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大澤秀行

生きる意味への気づきをもたらす精神分析家

大澤秀行(おおさわひでゆき) / 精神分析家

合同会社LAFAERO1(ラファエロワン)

コラム

不安障害:不安でたまらない心の構造と原因。不安が消える!

2022年11月3日 公開 / 2023年4月7日更新

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

「明日、上手くやれるかな…」「この先の生活は…」「事故にあったらどうしよう…」など
目の前のことだけでなく、未来や何かわけの分からない事に対して急に心配したり、不安でたまらなくなったことはありませんか。漠然と不安になって緊張してしまい、何もできない動けない、となることもあるのではないでしょうか。

また、周りの人に不安な気持ちをなかなか理解されず「気の持ちよう」「心配し過ぎ」「考えすぎ」と言われても、不安は消えるものではありません。

不安や心配、恐怖の感情が過剰につきまとってしまい、心のバランスが崩れ日常生活に支障が出てきたら、それは不安障害かも知れません。不安障害は心と体に様々な不快な変化をもたらします。

ここでは症例をもとに、不安の構造と原因を説き明かし、不安を断ち切る対処法を紹介します。




□不安でたまらない心の構造


-無時間を生きる心と、時間・空間を生きる体-

日常生活とは現実で、時間と空間があります。
例えば、8時~17時まで仕事であれば、時間は区切られています。体は職場に拘束され時間と共に、空間も区切られます。


ところが、心(精神)には時間・空間はありません。心は無時間の中に生きています。
全く次元の違う、体と心が一人の人間の中に存在しています。この無時間の心がつくりだしたものが、不安です。


【症例】
30代女性クライアント様の症例を通して、「無時間な心」が不安をつくる構造をお話しします。(クライアントをC、精神分析家をSと表記します)

C:「私は二度と不安に囚われないですか?」
S:「私とセラピーしている限りそれは無いです」
C:「本当ですか?」
S:「大丈夫です」
C:「でもまた電車に乗ったら過呼吸になるかもしれない」
S:「あなたは、もう過呼吸になりません」

どれだけ「大丈夫」と言っても、「不安です」と、不安を拭い去ることができません。 人は根拠を示さない限り、安心できないものです。



□不安とは、未来を過去にした今が不安

未来、必ずそうなると思っています。
今のままの解消は無く、このまま不安がずっと続くと仮定している、否、自分が体験した過去が、未来も必ず変わらず確実にそうなると思い込んでいます。

未来から振り返ったら今は過去、だから今普通に何事もなく暮らしていても、確定した未来の不安とすり替えて不安でたまらないのです。

ということは、未来が過去になって、現実になっている。過去が現実ならば、それは痕跡です。しかもネガティブな痕跡、過去。その未来を過去として、今の現実として、変わらずネガティブな未来を信じています。

それは「今」も無いことになります。ずーっと過去に居ます。ネガティブな過去に釘付けされたまま、一歩もそこを動いていません。


□変わらない過去は安心


では、なぜこの女性は
「あなたは電車に乗っても過呼吸にならない」
と言っても
「否、なるかもしれない。信じていいのでしょうか?」
と、未来を過去にするのでしょう。

それは「絶対過呼吸にならない!」という過去にしたいからです。過去は変えようがありません。変わらない過去「絶対過呼吸にならない!」という確信は安心をもたらすからです。

しかし、この女性はそれが出来ないから、不安が拭い去れません。今も未来もなく過去を生きています。未来を過去にした人に可能性という言葉は存在しません。


そこで訊きました。

S:「あなたは今、健康を害していますか? 死にそうになっていますか? 貧乏で貧しくて飢え死にしそうですか?」
C:「いいえ、普通に生活しています」
S:「それを幸せというのです」

今の規定が無い、今普通に幸せに暮らしているという認識がありません。常にあるのは不安だけだということ。
過去にした今と未来しか生きていないことが解りました。



□不安の原因2つ

1.信じられない


この女性は分析家が言う「大丈夫」という言葉が信じられないために、不安が拭い去れません。「分析家の言うことは信じられない」というフレーズをしっかり持っています。

自分の「信じられない」という不信を捨てない限り、「信じる」という心にはなりません。だからいくら「大丈夫」と言っても、不安でしかたないのです。

今、お話していることは「信じる」という言葉の構造を話しています。「信じる」対象の是非、「信じる」事の是非を言っているのではありません。

【例えば】
信号を見たとき、青でも赤に見えて赤だと言えばその人にとっては赤。自分のフレーズは赤です。
だから自分のフレーズを捨てない限り現実を見ることはできないのです。フレーズはそれを意味しています。


2.無時間を生きる心


心には時間がありません。その証拠に、今という次元に過去と未来が混在して、ごちゃごちゃに交じり合って存在しています。そのため過去も今も未来も弁別がつきません。

【未来を過去にして不安になる経緯】

-未来を考え過去にする思考-
①すでに起きてしまっている! 
②こうなるんだ!
③この運命は変えられない! 
④不安の確定

未来を過去にしてしまう、時制の能力、これこそが不安の本質です。



□不安の解消法3つ

1.不信を捨てる

不安の解消は「不信」というフレーズを捨てること。
捨ててから、「信じる」というフレーズを持つ。

そのときそうなるかならないかの問題ではありません。現象が一致するしない、実証するしないはここに含みません。「信じる」という言葉だけを持つ。

【なぜ「信じる」という言葉をもつだけでいいのか】
信じるということは、「大丈夫」という未来を過去にしないことになります。
今の延長と考えるのが大丈夫。


なぜなら、
今寝込んでいるわけでも、死んでいるわけでもありません。歩けるし健康、今の継続が未来にします。今の継続を支えるのが「信じる」という言葉。この機能、働きを「信じる」という言葉が行っています。
意味ではありません。

2.時間を区切る! 過去・今・未来

-「信じる」は無時間な心に時間を作る言葉、時間を区切る言葉 -

時間を区切ることにより、体と心は一致します。
過去は終わったこと、ゴミと規定して捨てる。捨てても過去は無くなるわけではなく、すべて自分の体の中に融合しています。60兆個ある体の細胞は1秒も同じ体はありません。
常に過去の体、時間を含んで今があります。考える必要は無いのです。終わったことは振り返らない。

簡単に言うと、死と生の繰り返しが時間を区切るということです。朝、起床して「おはよう」で今日の生が始まります。そして「お休みなさい」で今日の死です。今日は終わりです。

こうして生と死を繰り返します。
これが時間の区切りです。一つ一つ区切ることで時間が区切られます。

すると未来を決めつけることはできません。まだ来ぬ未来は、誰にもどうなるか何もわかりません。明日は確定していないのですから、不安は発生しようがありません。

3.今を生きる

そんなことより、「今を生きる」こと。
今、今、今、今の積み重ねが未来です。

今、自分がしたいこと、役割、すべきこと、一つ一つクリアしていくことの積み重ねが今です。そこには成功も失敗も、価値もありません。ただ今の連続があるだけです。

今―今―今ー今…の連続により、不安はスーッと消えてなくなります。


□まとめ


「信じる」という言葉の機能は、時間を区切る能力があることが判りました。意味は関係ありません。ただ信じるという、自分は「信じる人」と規定しその言葉に隷属して生きると、過去を生きることは無くなり、不安は消えます。

そして時間が区切られ、今の連続を生きれば、充実感で満たされるでしょう。


【セラピストの格言】
⇨「不安な人へ」 格言-92
⇨「今を生きたい人へ」 格言-93
⇨「悔やみに把われている人へ」 格言-94
⇨「不安の人へ」 格言-95

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