離婚事件簿その10~未成年子との面会交流調停(中編)
財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた財産を、離婚に際して、または離婚後に分けることをいいます。
この財産分与は、往々にして、離婚事件において大きな争点のひとつになります。
財産分与は、基本的には離婚の際にしてしまうものですが、離婚後であっても、離婚が成立した時から2年以内であれば、家庭裁判所に財産分与の調停または審判を求めることができます(民法768条2項)。
財産分与には、以下のように3つの性質があるといわれています。
清算的財産分与
夫婦が婚姻中に築いた財産は、夫婦どちらの名義になっているかは関係なく、夫婦の「共有財産」であると考えられることから、その清算をすることになります。
これを清算的財産分与といい、ほとんどの財産分与はこの性質に基づいてなされるものです。
たとえば、サラリーマンの夫と専業主婦の妻の夫婦のケースで、結婚するときには100万円だった夫名義の預金が、婚姻中にコツコツと給料を貯めて900万円に増えていた場合、妻の内助の功があったからこそ預金が増えたものと考え、800万円は夫婦の共有財産であると考えられます。
よって、これを清算するために、妻は夫に財産分与を求めることができます。
逆に、サラリーマンの夫とパートの妻の夫婦のケースで、妻名義の預金口座で、婚姻中の夫の給料と妻のパート代を貯蓄していた場合には、同じく夫婦共有財産であるとして、夫は妻に財産分与を求めることができます。
清算の割合は、特殊な事情がない限り、平等に「2分の1ずつ」とされているのが、現在の実務の傾向です(プロスポーツ選手などで一般家庭から見て多額の収入があるような、夫婦の一方の特別な才能や努力で多額の財産が築かれている場合は、例外的に、この割合が変更されることがあります)。
慰謝料的財産分与
相手方に浮気や暴力など離婚に至る原因に不法な行為がある場合、慰謝料を支払う義務があります。
この慰謝料的要素を考慮して、被害を被った当事者に手厚く財産を分けるのが慰謝料的財産分与です。
判例上も、慰謝料的要素を含めて財産分与を請求することが認められています。
もっとも、相手方に不法な行為がある場合には、財産分与とは別に、損害賠償請求として慰謝料を求めるのがほとんどであるため、実務上、財産分与手続で慰謝料的要素を考慮する必要がないことから、あまり用いられていません。
ただし、損害賠償請求による慰謝料は、金銭の支払いに限られるため、不動産のような現物を確保したい場合には機能しません。
たとえば、時価800万円の自宅マンションが唯一の財産である場合、単純に2分の1で分与するとするならば、マンションを取得した方が、相手方に代償金として400万円を支払わなければなりません。
しかし、そんなまとまった代償金はとても用意できないし、そもそも離婚に至ったのは夫の浮気が原因である、というようなケースです。
このような場合には、慰謝料的要素を加味して財産分与をすることも検討に値します。
扶養的財産分与
離婚後に相手方の生活が困窮することがないように、扶養の意味を含めて財産分与が認められることがあります。
このような財産分与を扶養的財産分与といい、清算的財産分与や、養育費・慰謝料などの支払だけでは、相手方の生活が成り立たない場合に検討されます。
請求する側が、病気である、高齢である、乳幼児を一人で養育しなければならないなど、十分に働くことができず、請求される側に十分な経済的余力があるような場合には、認められる可能性もあるでしょう。
(後編へつづく)
弁護士 上 将倫
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