空き家対策、何から始める?不動産鑑定士が教える「お家のリレーノート」活用法

菊池浩史

菊池浩史

テーマ:空き家

「空き家のことが気になってはいるけれど、何から手をつければいいのか分からない」。私が関西各地で開いている空き家対策講座には、毎回そんな思いを抱えた方が10名前後お越しになります。空き家を所有されている方、そして近い将来に実家が空き家になるかもしれないという“空き家予備軍”の方々です。

講座でお話を伺っていると、参加者の悩みは大きく二つに分かれることに気づきます。一つは「何からどう始めればいいのか、誰に相談すればいいのか分からない」という、いわば入口で立ち止まっている悩み。もう一つは「売却か賃貸かという方向性はおおよそ決まっているけれど、どのタイミングでどう動けばいいのか、具体論が分からない」という悩みです。あなたはどちらに近いでしょうか?

私は不動産鑑定士として、また住まいの消費者教育研究所の代表として、この「最初の一歩が踏み出せない」という状態にこそ、空き家問題の本質があると感じています。

今回は、そこから抜け出すために私が講座で必ずお伝えしている考え方と、「お家のリレーノート」という一冊のノートについてお伝えします。

~なぜ「相談相手が分からない」で止まってしまうのか~
多くの参加者が口にされる共通の悩みとして「いきなり不動産会社に行くのは、どうも抵抗がある」という声をよく聞きます。

理由を伺うと、なるほどと思わされます。まだ売ると決めたわけではないのに営業をかけられそうで気が引ける、という方。あるいは「どの不動産会社に頼めばいいのか、その相談自体を不動産会社にはしづらい」という方。第三者の立場から幅広く相談できる相手がいるのかどうか、そもそも分からなかった、とおっしゃる方も少なくありません。

私が大切にしているのは、こうした方々にとっての「消費者エージェント」であること、そして「セカンドオピニオン」であることです。消費者エージェントとは、事業者ではなく相談者ご本人の立場に寄り添って親身にアドバイスする存在のことを指します。空き家の問題は、いきなり「売る・貸す」の判断に飛びつく前に、中立的な立場の相手と一緒に現状を整理する段階が必要なのだと、現場に立つほど強く感じています。

~最初の一歩は「お家のリレーノート」から~
では、具体的に何から始めればいいのか。私が講座で必ずご紹介しているのが「お家のリレーノート」です。

お家のリレーノートとは、自宅や実家の現状と課題を把握し、関係者の間でそれを共有しながら、次の世代へどう引き継いでいくかを記録していくためのノートのことです。私が監修に携わり、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)西日本支部の消費者教育研究会が制作したもので、2024年7月に発行しました。
「空き家のことが気になってはいるけれど、何から手をつければいいのか分からない」。私が関西各地で開いている空き家対策講座には、毎回そんな思いを抱えた方が10名前後お越しになります。空き家を所有されている方、そして近い将来に実家が空き家になるかもしれないという“空き家予備軍”の方々です。

講座でお話を伺っていると、参加者の悩みは大きく二つに分かれることに気づきます。一つは「何からどう始めればいいのか、誰に相談すればいいのか分からない」という、いわば入口で立ち止まっている悩み。もう一つは「売却か賃貸かという方向性はおおよそ決まっているけれど、どのタイミングでどう動けばいいのか、具体論が分からない」という悩みです。あなたはどちらに近いでしょうか?

私は不動産鑑定士として、また住まいの消費者教育研究所の代表として、この「最初の一歩が踏み出せない」という状態にこそ、空き家問題の本質があると感じています。

今回は、そこから抜け出すために私が講座で必ずお伝えしている考え方と、「お家のリレーノート」という一冊のノートについてお伝えします。

~なぜ「相談相手が分からない」で止まってしまうのか~
多くの参加者が口にされる共通の悩みとして「いきなり不動産会社に行くのは、どうも抵抗がある」という声をよく聞きます。

理由を伺うと、なるほどと思わされます。まだ売ると決めたわけではないのに営業をかけられそうで気が引ける、という方。あるいは「どの不動産会社に頼めばいいのか、その相談自体を不動産会社にはしづらい」という方。第三者の立場から幅広く相談できる相手がいるのかどうか、そもそも分からなかった、とおっしゃる方も少なくありません。

