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中谷崇志

オーナー目線で本当に必要な事を提案する賃貸管理のアドバイザー

中谷崇志(なかたにたかし) / 宅地建物取引業

株式会社トライアス

コラム

【コロナで需要増】マンション向け全戸一括インターネット設備の種類や違いについて

2020年6月9日 公開 / 2022年11月30日更新

テーマ:賃貸経営

コラムカテゴリ:住宅・建物

昨年12月のマイベストプロの開設以降、少しずつではありますが、当社記事へのアクセス数が増加傾向にあります。
閲覧してくださっている皆様、ありがとうございます。


さて、今回は不動産関係者に苦手な方が多いIT方面として、マンションの全戸向けインターネット設備の違いや選び方について極力、噛み砕いて書いていきますね。
構成の違いについては、中程で図解して、画像で載せてみました。

全戸向けインターネット設備の話なので、今回はあまり触れないですが、
全戸ではない、個別インターネット設備とは、戸建てでNTT等にインターネット回線契約をするように、マンションの居住者が個別に回線契約を申し込みする方式です。
費用も入居者持ちの、いわゆる従来の個別加入という方式ですね。

では、本題に入っていきます。



無料インターネット設備によるクレームとは

時事ネタになりますが、新型コロナウイルスにより、テレワークやWEB会議、オンライン授業など、インターネットを使い、多くの情報をやり取りする機会が多くなってきています。
また、在宅時間が増え、ネットショッピングや動画配信サービスで余暇を楽しむ方も増えています。

そんな中、速度の遅いインターネット設備を使用している物件では「動画の配信が止まる」「速度が遅い」「声と画像がずれる、飛ぶ」など、クレームの声が上がってきていると聞きます。

一昔前、テレビの配線工事を割安にする代わり、(今となっては)低速のインターネット回線を付属させるサービスが広がった部分もあり、時代に合わせて、インターネット環境の見直しをするタイミングが出てきているとも言えます。

「無料インターネット設備あります!」と謳っている物件が多くなる今、次は通信の品質が求められてきているのです。

できるだけ、入居後のクレームの元は改善していきたいですよね。
なので、導入(更新)の際は、ある程度の違いをきちんと把握して、需用と物件に合ったものを導入(更新)していきましょう。

実際、とあるポータルサイトの社員さんに聞いた話では、速度のかなり遅い無料インターネット設備は、ポータルサイトへのクレームまでつながっている事例があるらしく、ポータルサイトも困っているという話を聞いています。
例:「無料インターネット物件と見て入居したのに遅すぎて使い物にならなくて、結局自分で別契約をした」など
(去年の夏頃の聞いた話なので、今は、よりひどくなっているかもしれません)


※なぜ設備として人気であるのかをまとめた資料を作成いたしました。
ご興味有る方はこちらもお使いください。
これだけでわかるインターネット無料設備! 資料


ネットワークのイメージ


そもそも、インターネット無料設備(物件)とは

不動産オーナーが全戸分のインターネット回線費用及び通信設備を契約し、毎月費用を払い、
入居者には無料(有料の場合もあります)にて、インターネット回線サービスを提供する仕組みになっている物件のことを言います。
オーナー費用は家賃や共益費に上乗せすることもありますが、他物件への価格優位性確保のため、上乗せしない場合もあります。

特に単身向け物件に多く設備されている傾向で、新築住宅には最初から設備されていることが多くなってきています。
また、ポータルサイト(ホームズやスーモ)にも「インターネット無料」という設備チェックボックスがあり、求める方がポチッと押すと、その時点で設備のない物件が検索結果から外れることにもなってきています。

今後、品質の高いインターネット設備があるかないかという点は(特に立地だけで決まる都市部の駅前物件以外において)物件差別化に繋がることが考えられます。



全戸インターネット設備はどうやって導入しているのか

サービス契約先はマンションISP業者と言われる業界の会社になります。

【マンションISPとは】
ISPはInternet Service Provider(インターネットサービスプロバイダー)の略称で、
インターネットへ接続するには、「物理的な回線工事」と、「通信をインターネットへ接続させる部分の取次業務」を行っている会社(プロバイダーといいます)が必要で、両方をマンション向けにワンストップサービスで提供している会社のことを指します。

物件を見てもらい、必要な工事内容を確認し、毎月の費用を確認し、という流れで導入します。

【入居者からみた全戸導入型のインターネット設備のメリット】
・入居直後からインターネットが使用可能
(契約プランによっては、無線(Wifi)も設備に含まれていることもあり)
・仮に無料ではなく費用のかかるプランでも、個別加入よりは安い

【デメリット】
・インターネット設備の品質によっては、遅いことがクレームの火種になる
・個別加入の場合は受けられる携帯電話の割引サービスなどが、契約名義がオーナーのため受けられない
・部屋内にルーターなどを設置する場合、退去時に持っていかれることがある


