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大澤秀行

生きる意味への気づきをもたらす精神分析家

大澤秀行(おおさわひでゆき) / 精神分析家

合同会社LAFAERO1(ラファエロワン)

コラム

他人の言葉に傷つく自分を変える方法!どうして他人の言葉に傷ついてしまうのか?

2022年3月21日 公開 / 2023年4月7日更新

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング


他人に言われた言葉に傷ついてしまい、もう傷つきたくないと、自分を守りながら生きていませんか? ですが、自分を守りながら生きているといっても、人は一体自分の何を守っているのでしょうか? また他人のどういう言葉から自分を守っているのでしょうか? 

ここではこういった問いにお答えしながら、まずば「どうして他人の言葉に傷ついてしまうのか?」について明らかにしていきます。他人の言葉に傷つきやすい自分を変えるには、まずは自分が知らない自分を知るということが欠かせないからです。そして最終的には、他人の言葉に傷つく自分を変える方法について考えていきます。

どうして他人の言葉に傷ついてしまうのか?

傷つかないように人は自分を守りながら生きているものですが、守るというのは一体何を何から守っているのでしょうか?

まず何を守っているかというと、自己愛を守っています。外からの攻撃から自己愛を守っているのですが、この外からの攻撃とは一体何なのでしょうか? それは、否定してくる他人の言葉です。

少し専門的な話になってしまうのですが、自己愛論の中に自己は四つあります。まずは現実の自己、そして自己愛を決定づける誇大自己、次に理想自我、そして最終形の自我理想です。この中で一番傷つくのは誇大自己です。

さて、ここで誇大自己の本質を明らかにしましょう。誇大自己というのは形式でいえば現実の自己に対して大きく見せ、風船のように膨らませているイメージなのですが、一体その誇大感の中味は何なのでしょうか。何で膨らませているのかということです。この中味が分からないと、そもそも何を防衛するのかが分かりません。

本来のリアルな自分の評価をさらに上盛りしているのが誇大自己なので、自己愛を高めるための要素、つまり評価を上げる言語を考えていきましょう。それは、「高い、強い、大きい、長い、ナンバーワン」などです。例えば、身長への劣等感があったら、かかとの高い靴を履いて高く見せつけます。「お前は弱い」と言われれば、傷つくので強く見せます。「お前は小さい」と言われたら「いや、俺のでかいよ」と、誇大自己を持っていたら思わず言いたくなります。これはそれぞれかもしれませんが、「重い」もあります。「お前は軽い人間」と言われてより重厚な人に見せる、このようにこの言葉を否定してくる言葉から守っています。

否定というのは書き換えです。私は重いと思っていました。そこに「お前は軽率で軽薄だ」と言われたとします。すると傷つくというのはどういうことでしょうか。まさに自分はそれを知っていたということです。軽薄だから貫禄のある重厚な人間だという誇大自己を作ったのですから。他ならない自己認識をしていない限り自己愛は傷つきません。明確な自己規定なきところに自己否定も防衛も必要ありません。

但し、自分は軽薄だという自己認識とセルフエゴを持っていたら、軽薄と言われても傷つきません。あくまでも誇大自己の自己規定は自分を大きく見せた偽装自己なのです。リアルエゴは無意識に抑圧されていて、本来自分が意識しているのは誇大自己部分の自己意識です。

盛って大きく見せる、この時点においては否定される言語が山ほどあるので、それだけ防衛が必要になります。

言われて引っ掛かった言葉や気になって頭に残っている言葉、これは全て自己愛を刺激した言語です。これを否定してくる危険な言語ということを語っています。

他人の言葉に傷つかない自我もある

最初に自己愛論の中に自己は四つあると言いましたが、実はこの中に傷つかない自我もあります。それは自我理想です。自我理想に向かって発せられた否定の言葉は傷つきません。何故なら、それは自分にしか判らない自我だからです。自我理想が前景をなしている人には、即ちアイデンティティを持っている人には、自己愛の傷つきの防衛は必要ありません。

では現実自我と理想自我はどうでしょうか。「今お前のしていることは無意味だ、無駄だ」とか「そんな勉強して何のためになるんだ、お前がそんなことしても出来るわけないじゃないか」などと言われた場合を考えてみて下さい。傷つくでしょうか? これもしかし自我理想があれば、自我理想への道すがらだとすれば、傷つきません。しかしこれがモノマネだったとしたら、理想自我のただのパクリだったとしたなら、傷つくでしょう。すべては自我理想の有る無しによって全部意味は変わってくるのです。自我理想が確立していなければ誇大自己、現実自我、理想自我の三つは傷つきます。いや、自我理想のなさを誇大自己でカバーしている(防衛している)と言わざるを得ません。四つの内のどの自己が前景に出ているかによって、それが防衛か成長かを見極めることができます。

自己を成長させるための機能
自己防衛法は十二種類あるのですが、実はこれは守りだけではなく、自己を成長させるための自我システムの機能でもあります。

例えば「摂取」という防衛を例にとってみましょう。摂取が防衛になる人とは、モノマネのフリをする人です。即ち、相手に鏡像的に合わせることで攻撃対象から免れるという意味の防衛を持ちます。しかし、自我理想を持った人は自分より秀でた人の能力を摂り入れるという意味で、自分を成長させるという機能になります。自己愛の傷つきを守るという段階ではまさに防衛は障壁になり無傷になります。しかし、成長の段階では邪魔になります。意味が変わってくるのです。ただ摂り入れも、いくら自分より秀でたものだといっても、自分の能力を超えて摂り入れすぎてしまったら、それを処理する能力がついていかなければ、頭はパンクしてしまいます。こここそ防衛システムが必要になってしまいます。

他人の言葉に傷つく自分を変える方法とは?


誇大自己の本質のところでお話ししましたが、自分は軽薄だという自己認識を持っていたら、軽薄と言われても傷つきません。正しき自己認識も自己防衛は必要ありません。自我理想だけが防衛してくれるものではなく、自己認識が真の私として他者の言明を排除できます。いわゆる他者の言葉に一喜一憂しないということです。

誇大自己の傷つきを守るための防衛に生産性はありません。守りですので、言葉を排除し、打ち消すためのものでしかありません。誇大自己がなければ防衛システムは防衛のために使う必要はなく、建設的に使えます。

では誇大自己の防衛システムを無効にするにはどうしたらいいのでしょうか。それは、ありのままの現実を見ることです。現実に直面する、もしくは現実を直視する、この時点において防衛は要りません。人が現実と向き合った時、人は成長していきます。防衛機制という無駄な心的エネルギーを使わずに、ひたすら成長していく道を歩めるのです。

自己防衛というこの誇大自己の放棄以外に、人間としてのスタートはありません。何故なら、誇大自己を守るために生きているという人生になってしまうからです。その心的エネルギーを自我理想に全部向けたら、どんな素晴らしい人生になるでしょう。


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