思います。
ところが、
ここでも大切なのは
「ご褒美をあげるか、あげないか」だけでは
ありません。
「何に対してご褒美を与えるのか」
という視点があります。
本書で紹介されている大規模な研究では、
「テストで良い点を取ったらご褒美」
という結果(アウトプット)へのご褒美と、
「本を読む」「宿題を終える」
といった行動(インプット)への
ご褒美が比較されています。
そこで重要になるのが、
「子ども自身が何をすればよいか分かるか」
という点です。
「次のテストで90点を取りなさい」
と言われても、
勉強の仕方が分からない子にとっては、
「どうすれば90点になるの?」
となってしまいます。
一方、
「今日は問題集を2ページやる」
「本をここまで読む」
なら、
自分が何をすればいいのか分かります。
これはご褒美を使うかどうかに関係なく、
家庭学習でも参考になる考え方だと思います。
「次のテストで20点上げよう」より「今日はここまでやろう」
これは、
未来舎で子どもたちを
指導するときにも
大切にしていることです。
「次のテストで20点上げよう」
という目標だけでは、
子どもは具体的に何をすればいいのか
分かりません。
そこで、
英単語を10個覚える。
数学の問題集を2ページ進める。
昨日間違えた問題をもう一度解く。
というところまで小さくします。
結果ではなく、
「その結果につながる行動」を
具体的にする。
これは家庭でも使えます。
「もっと勉強しなさい」
ではなく、
「今日は何をする?」
「数学はどこまでやる?」
「昨日間違えた問題、もう一回やってみる?」
と考えてみる。
「勉強しなさい」と言われても
何をしたらいいか分からなかった子が、
具体的な行動まで見えると
動きやすくなることがあります。
大きな結果を求める前に、
今日できる小さな行動に変えてみる。
これは勉強を続けるうえでも大切だと思います。
「頭がいいね」より、何をほめる?
ほめ方についても、
本書では研究をもとに考えています。
テストで100点を取ったとき、
「頭がいいね」
とほめる。
「よく頑張ったね」
とほめる。
同じ「ほめる」でも、
子どもへの伝わり方は同じではありません。
ここで未来舎でも大切にしたいのは、
結果だけではなく、
そこまでの行動を見ることです。
「100点だったね!」
だけで終わるのではなく、
「前に間違えた問題をもう一回やっていたね」
「毎日英単語を覚えていたね」
「分からないところを先生に質問できたね」
と、具体的な行動を見る。
そうすると子ども自身も、
「何をしたから今回できたのか」
を振り返ることができます。
逆に点数が悪かったときにも、
「もっと頑張りなさい」
だけで終わらせず、
「今回は何が足りなかった?」
「次は何を変える?」
と考えられます。
点数を見ることと、
点数が生まれた過程を見ること。
両方が必要だと思います。
データがあれば「絶対に正しい」わけでもない
この本を読むうえで、
もう一つ大切にしたいことがあります。
それは、
「研究でこうだった=目の前のわが子にも必ず同じことが起こる」ではない
ということです。
研究は、
多くの人を対象にしたときに
どのような傾向があるのかを
考えるための大切な材料になります。
でも、子どもは一人ひとり違います。
年齢も違う。
性格も違う。
家庭環境も違う。
得意・不得意も違う。
だから私は、
「研究でこう書いてあるから、全員こうしなさい」
という使い方ではなく、
経験だけで決めつけないための材料の一つとして、
研究やデータを見る
ことが大切だと考えています。
未来舎でも、
実際に目の前の子どもを見る。
これまでの指導経験を生かす。
そして、
必要に応じて研究やデータも確認する。
その三つを大切にしていきたいと
思っています。
「勉強しなさい」の前に、何をすればいいか一緒に考える
『「学力」の経済学』を読んで改めて感じるのは、
子どもの結果だけを変えようとしても、
なかなかうまくいかないということです。
「もっと点数を上げて」
「もっと勉強して」
「次は頑張って」
もちろん、それで動ける子もいます。
でも、
「頑張るって、何をすればいいの?」
という子もいます。
そんなときは、
今日何をするのか。
どこまでやるのか。
間違えた問題をどうするのか。
分からないときは誰に聞くのか。
「頑張れ」と言う前に、
「何をすればいいか」を
一緒に具体的にしてみる。
そこから始めてもいいのではないでしょうか。
未来舎でも、
単に「勉強しなさい」と言うのではなく、
一人ひとりの状況を見ながら、
何が分かっていないのか。
どこから勉強すればいいのか。
どんな勉強の仕方が必要なのか。
を一緒に考えることを大切にしています。
教育を「なんとなく」ではなく、
目の前の子どもと、
これまで分かっていることの両方から考える。
『「学力」の経済学』は、
子育てや教育について
一度立ち止まって考えてみたい方に
おすすめしたい一冊です。
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【今回紹介した本】
『「学力」の経済学』
著者:中室牧子
教育について語られるさまざまな「常識」を、
教育経済学やデータの視点から考える一冊です。
「子どもにどう声をかければいい?」
「ご褒美を使ってもいい?」
「どうすれば勉強するようになる?」
といった身近な疑問について、
経験談だけではなく
研究から考えてみたい保護者の方にもおすすめです。
購入はこちら↓
『「学力」の経済学』