マンションISPサービス4つの種類

全戸向けインターネット設備の中にも種類や違いが存在します。
大きくわけて4種類あります。

・光回線-LANケーブル型
・光回線各戸専有型
・同軸ケーブル型(テレビ線)
・共用部にWi-Fiアンテナ設置型

この辺からだんだん、読みすすめるのがしんどくなると思いますので、
配線の流れや構成を極力専門用語使わず、ざくっと絵にしてみました。

・光回線-LANケーブル型
光回線LANケーブル型

・光回線各戸専有型
光回線各戸専有型

・同軸ケーブル型(テレビ線)
同軸ケーブル型

・共用部にWi-Fiアンテナ設置型
共用部Wi-Fi設置型


さて、これらをどうやって選ぶのか、オススメをざっくり書いてしまうと・・・

品質も求める、でも費用中程度が良い!なら光回線-LANケーブル型

費用はかかっても良い、高品質を選ぶ!なら光回線専有型

宅内工事はできるだけ避けたい!かつRCやSRCの建物なら同軸ケーブル型

宅内工事はできるだけ避けたい!
もしくは費用を極力抑えたい!かつ木造やの鉄骨アパート(28戸以下)なら共用部Wi-Fi型


さて、少し詳しく見ていきましょう。

【光回線-LANケーブル型】
最もマンションISPで一般的なモデル。サービス提供会社も多い。
回線速度と安定性が比較的高い代わりに、各部屋内で工事が必要。
費用も中程度かかる。
同じマンション内で同一時間帯に一斉につなぐと通信速度が遅くなったりする。

松竹梅でいうと、竹モデル。

【光回線各戸専有型】
最も高速通信、かつ安定性が高い。
費用が最も高い。(光回線-LANケーブル型の数倍かかったりも)
専有型のため、別の部屋の使用状況の影響を受けない。

松竹梅でいうと、松モデル。

【同軸ケーブル型】
すでに敷設されているテレビ線に相乗りさせるイメージのため、
初期の工事費が安い。また各部屋の工事が不要。
配線種類の関係上、通信速度に上限がある。
将来、どんどん通信速度が求められるようになると、少し厳しくなってくるかも?

松竹梅でいうと、竹モデルの変化球。

【共用部Wi-Fiアンテナ設置型】
小規模アポート限定の方式。導入が簡単。
屋内ではなく、外から電波を飛ばすため、壁の材質や部屋の作りによっては繋がりにくい。
主に木造や軽量鉄骨の物件で、事前の電波調査必須。(サービス提供会社が行ってくれます)
各部屋への工事は不要で、初期工事費も安い。
2~4部屋で1つの無線ルータを共用するため、隣接する部屋の使用状況によっては通信速度が遅くなったりする。
機器がすべて共用部のため、メンテナンスが容易。

松竹梅でいうと、梅モデル。


すでに賃貸として運用している建物の場合、入居者がいる部屋に勝手に入ることはできないため、各部屋内の工事調整が発生するモデルは、かなり手間になります。
物件状況と手間、費用(イニシャルおよびランニングコスト)にあった方式を選べると良いですね。


導入後のトラブルについて

1:Wi-FI機器等持ち出しトラブル
現在は改善されていることが多いのですが、過去はWi-Fiルータを間違って退去時に持っていくトラブルがおこりました。
そこで登場したのがこちら。

情報コンセント
画像は因幡電機産業様より引用させていただきました。

情報コンセントといいます。
Wi-fiの機械をコンセントに一体化して埋め込んでしまえば、持ち出されないよね!という画期的なかたちです。
あと、配線がごちゃごちゃしなくて、スッキリするというメリットもあります。

ただし、アンテナの位置がコンセント部分に固定されるため、このコンセントから遠い部屋は少し電波が弱くなる傾向もあります。

現在は部屋内工事をする方法の場合、情報コンセントを取り付けて導入することが多いです。


2:通信速度の品質のクレーム
冒頭にも記載した通り、通信速度と品質も求められることがあります。

目安としては動画視聴の場合

【Youtubeの推奨環境から抜粋】
動画の綺麗さ:推奨される持続的な速度
  4K :20 Mbps
HD 1080p : 5 Mbps
HD 720p :2.5 Mbps
SD 480p :1.1 Mbps
SD 360p :0.7 Mbps

Web会議などで最近流行りのシステム(Zoom)の場合
【Zoomの推奨環境から抜粋】
動画の解像度:推奨される持続的な速度
・1対1ビデオ通話
HDビデオ  :1.2Mbps
高品質ビデオ:0.6Mbps

・グループビデオ
HDビデオ  :1.5Mbps
高品質ビデオ:0.6Mbps(上り)1.2Mbps(下り)

※上りはアップロード、下りはダウンロードの速度


まとめ

・全戸無料インターネット設備の需要がさらに高まる傾向にある
・さらに、何でも良いというわけではなくある程度の品質が求められ始めている
・一昔前のテレビ配線と抱き合わせたインターネット設備環境だと、速度や品質が悪く、見直しの時期にきている
・全戸インターネット無料設備!といっても種類があるので、ざっくり違いを把握して、物件ごとのニーズを考えて選びましょう


最後までお読みいただきありがとうございました。

よくわからない方はご相談いただければ、お答えできる範囲でお答えします。
一部、自社物件等でお世話になった業者さんのご紹介等もできます。

この記事を書いたプロ

中谷崇志

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中谷崇志(株式会社トライアス)

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