橋本病(甲状腺機能低下症)の悩み|【だるさ・むくみ】と上手に付き合う方法

東角剛司

東角剛司

テーマ:身体の痛み・不調

みなさん、こんにちは!
こころ鍼灸整骨院の東角です。

「しっかり寝ているはずなのに、一日中体がだるくて重い…」

「最近、体重が増えやすくなったし、顔や手足がむくむ…」

「寒がりになったし、髪が抜けやすくなった気もする…」

そんな、原因がはっきりしない慢性的な疲労感や体の変化に悩まされていませんか?

もし、このような症状に心当たりがあり、特に20代~50代の女性であれば、それはもしかしたら「橋本病(はしもとびょう)」という、甲状腺(こうじょうせん)の病気が関係しているかもしれません。

橋本病は、甲状腺の機能が低下する「甲状腺機能低下症」の原因として最も多い疾患です。

「病気」と聞くと不安になるかもしれませんが、橋本病は、適切な診断と治療を受け、日常生活でいくつかのポイントに気をつけることで、症状をコントロールし、上手に付き合っていくことができる病気です。

今回は、そんな「橋本病(甲状腺機能低下症)」とは一体どのような病気なのか、なぜ様々な不調が起こるのか、そしてつらい症状と上手に付き合っていくためのセルフケアや、私たち専門家ができるサポートについて、みなさんと一緒に詳しく見ていきたいと思います。

そもそも「橋本病」と「甲状腺機能低下症」って何?

まず、「橋本病」と「甲状腺機能低下症」という、少しややこしい言葉の関係から整理しておきましょう。


甲状腺(こうじょうせん)とは?

甲状腺は、のどぼとけの下あたりにある、蝶々が羽を広げたような形をした小さな臓器です。

ここから分泌される「甲状腺ホルモン」は、全身の新陳代謝を活発にする、いわば「体の元気の源」となる非常に重要なホルモンです。

食べ物からエネルギーを作り出したり、体温を調節したり、心臓や腸の働きを活発にしたり、脳の働きを活性化させたりと、その働きは多岐にわたります。


甲状腺機能低下症とは?

何らかの原因で、この甲状腺ホルモンの分泌が不足してしまう状態が「甲状腺機能低下症」です。

体の元気の源である甲状腺ホルモンが足りなくなると、全身の代謝が低下し、まるで車のエンジンのかかりが悪くなったように、様々な機能がスローダウンしてしまいます。


橋本病(慢性甲状腺炎)とは?

そして、「橋本病」は、この甲状腺機能低下症を引き起こす原因として、日本で最も多い病気です。

橋本病は「自己免疫疾患」の一つで、本来は体を守るはずの免疫システムが、何らかの理由で自分自身の甲状腺を「異物」と間違えて攻撃してしまい、その結果、甲状腺に慢性的な炎症が起こります。

この炎症が長期間続くことで、甲状腺の細胞が徐々に破壊され、ホルモンを十分に作れなくなり、甲状腺機能低下症に至るのです。

橋本病と診断されても、甲状腺機能が正常なうちは治療の必要はなく、定期的な経過観察となります。機能が低下してきた場合に、ホルモンを補充する治療が開始されます。

なぜ?全身に現れる「甲状腺機能低下症」の多様な症状

甲状腺ホルモンは全身の代謝に関わっているため、その分泌が低下すると、心と体に実に様々な症状が現れます。

「歳のせいかな?」「更年期障害かな?」と見過ごされやすい症状も多いため、チェックしてみましょう。


全身症状:

全身の倦怠感・疲労感:最も多く見られる症状。しっかり休んでも疲れが取れない、常に体がだるい。

むくみ:顔(特にまぶた)や手足がむくみやすくなる。指で押しても跡が残りにくい「粘液水腫(ねんえきすいしゅ)」という特徴的なむくみが見られることも。

体重増加:代謝が低下するため、食事量は変わらないのに体重が増えやすくなる。

寒がり(低体温):熱産生が低下するため、異常に寒がりになる。

声がかすれる、嗄声(させい):甲状腺の腫れが声帯に影響することがある。



精神・神経系の症状:

