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トイレをバリアフリー化して、未然に事故を防ぐ

田原稔久

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テーマ:バリアフリー


トイレのバリアフリー化は尊厳と安全性がカギ

年齢を重ねるにしたがって家で過ごすことが多くなり、トイレに行く回数も、排せつにかかる時間も増えてゆくと同時に、身体能力の低下によって一人でトイレに行くことは徐々に困難かつ危険を伴う行為になってゆきます。

しかし、年をとっても「トイレはなるべく他人の世話にならずにしたい」と思う方がほとんどでしょう。つまり、トイレのバリアフリー化には、いかに使用者の尊厳を保ちつつ、安全性を担保できるかが大きなカギとなってきます。

トイレにひそむ意外な危険

厚労省の調査によると、トイレでの高齢者の脳卒中や心筋梗塞での死亡率は、突然死全体のおよそ5%を占めるほど高く、心疾患による突然死のおよそ8%がトイレでの排便中に起こっている、というデータがあります。
前回のコラムでも少し紹介しました、突然の温度差が引き起こすヒートショックに加えて、排便中の力みによる血圧の急変などが、脳卒中や心筋梗塞といった深刻な事態を引き起こす原因となっているのです。

また、死亡事故ではなくても、夜中にトイレに行く最中に起こす転倒事故など、高齢者の方々にとって「トイレに行って用を足し、帰ってくる」という過程には、予想外に多くの危険が潜んでいるのです。

トイレのバリアフリー化の主なポイント

それではここでトイレのバリアフリー化にあたり頭に入れておきたい主なポイントをご紹介致します。例えば、寝室とトイレを同じ階の隣接した場所に配置するなどのポイントは、前回のコラムに記してありますので、あわせてお読み頂ければ幸いです。

[1]和式便器はなるべく避けて
 最近、ご家庭では珍しくなってきた和式便器ですが、膝を曲げたまま、またがる姿勢は高齢者にとっては辛いものです。“慣れ”の問題はあるとは思いますが、出来れば洋式便器に変更されることをお勧めします。また周囲に手すりがあれば、転倒防止に役立つ他、歩行が困難な方も伝え歩きをして自分で排せつが出来るなど、使用する方の尊厳を保つ上でも大きな役割を果たします。

[2]トイレであってもやはり広さは重要
 こちらは前回のコラムと重複する部分がありますが、重要なことなので、書いておきます。用便は一人で出来ることがベストですが、車椅子や手すりの使用、将来の介護や介助の可能性も考えたスペースを想定しておくことを忘れないようにしてください。

[3]トイレは明るく暖かく
 無駄に明るいことを「トイレの100w」などと言いますが、トイレ内で安全に動くためにはあまり暗い照明は、お勧めしません。また、ヒートショックを防ぐための暖房設備を充実させたり、もしもの時の緊急通報装置が備えてあると、より安心かと思います。

 他にもトイレという空間をバリアフリー化するだけではなく、座ったままトイレが出来る車椅子や、ベッドサイドに配置が可能なトイレなどの商品も開発されていますので、様々な情報を手に入れて、利用者の方々の尊厳を守りながら、未然に事故を防ぐよう努めてください。

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田原稔久
専門家

田原稔久(建築家)

田原建設株式会社

新築、リフォーム、アフターメンテナンスの三拍子がそろう住まいづくりに徹し、2世帯の長期優良住宅を多く建設。自身が阪神・淡路大震災の体験もあり、耐震等級3の地震に強い住宅を採用する

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