私が大切にしているのは、こうした方々にとっての「消費者エージェント」であること、そして「セカンドオピニオン」であることです。消費者エージェントとは、事業者ではなく相談者ご本人の立場に寄り添って親身にアドバイスする存在のことを指します。空き家の問題は、いきなり「売る・貸す」の判断に飛びつく前に、中立的な立場の相手と一緒に現状を整理する段階が必要なのだと、現場に立つほど強く感じています。

~最初の一歩は「お家のリレーノート」から~
では、具体的に何から始めればいいのか。私が講座で必ずご紹介しているのが「お家のリレーノート」です。

お家のリレーノートとは、自宅や実家の現状と課題を把握し、関係者の間でそれを共有しながら、次の世代へどう引き継いでいくかを記録していくためのノートのことです。私が監修に携わり、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)西日本支部の消費者教育研究会が制作したもので、2024年7月に発行しました。
【検索:NACS西日本支部お家のリレーノート】

ノートは大きく四つのパートで構成しています。住まいの終活に関わるヒトとモノの確認、これからの住まい方(住まい観)の確認、売却や利活用をする場合の課題の確認、そして将来の選択肢と事前準備の確認です。講座では、このノートの作成目的と内容を説明したうえで、身近な事例を使って使い方を詳しくお伝えしています。

正直に申し上げると、このノートは空き家問題を一気に解決する即効薬ではありません。それでも受講された方から喜ばれるのは、住まいの終活を始めるきっかけになる、親族と話し合うときの共通資料として使える、価格水準や調査の際の参考にできる、といった点です。何より、「手元に一冊置く」こと自体が、止まっていた足を動かす合図になるのだと思います。

~「いつ・誰と・どこで」から考える、住まい観の整理~
このノートで私が特にこだわっているのが、「住まい観」の整理をおすすめしている点です。
住まい観とは、「いつまでに、どこで、誰と、どのような住まいで、どのような暮らしをしたいか」という、将来の住まい方に対する一人ひとりの考えのことです。これは将来変わっても構いません。大切なのは、正解を出すことではなく、自分の頭の中にある漠然とした希望を、いったん言葉にしてみることです。

たとえば「定年退職した65歳頃までに、妻と、生まれ故郷で、実家で、リモートワークと趣味を楽しむ暮らしをしたい」。ここまで書けると、「そのために自宅を売却し、実家をリフォームする」という次の打ち手が自然と見えてきます。空き家をどうするかという問いは、実はご自身がどう暮らしたいかという問いと表裏一体なのです。

そしてもう一つ、私がノートで丁寧に案内しているのが、売却や利活用を検討する際に必要となる調査の内容と方法です。謄本を見たい、前面道路を調べたい、価格の相場を知りたいなど、こうした「知りたいけれど調べ方が分からない」場面は、実家の将来を考え始めると次々に出てきます。

土地の境界は確定しているか、建築基準法上の道路に2メートル以上接しているか、隣地との越境物はないか。こうした点を事前に確認しておくと、いざ動くときの判断が格段に楽になります。

~実家をどうしようかと悩んでいるあなたへ
講座では、ノートを使う場面をあえて具体的にご紹介するようにしています。いつ、どのように使えばいいのかを、想像していただきたいからです。

たとえば、実家の将来像が描けない、子どもが引き継ぐ気がない、親に相続の話をどう切り出せばいいか分からない、兄弟と何から話せばいいのか分からない。あるいは、実家の土地が袋地だった、前面道路が極端に狭かった。こうした場面のどれかに、心当たりがあるのではないでしょうか。

こうした悩みの多くは、情報がないために「偶然出会った情報」に頼らざるを得ないことから生まれています。私はこれまで、UR賃貸住宅の管理運営に30年近く携わり、その後は有料老人ホームの現場も経験してきました。そのうえで大阪市立大学大学院で高齢者の住まいや不動産の情報の非対称性について研究してきました。実務と研究の両方から見えてきたのは、判断に必要な情報を、相談者の側が最初から持っているケースはほとんどないという現実です。だからこそ、まず現状を「知る」ための道具が要るのだと考えています。

私は、課題解決には「①現状の課題を知る」「②必要な打ち手を考え実践する」「③実現したい成果を得る」というプロセスが重要だと考えています。お家のリレーノートを活用すれば①が進み、住まい観を考えることで③の解像度が高まります。知っているつもりでも意外と知らない、気づいていないことは少なくありません。まずは一冊を手元に置いて、住まいの終活の一歩を踏み出してみましょう。

~まとめ~
空き家の問題は、いきなり答えを出すものではなく、まず現状を知り、自分の住まい観を整えるところから始まると私は考えています。一冊のノートが、その最初の一歩を静かに後押ししてくれます。