気力の低下・抑うつ気分:やる気が出ない、物事に興味が持てない、気分が落ち込むなど、うつ病と間違われることもある。

物忘れ・集中力低下:頭の回転が鈍くなったように感じる。

眠気:日中も強い眠気に襲われる。



皮膚・毛髪の症状:

皮膚の乾燥・カサカサ:新陳代謝が低下し、汗をかきにくくなるため、皮膚が乾燥する。

脱毛・薄毛:髪の毛が抜けやすくなる、眉毛(特に外側)が薄くなることがある。



循環器・消化器系の症状:

徐脈(じょみゃく):脈がゆっくりになる。

便秘:腸の動きが鈍くなるため、頑固な便秘になりやすい。

食欲不振:代謝が落ちているため、食欲がなくなることもある。



その他の症状:

  • 月経異常(過多月経など)
  • 筋力低下、肩こり、筋肉のつり

これらの症状は、非常にゆっくりと進行するため、自分ではなかなか気づきにくいことも特徴です。

気になる症状があれば、まずは内科や内分泌内科、甲状腺専門のクリニックを受診し、血液検査(甲状腺ホルモンや自己抗体の測定)を受けることが大切です。

体の歪みが不調を助長する!?整体的アプローチの視点

橋本病(甲状腺機能低下症)の治療は、甲状腺ホルモン薬(チラーヂンSなど)を服用し、不足したホルモンを補う薬物療法が基本となります。

しかし、薬を飲んでホルモン値が正常になっても、なぜかだるさやむくみ、肩こりといった不調がスッキリしない…という方も少なくありません。

私たち整体師・鍼灸師は、そのような「薬だけでは取りきれない不調」に対して、「体の歪み」や「自律神経の乱れ」、「血行不良」といった、体の構造的・機能的な側面からアプローチすることで、症状の緩和をサポートできると考えています。


1.「姿勢の悪さ」がだるさやむくみを悪化させる!?

甲状腺機能低下症の症状である「だるさ」や「筋力低下」は、自然と猫背や巻き肩といった不良姿勢を招きやすくなります。

そして、この不良姿勢が、

①呼吸を浅くする:

胸郭が圧迫され、呼吸が浅くなると、体に取り込まれる酸素の量が減少し、エネルギー産生がさらに滞り、疲労感を増強させます。


②血行・リンパの流れを悪化させる:

首や肩、骨盤周りの筋肉が緊張し、血管やリンパ管を圧迫することで、全身の循環が悪くなり、「むくみ」や「冷え」をさらに悪化させる可能性があります。


③自律神経のバランスを崩す:

背骨の歪みは、自律神経の働きにも影響を与え、心身の不調を助長することがあります。


つまり、「甲状腺機能低下 → だるさ・筋力低下 → 姿勢が悪化 → 呼吸が浅くなる・血行不良が悪化 → さらにだるさやむくみがひどくなる」という、負のスパイラルに陥ってしまうのです。

2.「首周りの緊張」と甲状腺への影響:
甲状腺は、首の前側に位置しています。

ストレートネックや、デスクワークなどで首周りの筋肉(特に胸鎖乳突筋や斜角筋など)が過度に緊張していると、甲状腺周辺の血流やリンパの流れが悪くなる可能性があります。

これが直接的に甲状腺機能に影響を与えるという科学的根拠はまだ十分ではありませんが、周辺環境を整えることが、臓器の働きにとってマイナスになることはないでしょう。

薬と併用して実践!つらい症状と上手に付き合うためのセルフケア

医師の治療をきちんと受けながら、日常生活で以下のセルフケアを取り入れることで、QOL(生活の質)の向上を目指しましょう。


1.体を「温める」ことを最優先に!

