離婚事件簿その1~事情聴取編(前編)
離婚事件において、離婚をすること自体については互いに納得しているものの、夫婦間の未成年の子供をどちらが引き取って養育するかについて、深刻な紛争になるケースは少なくありません。
いわゆる親権争いです。
では、親権争いとなってしまった場合、どういう手続と判断基準で親権者が決められるのでしょうか。
まず、協議離婚の場合は、離婚届出の時点までに、夫婦間の話し合いにより、父母のいずれか一方に子供の親権者を決めておかなければなりません。
離婚届出用紙には、子供の親権者を記入する欄があり、これが未記入であれば離婚の届出自体が受理されないためです。
離婚届が受理されないわけですから、当然、離婚は成立しません。
未成年の子供がいる場合、親権者についてまで夫婦間で合意できなければ、協議離婚自体が成立しないのです。
調停離婚の場合はどうでしょうか。
「調停」は、裁判所を舞台として、裁判所の選任した調停委員が当事者の間に入る形式で行われる手続ですが、調停委員から、一定の結論を出すことについて「説得」されることはあっても、親権者をどちらにせよと結論を強制されるわけではありません。
その性質は、あくまで合意解決を目指す「話し合い」であり、調停離婚の場合も、最終的には協議離婚と同様に、親権者は当事者間の合意で決めることになります。
なお調停では、家庭裁判所の調査官が入るケースもあります。
調査官は、実際に子供本人と面接をして、子供の意向や生活状況などについて聞き取り調査をするなどした上で、父母のいずれを親権者とするのが子供、当事者にとってベストであるという調査官自身の結論を出し、裁判官へ報告します。
この調査官の調査報告は、調停においては一資料とされることがあるという程度ですが、後述の離婚訴訟においては活用されることが多く、その場合、裁判の重要な資料となります。
調停でも親権をいずれが取るかについてまとまらなければ、いよいよ離婚訴訟で結論が出されることになります。
離婚訴訟においても、まずは「訴訟上の和解」という話し合いによる合意解決の途を探りますが、これも叶わなければ、「判決」という裁判所の公権的判断によって、「いずれを親権者とする」という最終的な結論が下されます。
先述したように、離婚訴訟においては、家庭裁判所の調査官による調査が活用されることが多く、かつ、裁判官は調査官の意見をかなり尊重する傾向があるのが特徴です。(後編へつづく)
弁護士 中村正彦
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