バリアフリー対応の和室の畳
メリットだけではない住宅のバリアフリー化
さて今回からはご自宅のバリアフリーについてお話ししてゆきたいと思いますが、平成18年に発表された内閣府の調査結果によりますと「バリアフリー」を「ことばも意味も知らない」と答えた人は全体の4.5%。
今からおよそ10年前の調査で国民のほとんどに認知されていたことから考えても「バリアフリー」という言葉自体は今や珍しいものではなくなったと思います。
同居されているご家族のため、またはご自分のために「今住んでいる住宅をバリアフリー化したい」とお考えの方は、読者の中にもたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
障害物を無くし、体の不自由な方でも自由に生活が出来る「住宅のバリアフリー化」。しかし、そのメリットだけを想像していると、思わぬデメリットに泣かされることもありますので、しっかりと長所、短所を見極めながら、ご自宅のバリアフリー化を進めてください。
バリアフリーの課題・問題点 バリアフリー化が逆に思わぬ障害物
「バリアフリー」とは「障害物=バリア」を取り除くというのが本来の意味です。例えば足の不自由な方が転倒したり、車椅子の障害となってしまう「段差を無くすリフォーム」などはその典型と言えます。
しかし、これも同じくポピュラーな、階段や廊下などの「家の必要な部分に手すりをつける」といったリフォームを例にとると、事前にしっかりとした計画を練らないと思わぬ障害物をわざわざ自分の家に持ち込んでしまうことにもなりかねないことを、これからお話したいと思います。
一口に「手すり」といっても、その種類は様々。必要な方の年齢や状態によって、高さ、左右、向きなどが異なるだけでなく、不要な手すりをとりつけることによって、通り道のスペースを狭めてしまうデメリットもあるのです。
実際に、「廊下の両側に手すりをつけたことで車椅子が通れなくなってしまった」といった本末転倒のバリアフリー化の例もあります。
お使いになる本人の意思と共に専門家の意見を積極的に取り入れ
バリアフリー化にあたっては、実際に必要がある方の意思を尊重することはもちろんですが、年齢を重ねることで利き手の握力が落ちて、反対側に手すりをつけることになるなどの例もあるように、将来的な展望を取り入れながら進めていかなければ、思わぬつまずきの原因となることも少なくありません。
理学療法士や作業療法士といった介護の専門家、そして設計・施行を行う業者の方々とも入念な打ち合わせを重ねた上で本当に必要なバリアフリー化を選択したいものです。