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コラム

男女間トラブル事件簿その20~同性カップルの元パートナーに不貞慰謝料の賠償を命じた判決が確定!

2021年5月6日

テーマ:男女間トラブル事件簿

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 不倫 慰謝料

 令和元年9月18日、宇都宮地裁真岡支部は、同性カップルについて、婚姻に準ずる関係にある場合には、男女の内縁関係(事実婚)の場合と同様、不貞行為を行った元パートナーに対して慰謝料を請求できるとする画期的な判決をしました。
 控訴審においても、令和2年3月4日、東京高等裁判所は、控訴を棄却する判決をし、一審判決が維持されていたため、賠償を命じられた元パートナー側の上告の行方が注目されていたのですが、最高裁判所は、令和3年3月17日付、元パートナー側の上告を退ける決定をし、これにより、元パートナーに賠償を命じた一、二審判決が確定しました。

一、二審判決が認定した事実関係

 (以下、一審における当事者の立場をもとに記載しています)
 原告と被告A(本件における同性カップル)は、ともに女性ですが、平成21年3月から交際を開始し、平成22年2月から平成29年1月まで約7年間にわたり同居をしており、平成26年12月には同性婚が法律上認められている米国ニューヨーク州で婚姻登録証明書を取得し、平成27年5月には日本国内で結婚式を挙げ、披露宴も開催しています。

 原告と被告Aは、子をもうけるため、被告Aが第三者から精子の提供を受けることとし、被告B(事件当時の戸籍上は男性。本件における被告Aの浮気相手)がこれに応じることになりました。
 被告Aは、平成28年12月28日から平成29年1月3日まで、被告Bのアパートに宿泊し、少なくともキスやペッティング(挿入を伴わない性的行為)を複数回にわたり行っていると認定されています。被告Aは平成29年1月3日、原告と同居するアパートに戻るなり、原告に対し、被告Bのことを好きになった旨伝えました。
 原告と被告Aは、その後も同居を継続していたものの、被告Aは、原告ではなく、被告Bを選ぶ旨原告に伝え、平成29年1月27日には、原告と同居していたアパートから荷物を搬出し、原告との別居を開始しました。

 原告は、平成29年、被告Aを相手方として、婚姻外関係解消調停を家庭裁判所に申し立て、同年12月26日、原告と被告Aは、米国における婚姻関係を解消することに合意し、相互に必要な協力をし、当該婚姻の解消手続をとるものとする旨の調停に代わる審判がされています。

 被告Aは、平成29年8月頃、被告Bに連絡を取り、原告と別れた旨を告げ、被告Aと被告Bは不妊治療を開始し、被告Aは、平成30年8月9日に長女を出産し、同月15日には被告Bと婚姻しましたが、被告Bは、同月、性別適合手術を受け、同年11月27日には、裁判手続によって、戸籍上の性別も女性となっています。なお、被告Aと被告Bは、同年9月19日、離婚をしています。

同性カップルも内縁に準じた法的保護を受けられるか?

 一審判決は、これまでの判例・学説が、内縁関係は当然に男女間を前提とするものと解されてきたとしつつ、近時の価値観や生活形態の多様化に鑑み、以下のとおり、同性カップルであっても、その実態によっては、内縁関係に準じた不法行為法上の法的保護を受けることができる(不貞慰謝料を請求しうる)と判示しました。

 『近時、価値観や生活形態が多様化し、婚姻を男女間に限る必然性があるとは断じ難い状況となっている。世界的に見ても、同性のカップル間の婚姻を法律上も認める制度を採用する国が存在するし、法律上の婚姻までは認めないとしても、同性のカップル間の関係を公的に認証する制度を採用する国もかなりの数に上っていること、日本国内においても、このような制度を採用する地方自治体が現れてきていることは、公知の事実でもある。かかる社会情勢を踏まえると、同性のカップルであっても、その実態に応じて、一定の法的保護を与える必要性は高いということができる(婚姻届を提出することができるのに自らの意思により提出していない事実婚の場合と比べて、法律上婚姻届を提出したくても法律上それができない同性婚の場合に、およそ一切の法的保護を否定することについて合理的な理由は見いだし難い。)。また、憲法24条1項が「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」としているのも、憲法制定当時は同性婚が想定されていなかったからにすぎず、およそ同性婚を否定する趣旨とまでは解されないから、前記のとおり解することが憲法に反するとも認められない。
 そうすると、法律上同性婚を認めるか否かは別論、同性のカップルであっても、その実態を見て内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては、それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められ、不法行為法上の保護を受け得ると解するのが相当である。』

 そのうえで、本件事案が、内縁関係と同視できる生活関係にあると認められる実態があるかについて、「同棲期間が約7年間と比較的長い共同生活の事実」があると認められること、「米国ニューヨーク州で婚姻登録証明書を取得した上、日本国内での結婚式・披露宴」を行っていること、「二人で住むためのマンションの購入を進め、二人の間で育てる子を妊娠すべく第三者からの精子提供を受ける」などしていることなどに照らし、本件カップルについて内縁に準じる関係にあったと認定し、原告の被告Aに対する慰謝料の請求を認めています。

 二審判決においても、「同性同士のカップルにおいても、両者間の合意により、婚姻関係にある夫婦と同様の貞操義務等を負うこと自体は許容されるものと解される上、世界的にみれば、令和元年5月時点において、同性同士のカップルにつき、同性婚を認める国・地域が25を超えており、これに加えて登録パートナーシップ等の関係を公的に認証する制度を採用する国・地域は世界中の約20%に上っており、日本国内においても、このようなパートナーシップ制度を採用する地方自治体が現れてきているといった近時の社会情勢等を併せ考慮すれば、控訴人(被告A)及び被控訴人(原告)の本件関係が同性同士のものであることのみをもって、法律上保護される利益を有することを否定することはできない。」と判示しています。

慰謝料の金額(法的保護を受ける程度)について

 一審判決は、同性カップルは内縁関係に準じた法的保護を受けうるが、婚姻に準じる内縁関係そのものではないとし、現在の法律上では認められていない同性婚の関係であることからすると、「法的保護に値する利益の程度は、法律婚や内縁関係において認められるのとはおのずから差異がある」として、そのほか、本件の一切の事情を踏まえ、慰謝料の金額を100万円と認定しました。

 この一審の判断について、原告は、控訴審において、「事実上の夫婦でありながら、異性と同性とで法律上の保護に値する利益に差異を設けることは性別による取扱いの差別である」と主張しました。
 この点、二審判決は、「性別によって差異を設けているのではなく、婚姻に準ずる程度とその保護の程度は、それぞれの関係の実態に基づいて判断することが相当である」として、控訴人(被告A)と被控訴人(原告)の本件関係は法律上認められた婚姻ではなく、婚姻に準ずる関係であることも考慮すべき一つの事情であるとして、慰謝料の金額を一審判決と同じく100万円と認定しました。

 従前、異性カップルの内縁関係のパートナーの不貞行為による慰謝料請求の事件はありましたが、今回の判決を受けて、今後は、同性カップルでも同種の事件が増えていくことが予想されます。
 同性カップルの方であっても、内縁に準ずるような事情がある場合には、パートナーの不貞行為についてお悩みでしたら、泣き寝入りする前に、まずは一度私たち弁護士にご相談ください。  

                        弁護士 上 将倫

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