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会社は自分のキャリアをつくる場所でもある

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テーマ:キャリア



「キャリア」と聞くと、転職や昇進、資格取得などを思い浮かべる人が多いかもしれません。あるいは、

「これからどんな仕事をするのか」
「将来、どんな仕事に就きたいのか」
ということを考えるものだと思っている人もいるでしょう。

もちろん、それもキャリアの一部です。
でも、キャリアは転職するときや、将来について考えるときだけにつくられるものではありません。
私たちは、日々の仕事を通じてキャリアをつくっています。

会社は「働く場所」だけではない



会社に入ると、私たちは仕事を任されます。
先輩から仕事を教えてもらったり、新しい仕事を任されたり、失敗したり、誰かと協力したり。
そうした一つひとつの経験が、自分の知識や能力、人との関わり方、仕事に対する考え方をつくっていきます。
例えば、最初は「人前で話すのが苦手だった」という人が、仕事でプレゼンを任されるようになり、少しずつできるようになることがあります。
あるいは、後輩を指導する経験を通じて、
「人を教えることは意外と好きかもしれない」
と気づくこともあるでしょう。
反対に、
「この仕事は自分には合わない」
「こういう働き方はしたくない」
と気づくこともあります。
これらも、立派なキャリア形成です。

仕事をしながら「自分」を知っていく


過去のコラム『「好き嫌い」は仕事に持ち込んではいけない?』では「好き嫌い」について、『人にそれぞれある「譲れない」価値観を知ること』では、キャリア・アンカーについて考えました。
自分は何が好きなのか。
何を大切にしたいのか。
どんなことに、どうしても違和感を覚えるのか。
こうしたことを知るのは、自分らしいキャリアをつくる上で大切です。
ただし、自分のことを最初からすべて分かっている人はいません。
人には自分では気づかない一面もあります。
実際に仕事をしてみて初めて、
「これは自分に向いているかもしれない」
「思っていたより面白い」
「これはどうしても好きになれない」
と分かることもあるでしょう。
だからこそ、働くことそのものが、自分を知る機会になるのです。

「今の仕事=一生の仕事」ではない



「今の仕事が好きではない」
そう感じている人もいるかもしれません。
そのとき、
「だったら転職すればいい」
とすぐに考える必要はありません。
今の仕事の中にも、自分のキャリアにつながる経験があるかもしれないからです。
例えば、事務の仕事をしている人が、業務改善を任されたことをきっかけに「仕組みを考えることが好きだ」と気づく。
営業の仕事をしている人が、顧客の相談に乗る中で「人の話を聴くことにやりがいを感じる」と気づく。
製造の仕事をしている人が、新人を教える経験を通じて「人を育てることに興味がある」と気づく。
このように考えると、今の仕事は「最終地点」ではなく、次のキャリアにつながる経験の場として見ることができます。

会社は社員のキャリアをどう支えるのか


ここで、経営者や管理職の立場からも考えてみたいと思います。
社員にとって会社がキャリアをつくる場所だとすれば、会社にはどんな役割があるのでしょうか。
もちろん、社員一人ひとりのキャリアを会社が決めるわけではありません。
「あなたは将来、この仕事をしなさい」
と会社が決めてしまえば、それは本人のキャリアとは言いにくくなります。
一方で、会社には、社員がさまざまな経験をする機会を提供することができます。
新しい仕事を任せる。
少し難しい仕事に挑戦してもらう。
研修や学習の機会をつくる。
他の社員と一緒に仕事をする機会をつくる。
本人がやってみたいことについて話を聴く。
こうした環境があることで、社員は仕事を通じて自分自身を知ることができます。

「人を育てる」とは、何をすることなのか


企業では、「人材育成」という言葉がよく使われます。
しかし、人を育てるということは、会社が望む人材に社員をつくり変えることなのでしょうか。
私は、必ずしもそうではないと思っています。
社員が仕事を通じて、
「自分は何ができるのか」
「何が得意なのか」
「何を面白いと思うのか」
「どんなことを大切にしたいのか」
を知っていく。
そして、その人が自分なりのキャリアを考えられるようになる。
個人が主体的にキャリアを創造していくことを「キャリア自律」といいます。
個人が主体的にキャリアをつくることは、必ずしも組織の発展を妨げるものではなく、むしろ個人と組織がともに発展していく道を見出すこともできます。
このような機会を会社が提供することこそ、人材育成の大切な役割ではないでしょうか。

会社と社員は、それぞれ違うものを持っている


ここで、もう一つ大切なことがあります。
会社には会社の考えがあります。
経営理念があり、事業の目的があり、顧客からの期待があります。
一方で、社員には社員の人生があります。
その人自身の価値観があり、好き嫌いがあり、大切にしたいものがあります。
当然、この二つがいつも同じとは限りません。
だからといって、
「会社が社員に合わせるべき」
でも、
「社員が会社に合わせるべき」
でもないのだと思います。
むしろ、それぞれが持っているものを知ることから始まるのではないでしょうか。
会社は何を大切にしているのか。
自分は何を大切にしているのか。
その両方を知ることで、今の仕事の中に新しい可能性が見えてくることがあります。

「自分のキャリア」を会社の中で考えてみる


キャリアについて考えるとき、転職サイトを見たり、資格を探したりすることも一つの方法です。
でも、その前に今いる場所を少し違った角度から見てみてはいかがでしょうか。
今の会社で、まだ経験していない仕事はないでしょうか。
やってみたいと思っていることはないでしょうか。
今の仕事を通じて、身につけられることはないでしょうか。
そして、
「この会社で働くことで、自分はどんな人になっていきたいのだろう?」
と考えてみる。
会社は、単に給料をもらう場所ではありません。
自分自身を知り、経験を積み、誰かと関わり、成長していく場所でもあります。
だからこそ、今いる会社を「自分のキャリアをつくる場所」として見てみることに、大きな意味があるのだと思います。

では、会社は自分に何を期待しているのだろう?


ここまで、「自分は何を大切にしたいのか」という視点からキャリアを考えてきました。
しかし、会社で働く以上、もう一つ考えておきたいことがあります。
それは、
「会社は、自分に何を期待しているのだろう?」
という問いです。
自分が大切にしたいことと、会社から期待されていること。
この二つは、いつも同じとは限りません。
では、組織は社員に何を期待しているのでしょうか。
そして、環境が変化する中で、その期待や仕事の役割はどのように変わっていくのでしょうか。

次回は、エドガー・シャインの「キャリア・サバイバル」という考え方から、組織の中で自分の役割をどのように捉えていくのかについて考えてみたいと思います。

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福島治男(キャリアコンサルタント)

キャリアデザイン・メンタルサポート株式会社

製造業での会社員経験を生かしたキャリアコンサルティング。丁寧な傾聴で相談者の自律的な成長を支援します。組織課題を可視化することで、働く人と企業が共に成長できる環境づくりに貢献します。

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