労働生産性向上について考えてみて気づいたこと
カテゴリー「人材」は、人材育成・開発や自己啓発等、人の成長や能力発揮等に関する話題を取り上げます。人材育成で重要とされる要素のひとつは明確な目標です。会社が求める人材や自分がなりたい姿等が明確でなければ、何が課題なのかも分かりませんし、課題が分からなければ、どのような方法でその課題を克服して良いかも分かりません。その上、結果が出るまでに時間が掛かってしまうというのも、人材育成が難しいと言われる理由のひとつかも知れません。人の成長や能力発揮等に関して問題意識のある方の参考になれば良いなと思っています。
IT人材の最新動向と将来推計に関する調査
経済産業省が2016年 6 月に公表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査」によれば、ITに対する 需要が今後拡大する一方で、日本の労働人口(特に若年人口)は減少が見込まれており、IT人材の需要と供給の差(需給ギャップ)は、需要が供給を上回り、2030年には、最大で約 79 万人に拡大する可能性があると試算されています。例えば、2021年3月の大学卒業者数が約60万人ですから、途轍もない不足が予測されることがご理解頂けると思います。IT人材は、IT産業の産業競争力強化のほか、企業等における高度なIT利活用やデジタルビジネスの進展等を担っています。AIやビッグデータを使いこなし、第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手として、付加価値の創出や革新的な効率化等により生産性向上等に寄与できる IT人材の確保が重要となっているとしています。
地方の企業のITに関する悩みとその原因分析
「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査」については、どちらかというとIT産業に関わりの深い人材をイメージした話であって、地方の中小企業にとっては、そこまで影響を受けるものではないと思われる方も多いかも知れません。ですが、そうでもないんです。
私は仕事柄、特に中小企業の方々とお話させて頂くことが多いのですが、業務の非効率を自覚されているにもかかわらず、適切な解決方法に辿り着けず、非効率な業務を続けておられるというお悩みをよく耳にします。非効率な業務をそのままにしておくと、機会損失や労働時間の増加に直結しますので、さすがに経営者の方がそれを把握されると、我々のような会社等に相談されるという流れになります。ここでは、悩みの原因を語る前にITがうまく活用されていない理由を具体的にご紹介しましょう。
高額なシステムを入れたが誰も使わなかった
ITを導入すれば何かが良くなると考え、ベンダーの言われるがままに高額なシステムを導入してみたけれど、自社の業務プロセスに合わず、逆に仕事が増える等で結局誰も使わなくなってしまったというケース。このような苦い経験は、IT投資意欲を減退させることにもつながっています。
ITは面倒なもの
ITを導入すると、今までの仕事の進め方が変わってしまうので、手間が増えるように感じる。操作も覚えないといけないし、今までのやり方の方が仕事が早いに決まっていると考えてしまい、現場で中心となって働いておられる人がIT導入に反対されるケース。
どのITツールが自社に合うのか分からない
他社で導入しているITツールが良さそうだから、自分の会社にも購入してみたけど、上手く使えていない。気がついてみたら、似たようなITツールがたくさんあって、結果的に仕事が増えてしまっているようなケース。
上記のような事態に陥ってしまう最も大きな原因は、『ITスキルを身につけた人材の不在』であると考えています。そうであれば、そのような人材を採用すれば良いではないかと考える方もいると思いますが、多くの企業がIT人材を必要としており、売り手市場である上、IT人材を発掘する採用担当者側にもIT知識がないと、折角見つけた候補者が自社に適したIT人材であるかを判断できないというジレンマがあります。
若手従業員満足度とIT(デジタル化)
若手従業員がITについてどのように考えているかを、2021年6月にアドビ株式会社が発表した「業務のデジタル化と会社への満足度に関する調査結果」を抜粋してご紹介しましょう。調査対象は、2020年4月入社の500名だそうです。