・空き家について何から始めればよいか分からない
・売却か賃貸か、動くタイミングに迷っている
・実家のことを親族とどう話せばよいか悩んでいる

このようなことでお悩みの場合は、どうぞお気軽にご相談ください。


ノートは大きく四つのパートで構成しています。住まいの終活に関わるヒトとモノの確認、これからの住まい方(住まい観)の確認、売却や利活用をする場合の課題の確認、そして将来の選択肢と事前準備の確認です。講座では、このノートの作成目的と内容を説明したうえで、身近な事例を使って使い方を詳しくお伝えしています。

正直に申し上げると、このノートは空き家問題を一気に解決する即効薬ではありません。それでも受講された方から喜ばれるのは、住まいの終活を始めるきっかけになる、親族と話し合うときの共通資料として使える、価格水準や調査の際の参考にできる、といった点です。何より、「手元に一冊置く」こと自体が、止まっていた足を動かす合図になるのだと思います。

~「いつ・誰と・どこで」から考える、住まい観の整理~
このノートで私が特にこだわっているのが、「住まい観」の整理をおすすめしている点です。
住まい観とは、「いつまでに、どこで、誰と、どのような住まいで、どのような暮らしをしたいか」という、将来の住まい方に対する一人ひとりの考えのことです。これは将来変わっても構いません。大切なのは、正解を出すことではなく、自分の頭の中にある漠然とした希望を、いったん言葉にしてみることです。

たとえば「定年退職した65歳頃までに、妻と、生まれ故郷で、実家で、リモートワークと趣味を楽しむ暮らしをしたい」。ここまで書けると、「そのために自宅を売却し、実家をリフォームする」という次の打ち手が自然と見えてきます。空き家をどうするかという問いは、実はご自身がどう暮らしたいかという問いと表裏一体なのです。

そしてもう一つ、私がノートで丁寧に案内しているのが、売却や利活用を検討する際に必要となる調査の内容と方法です。謄本を見たい、前面道路を調べたい、価格の相場を知りたいなど、こうした「知りたいけれど調べ方が分からない」場面は、実家の将来を考え始めると次々に出てきます。

土地の境界は確定しているか、建築基準法上の道路に2メートル以上接しているか、隣地との越境物はないか。こうした点を事前に確認しておくと、いざ動くときの判断が格段に楽になります。

~実家をどうしようかと悩んでいるあなたへ
講座では、ノートを使う場面をあえて具体的にご紹介するようにしています。いつ、どのように使えばいいのかを、想像していただきたいからです。

たとえば、実家の将来像が描けない、子どもが引き継ぐ気がない、親に相続の話をどう切り出せばいいか分からない、兄弟と何から話せばいいのか分からない。あるいは、実家の土地が袋地だった、前面道路が極端に狭かった。こうした場面のどれかに、心当たりがあるのではないでしょうか。

こうした悩みの多くは、情報がないために「偶然出会った情報」に頼らざるを得ないことから生まれています。私はこれまで、UR賃貸住宅の管理運営に30年近く携わり、その後は有料老人ホームの現場も経験してきました。そのうえで大阪市立大学大学院で高齢者の住まいや不動産の情報の非対称性について研究してきました。実務と研究の両方から見えてきたのは、判断に必要な情報を、相談者の側が最初から持っているケースはほとんどないという現実です。だからこそ、まず現状を「知る」ための道具が要るのだと考えています。

私は、課題解決には「①現状の課題を知る」「②必要な打ち手を考え実践する」「③実現したい成果を得る」というプロセスが重要だと考えています。お家のリレーノートを活用すれば①が進み、住まい観を考えることで③の解像度が高まります。知っているつもりでも意外と知らない、気づいていないことは少なくありません。まずは一冊を手元に置いて、住まいの終活の一歩を踏み出してみましょう。

~まとめ~
空き家の問題は、いきなり答えを出すものではなく、まず現状を知り、自分の住まい観を整えるところから始まると私は考えています。一冊のノートが、その最初の一歩を静かに後押ししてくれます。

・空き家について何から始めればよいか分からない
・売却か賃貸か、動くタイミングに迷っている
・実家のことを親族とどう話せばよいか悩んでいる

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菊池浩史

住まいの消費者教育研究所

住まいにまつわるビジネス経験や、不動産鑑定士としての専門的知見を活かし、顧客ファーストで「住まい教育」を普及・実践。住まい選びやメンテナンス、そして家仕舞いまで、ワンストップでトータルサポートします。

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