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“今買い物が少ない顧客”は将来も買わない顧客ではありません

鈴木一正

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テーマ:顧客戦略

【効率だけを追求すると将来の成長の芽を摘んでしまう?(その3)】

前回からの続きです。
大手から中小まで百貨店外商の働き方はどこも同じだと思うのですが、直近でのお買い上げが多い顧客に手厚く、少ない顧客はほとんど接点も持たない、という状況なのです。ある百貨店では直近でお買い物が少ない顧客からは外商カードを返却してもらっているそうです。

繰り返しなのですが、“今買い物が少ない顧客”は将来も買わない顧客ではありません。例えば、海外へ短期転勤していた、家族が病気になって看病していた、介護があった…等々、様々な理由があるのです。こうしたお買い物が少ない時期に百貨店側から冷たい仕打ちをするとどうなるでしょうか? これも実際にあった話ですが、某大手百貨店では外商顧客へ毎年年末にカレンダーを送っています。とても著名な画家がわざわざこのカレンダーために書き下ろした絵を使ったカレンダーです。顧客にとってはもらうと嬉しい。毎年、そのカレンダーを貼る場所を決めている方もいらっしゃるようでした。

ある年から経費削減のため、このカレンダーの部数を減らすことになりました。カレンダーの配付基準は「年間買上高●●円以上」と設定され、その基準に満たない顧客にはお渡ししないことになったのです。毎年、郵送(または手渡し)されてきたカレンダーが今年は送られてこない…。楽しみにしていた顧客から、当然のように問い合わせの電話が多数入りました。

「毎年、郵送してもらっているカレンダーが今年は送られて来ないんですが…。」

担当者は事情を説明せざるを得ないのですが、顧客は「最近お買い物してないから仕方ないですね。」と言ってとても残念そうにするのです。毎年、楽しみにして、そのために場所を空けてあるカレンダーが今年は来ない…。どう思うでしょうか? ぽっかりと空いた場所を見るたびに、「あの百貨店ではもう買い物をしない」と思われても仕方がないと思います。

「この製品を拡販したいんだけど、百貨店の外商を紹介してくれませんか?」と相談を受けた時には、いつも次のようにお話しをしているのです。

「今の外商は、お買い物が多い顧客に手厚く、少ない顧客に冷たいのです。しかし、御社の商材を得るためには広く認知度を高めていく必要があって、外商の働き方そのものを変えてもらう必要があります。その息の長い取り組みにお付き合い頂けるならばご紹介します。」

“今買い物が少ない顧客”は将来も買わない顧客ではありません。むしろ、今買い物が少ない顧客は将来の売上拡大の原動力になるのです。短期的な業績確保を優先して、将来の成長の芽を摘んでしまう今の働き方ではいずれ行き詰まると思うのです。

とは言え、業績好調の中では何を言っても…ですね。

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鈴木一正
専門家

鈴木一正(経営コンサルタント)

合同会社スズセイ

百貨店個人営業(外商)での経験をもとに、BtoC企業のお得意さまづくりをサポート。訪問や電話などアナログな接点づくりを大切にする顧客戦略の設計図を描き、お客さま本位の働き方改革を実現します。

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