約6割が「自社の業務のデジタル化は進んでいない」と感じている
業務をデジタル化することで業務効率が上がると思うかを聞いたところ、35.8%が「とても効率化される」と回答し、「どちらかというと効率化されると思う」と回答した46.2%と合わせて8割以上が効率化されると考えていることが分かったそうです。また、72.4%が業務のデジタル化を進めることは、仕事のモチベーションにも影響すると回答したそうです。
一方で、社内のデジタル化がどれくらい進んでいると思うかを聞いたところ、とても進んでいると回答したのはわずか9.8%で、約6割の回答者がデジタル化は進んでいないと感じている結果となったそうです。さらに、約9割の回答者が業務のデジタル化を進めて欲しいと考えていることが分かったそうです。また、未だにデジタル化できていない社内の慣習を聞いたところ、最も多かったのは「社内書類や決裁書の印刷と押印(61.8%)」で、「社外向け書類や契約書などへの押印や郵送」も半数以上が慣習として残っていると回答したそうです。
約7割の会社が入社手続きがデジタル化できていない
雇用契約書のやり取りなど入社手続きをオンラインで行ったと回答したのは全体の31.6%で、多くの企業で紙などを使った従来の方法で実施していることが分かったそうです。また、もしこれから再度就職活動をするとしたら、企業のデジタル化への取り組み度合いは企業選定基準においてどれくらい重要だと思うかを聞いたところ、22.2%がとても重要と回答し、どちらかというと重要だと思うと回答した48.6%と合わせると、全体の70.8%が、企業選定をする際、企業のデジタル化への取り組み度合いが重要だと考えていることが分かったそうです。
業務のデジタル化が進んでいると回答した人ほど会社への満足度は高い傾向
勤務する会社の環境に満足しているかを聞いたところ、「業務のデジタル化がとても進んでいる」と回答した人のうち「とても満足している」と回答した人が49.0%だったのに対し、「業務のデジタル化がまったく進んでいない」と回答した人では、「とても満足している」と回答した人が6.9%と大きな差が見られ、企業のデジタル化への取り組み度合いと会社の満足度には相関関係が見られたそうです。
教育機関におけるプログラミング教育
文部科学省では、プログラミング教育の推進を掲げ、学習指導要領で小・中・高等学校を通じてプログラミング教育を行うこととしており、2020年度からプログラミング的思考を育てる教育が必修化されています。プログラミング的思考とは、文部科学省によれば『自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力』と定義されています。では、少し長くなりますが、なぜプログラミング教育が必要であると考えられているかを文部科学省の資料から抜粋してご紹介します。
『今日、コンピュータは人々の生活の様々な場面で活用されている。スマートフォンや仕事を処理するパソコン、家電や自動車をはじめ身近なものの多くにもコンピュータが内蔵され、人々の生活を便利で豊かなものにしている。さらに、インフラや経済活動、生産活動等、社会の基盤でもコンピュータは不可欠となっている。誰にとっても、職業生活、学校での学習、家庭生活など、あらゆる活動において、コンピュータなどの情報機器やサービスとそれらによってもたらされる情報とを適切に選択・活用して問題を解決していくことが不可欠な社会が到来しつつあり、今後「Society5.0」と言われる、大量の情報を生かし、人工知能を活用して様々なことを判断させたり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代の到来が、社会の在り方を大きく変えていくとの予測がなされている。コンピュータをより適切かつ効果的に活用していくためには、その仕組みを知ることが重要である。コンピュータは人が命令を与えることによって動作するが、端的に言えば、この命令が「プログラム」であり、命令を与えることが「プログラミング」である。プログラミングによって、コンピュータに自分が求める動作をさせることができるとともに、コンピュータの仕組みの一端をうかがい知ることができるので、コンピュータが「魔法の箱」ではなくなり、より主体的に活用したり、社会における身近な様々なものの仕組みを理解したりすることにつながる。また、プログラミング教育は、障害のある子供たちも含め、その可能性を広げることにもつながる。プログラミングの能力を開花させ、創造力を発揮して、起業する若者や特許を取得する子供も現れており、将来の社会で活躍できるきっかけとなることや、新たな価値の創造が期待できる。このように、コンピュータを理解し上手に活用していく力を身に付けることは、あらゆる活動においてコンピュータ等を活用することが求められるこれからの社会を生きていく子供たちにとって、将来どのような職業に就くとしても、極めて重要なこととなっている。』
