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バリアフリー対応の和室の畳

田原稔久

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テーマ:バリアフリー


和室と洋間の間によこたわる段差

バリアフリーが必要な高齢者の方々にとって、日本古来の畳の部屋は心の休まる空間になっている場合が多々あります。全体はフローリングの洋間中心の設計でも、その中に畳のしかれた和室があるという住宅の方は、読者の中にもおられるのではないでしょうか。

しかし、この洋間と和室が混じり合った住宅のバリアフリー化で問題となるのが、それぞれの間によこたわる段差。せっかく家の中に和室があるのなら、安全かつスムーズに出入りが出来るのが一番。そこで、今回は和室と洋間の段差を解消する方法をご紹介したいと思います。

段差の原因は畳の厚さにあった!

畳には通常55mm〜60mmの厚さがあります。そのため、敷居にも同じ高さが必要ですが、一方のフローリングの厚み一般的に12.2mm。この差が和室と洋間の段差を生み出していました。

この段差を解消する方法には、従来の厚みの畳を使用しながら、畳の下にある床を下げる方法、逆にフローリング部分の床を上げる方法などがありますが、どちらも大掛かりな工事となる場合があり、コストや工期の面でなかなか着手をしづらいという難点がありました。そこで、反対に畳の厚みを変えることで段差を無くそうというアイデアから登場したのが、バリアフリー用の畳です。

バリアフリー用の畳の厚さは、単にフローリングの厚さと合わせてあるものだけではなく、極端な例では、タイルカーペットと厚みを合わせた6mmの薄さのものを初め、多様な床の材質と厚みを合わせられるようになっているのが特徴。

近年は床暖房の導入なども盛んになっていますが、そうした様々な条件に合わせた厚みにも、施行次第で対応出来るのが強みです。

また床を下げる工法よりも、簡単にリフォームが行えることなどから、お手軽に和室のリフォームをしたいとお考えの方にはお勧めしたい方法となっています。

秘密は畳床にあり

これらの畳の実現を可能にした大きな要因が、畳表と畳裏の間にある畳床と呼ばれる部分の革新。
畳床は畳の機能や性質などを左右する重要な部分であり、例えば“本畳床”と言われる伝統的な畳の畳床には、吸水性やクッション性に優れた稲ワラが使われていることで有名ですが、バリアフリー用の畳は、ここに様々な新しい材質を用いることによって、従来よりも薄い畳の製造を実現しています。

さすがに、厚みだけを薄くした上で、“本畳”とまったく同じ性質の畳を作ることは難しいですが、ある程度の柔らかさや吸水性に加えて、床暖房の使用を前提とした熱伝導性などに優れた新しいタイプの畳が日々開発されています。

日本古来の製法を受け継ぐ畳ですが、現在の建築様式や生活スタイルにあった進化を遂げてゆく点にも注目して、伝統と安全、快適さの融合したバリアフリー化を進めていきたいものです。

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田原稔久
専門家

田原稔久(建築家)

田原建設株式会社

新築、リフォーム、アフターメンテナンスの三拍子がそろう住まいづくりに徹し、2世帯の長期優良住宅を多く建設。自身が阪神・淡路大震災の体験もあり、耐震等級3の地震に強い住宅を採用する

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