離婚事件簿その2~事情聴取編(後編)
配偶者の浮気が発覚し、それが離婚問題に発展して、私ども弁護士のもとにご相談が持ち込まれるケースが多々ありますが、近年は、そのような浮気発覚のきっかけのほとんどは、パソコンや携帯電話などのITツールです。
携帯電話やパソコンでのメールのやりとりや、現在流行のLINEでのトーク(文字や絵でのメッセージ通信)を見られて、浮気をしていることがばれてしまうのです。
弁護士として真剣にご相談に乗っていても、依頼者から「今まで携帯をそこらにほったらかして適当に扱っていた夫が、突然ある時期から、携帯を肌身離さず大事にしてトイレや風呂にも持ち込んだり、夜中で別室に持っていっていじるようになったので、怪しいと思った」とか、「旦那はロックをかけたけど、だいたい旦那の使いそうな暗証番号は分かるので、簡単に解除できた」とか、「夫が、送受信したメールを根こそぎ消去するように急にしだしたのが、明らかに不審」というようなお話を聞きますと、苦笑せざるを得ません(女性の方が総じて上手ですね)。
携帯電話の「変換予測機能」から、不貞の事実やその相手の名前が分かったというケースもありました。
例えば、「き」を押すと、「昨日の」という変換候補が第一に現れ、それを選択すると、続いて「夜は」、「楽しかったわ」などと、過去に入力した文章が、履歴をもとに再現されてしまうのです。ご丁寧に、ハートマーク等々絵文字まで変換候補の筆頭に出てくるものですから、便利なのも怖いものです。
さらには、ひらがなを一文字入力するだけで、人名が変換候補の筆頭に現れたりもするので、その人名を選択した先に、「愛してる」などという文字がさらに続いたりすれば、たちまち、浮気相手の名前が推定されてしまうことになります。
携帯電話に残った証拠メールの保全も、弁護士への依頼や訴訟等をにらむと重要ですが、この点も時代は進んでいます。
かつては、メールの画面を写真に撮ったり(写りが良くなくて残念な結果になることもままありますが…)、そのメールを自分のパソコン等に転送したりして証拠化を図っていましたが、最近は、「赤外線通信機能」を用いて、相手の携帯電話機のメールデータを一瞬でご自分の携帯電話機にごっそり移動することで、大量の証拠メールを持参される方もおられます。
こういった同居の配偶者の携帯やパソコンのデータをこっそり見たり、データコピーをしたりする行為については、違法であり、証拠が無効なのではないかというご質問を受けることがありますが、客観的に見ても浮気が疑われるような状況の中でなされたものである場合、法的には、違法であるとの評価を受けることはまずありません。
弁護士 中村正彦