甲状腺機能低下症の方は、代謝が低く、熱産生が低下しているため、体を温めることが非常に重要です。

入浴:シャワーで済ませず、38~40℃程度のぬるめのお湯にゆっくりと浸かり、体の芯から温めましょう。

服装の工夫:腹巻、レッグウォーマー、ネックウォーマーなどを活用し、特に「首」「手首」「足首」の三首と、お腹を冷やさないようにしましょう。

温かい食事・飲み物:冷たいものは避け、体を温める食材(生姜、ネギ、根菜類など)や、温かいスープ、ハーブティーなどを意識して摂りましょう。



2.無理のない範囲で「適度な運動」を続ける:

だるくて動くのが億劫かもしれませんが、軽い運動は血行を促進し、筋力低下を防ぎ、気分転換にもなるため、非常に効果的です。

ウォーキング:天気の良い日に、景色を楽しみながら20~30分程度歩くだけでも十分です。

ストレッチ・ヨガ:ゆっくりとした動きで、筋肉の柔軟性を保ち、呼吸を深めることを意識しましょう。



3.「バランスの取れた食事」を心がける:

代謝が低下しているため、食事のバランスは非常に重要です。

タンパク質:筋肉やホルモンの材料となるタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)をしっかり摂りましょう。

ヨウ素の過剰摂取に注意:ヨウ素(昆布、わかめなどの海藻類に多い)は甲状腺ホルモンの材料ですが、橋本病の方が過剰に摂取すると、かえって甲状腺機能を低下させることがあると言われています。日常的に食べる分には問題ありませんが、サプリメントなどで大量に摂るのは避け、医師に相談しましょう。

腸内環境を整える:便秘になりやすいため、食物繊維や発酵食品を意識して摂りましょう。



4.「ストレスケア」と「休息」を大切に:

心身のストレスは、症状を悪化させる大きな要因です。

疲れを感じたら無理せず休むこと、趣味の時間やリラックスできる時間を大切にすること、完璧を目指しすぎないことが重要です。

まとめ:橋本病は体からのサイン。全身から整え、上手に付き合おう

さて、今回は「橋本病(甲状腺機能低下症)の悩み|【だるさ・むくみ】と上手に付き合う方法」というテーマでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?

原因不明だと思っていた様々な不調が、実は甲状腺の働きと関係していたのかもしれない、と気づいた方もいるかもしれません。

橋本病は、長く付き合っていく必要のある疾患ですが、正しく理解し、適切に対処することで、症状をコントロールし、健やかな毎日を送ることは十分に可能です。

では、今日のポイントをまとめます。

  • 橋本病は、免疫の異常により甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気であり、甲状腺ホルモンの分泌が不足する「甲状腺機能低下症」の最も多い原因である。
  • 甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下し、だるさ、むくみ、体重増加、寒がり、気力の低下、便秘、皮膚の乾燥など、心身に多様な症状が現れる。
  • 薬物療法でホルモン値が正常になっても残る不調の背景には、姿勢の悪化による呼吸の浅さや血行不良、自律神経の乱れといった、体の構造的・機能的な問題が関わっている可能性がある。
  • 症状と上手に付き合うためのセルフケアとして、体を温めること、無理のない運動、バランスの取れた食事(ヨウ素の過剰摂取には注意)、ストレスケアと十分な休息が重要である。
  • 私たち整体師や鍼灸師は、姿勢矯正、筋肉の緊張緩和、血行促進、自律神経のバランス調整などを通じて、薬だけでは取りきれない橋本病に伴うつらい症状の緩和をサポートできる。


橋本病(甲状腺機能低下症)は、体からの「少しペースを落として、自分をいたわって」というメッセージなのかもしれません。

もし、あなたがこの疾患による不調でお悩みでしたら、まずは専門医の治療をしっかりと受けてください。その上で、私たちのような体の専門家は、あなたのQOL(生活の質)を向上させるためのお手伝いができます。

体の歪みを整え、血行を改善し、自律神経のバランスを整えることは、薬の効果を最大限に引き出し、より快適な毎日を送るための土台作りとなるはずです。

こころ鍼灸整骨院

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東角剛司
専門家

東角剛司(柔道整復師・はり師・きゅう師)

こころ鍼灸整骨院

構造医学の視点から、個々の体の動かし方に合わせて骨格を整えます。肩や腰などの慢性的な痛みに向き合い、整骨院に通わずに済む健康な体づくりをサポート。実務者向けのセミナーも開催しています。

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