今、学校で学んでいる子どもたちは、コンピュータの使い方のみならず、プログラミングまで学んでいるということです。地域差はあるとはいえ、学校ではタブレットを使うのが当たり前で、配布資料もデジタル化されています。デジタル化が当たり前の環境で勉強しています。
プログラミング教育を受けた若者を受け入れる企業が考えなければならないこと
上述のとおり、小・中・高等学校を通じてプログラミング教育が行われ、2024年度からプログラミングが大学入試共通テストで必修化される予定となっています。2020年代後半には、学校でプログラミングを学んだ新卒者が就職してくるという計算になります。その新卒者は、業務の経験はありませんが、IT知識はありますし、子供の時からスマホやタブレットを当たり前に使っている、デジタルが当たり前の日常で育ってきた若者たちです。
私が社会人になった際(30年以上前)は、例えば報告書は手書きで、似たような内容であっても最初から書くことを面倒とは思いましたが、それが当たり前のことだと考えていました。逆に似たような内容だから、書き写せば良いので楽だと思っていたかも知れません。今は、報告書はパソコンで作成し、起票・承認はワークフローシステムによって電子的に行われ、電子的に保管されています。似たような内容の報告書を作成したいのであれば、過去の報告書をコピーし、必要な部分を修正して作成します。もし今、全て紙媒体に戻すと言われたら、途方に暮れてしまうことでしょう。さすがに全て紙媒体に戻るということは無いでしょうが、デジタルが当たり前だった環境から、当たり前ではない職場環境で働かなければならないとしたら、若者がその職場を選ぶかというと、かなり悲観的だと思います。
もし、プログラミング教育を受けたIT知識のある若者がデジタル化していない企業を選ばなかったら何が起きるでしょうか。デジタル化が進む企業とデジタル化が遅れている企業を比較して考えてみましょう。
デジタル化が進む企業
デジタル化が当たり前の企業は、IT知識のある若者が集まりやすくなり、ますます業務が効率化され、本来業務に割く時間が増えることで、事業拡大の可能性が増えます。
デジタル化が遅れている企業
デジタル化が遅れている企業には、IT知識のある若者が集まりにくくなり、組織にIT知識のある人材が増えず、デジタル化がさらに遅れます。また、人材が働きにくいと感じ、定着しないかも知れません。さらに悪いことに、組織が若者からの提案を理解できず、その若者が持つ能力を活かしきれません。
もちろん、若者が就職先を選ぶ際には、デジタル化の程度だけで判断するわけではなく、職業観によって選ぶものと思いますが、本来業務に割く時間が多い方が、働きがいがあると感じるのではないかと思います。
まとめ
テクノプロジェクトでは、お客様のIT導入のお手伝いをしております。多くの受託開発では、操作訓練をご支援していますが、お客様のITを使いこなすスキルは様々である一方、テクノプロジェクトが技術者集団であるため、ついつい専門的な用語を使ってしまうようなこともあり、課題があると考えているところです。テクノプロジェクトとしても、導入させて頂いたITシステムをフル活用して頂きたいという思いもあり、この課題を何とか解決できないかと考えていたところ、同じ課題を認識されている会社の方と出会い、お互いの強みを活かしつつタッグを組み、お客様の満足度向上やITスキル向上に寄与できないかと具体的に検討を進めてきております。近日中に発表されると思いますので、乞うご期待です。
2022/09/09追記
IT人材育成による地方創生に向けた業務提携についてプレスリリースしました。ご確認ください。
IT人材育成による地方創生に向けた業務提携