アメリカ環境保護庁EPAの薪ストーブ排ガス規制について

金子稔

金子稔

テーマ:薪ストーブの排ガス規制

       【EPA(アメリカ環境保護庁)の薪ストーブ排ガス規制について】

欧米では車だけでなく製造販売されるストーブにも厳しい排ガス規制が設けられています。
中でもアメリカ環境保護庁(EPA)の排ガス規制は世界で最も厳しいと言われています。

当然アメリカ国内で販売される薪ストーブもこのEPAが定める排ガス規制をクリアしていなければなりません。

1988年にEPAが最初の規制値(フェーズⅠ)を設定したときの値は、

触媒式のストーブで5.5g / 時間

非触媒式のストーブで8.5g / 時間 でした。

その後1990年にフェーズⅡが適用され、

触媒式で4.1g / 時間

非触媒式で7.5g / 時間 となり現在に至っています。

またEPAの基準よりも厳しい基準を設けているワシントン州(※トラビス社もワシントン州にあり)では、

触媒式で2.5g / 時間

非触媒式で4.5g / 時間 となっています。

さて次にこのEPAの認証試験について簡単に説明させていただきます。

認証試験はアメリカに5つある認定機関で検査員立会いのもと実施されます。

規定に基づき施工されている煙突システムのトップ部(ここでは割愛します)にフィルターを取り付け、そこに付着する堆積物の量を計ることで排煙量を調べます。

また試験で使用される薪も基準があります。

使用される薪は含水率19~25%のダグラスファーで、5×10センチ、または10×10センチに切ったものを、密度、安定性を確保するため束ねて使用します。

少なくとも1時間以上燃焼し、炉内に灰の床ができた後に計測をスタートさせ、4時間以上の平均値を採ります。

実は近年EPAサイドでこのフェーズⅡの規制値を下げる動き・・
つまりもっと厳しい基準を設ける方向性がうちだされており、ストーブ業界と水面下での激しい綱引きが行われています。

具体的にはEPA側はここ1、2年のうちにフェーズⅡをさらに30%ほど下げることを検討しています。

2017~2019年までに、触媒式ストーブ、非触媒式ストーブ共に1.3g / 時間 という非常に厳しい数値を掲げています。

このEPA側の新基準値では、非触媒式ストーブの大半がクリアできず、多くのメーカーが販売の機会を失うことになってしまうため業界に激震が走っています。


参考までに2014年3月時点で、EPAの新基準(1.3g / 時間)をクリアしている薪ストーブのリストを挙げておきます。

1 トラビス/ケープコッド            0.45
2 トラビス/フラッシュウッド・ハイブリッド   0.58 
3 ヴァ―モントキャスティングス/ディファイアント0.6
4 ヴァ―モントキャスティングス/アンコール   0.7
5 トラビス/スモールフラッシュ・ハイブリッド  0.89
6 セルカーク・カナダ/モデルHE36       0.97
7 ブレーズキング/チヌークアッシュフォード30  0.98 
8 モネッセン/センチュリー           1.0
9 ダッチウエスト/コンベクションスモール    1.1
  ハーマン/TL300           1.1
クゥワドラファイヤー/3100          1.1
  ハース&ホーム/4300             1.1
  クロッグアイバーソン/DSA4          1.1
14 ユナイテッドストーブ/2400          1.13
15 クゥワドラファイヤー/4300          1.2
  ニューバックコーポレーション/バックベイ    1.2
  ニューバックコーポレーション/ニューバック   1.2
18 ブレーズキング/チヌークアッシュフォード40  1.3
  ダッチウエスト/FA455             1.3
ダッチウエスト/コンベクションエキストララージ 1.3

いかがでしょうか!?

日本のみなさんに馴染みの無い名前のストーブがズラリと並んでいます。

世界で最も厳しい環境基準のEPAの数値見直しは今後ヨーロッパにどのような影響をもたらすでしょうか。

恐らくEUでは足並みが揃わないのでは? との見方が大勢のようです。

オマケで世界1クリーンな薪ストーブ、トラビス社のケープコッドの動画です。

EPA 認定機関

EPA 測定

アメリカ環境保護庁 EPA

先日訪問してきたトラビス社の工場内です。

EPAの認定機関の一つがここトラビス社内にあるんですね!

EPA 薪

ちなみにこの倉庫で保管されている木が試験で使用される薪になります。

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金子稔
専門家

金子稔(建築家)

エンフリー

薪ストーブ、ペレットストーブ専門の住宅コンサルタントとして、新築住宅の間取り設計段階から丁寧なアフターフォローまで、快適なストーブライフを送るためにさまざまなアドバイスをさせていただいております。

金子稔プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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