住まいの終活と住教育③~空き家の管理~
(はじめに)
いわゆる住まいの終活には決まった定義はありませんが、「所有者や相続予定者が自宅の様々な情報を整理共有し、相続前後の選択肢を考え、自宅を円滑に責任ある者に引き継ぐための一連の活動」と呼ばれています。
自宅を既に所有している、或いは所有する可能性がある場合、引き続き家族等の居宅として使用する、住む予定がないとか、住まなくなる予定のため売却や賃貸する、それから空き家のまま所有し維持管理するなどの活用方法が考えられます。今回のテーマは、住む予定がないため売却するのです。
(売却の手順)
実際の売却活動を始める前に、事前準備が必要です。
始めに三つの準備です。一つ目があなたや家族、兄弟など親族と十分に話し合い、売却することへの気持ちを確認・整理して下さい。二つ目は土地や建物に関する権利関係や課題があれば、できる限り整理に努めて下さい。三つ目が家財道具などの片づけです。
続いて、遺言書や遺産分割協議書により遺産分割をしたら、登記名義の変更を忘れないようにして下さい。
そして、建物の取り扱いです。①解体撤去して更地で売却(解体費用は必要だが売りやい)、②中古住宅として売却(買い手はリフォームなどをして利用)、③古家付きとして売却(解体費用が控除される可能性がある)、このうちいずれかを決めます。
(売却先)
中古住宅の多くは個人が居宅として購入しますが、買取業者や買取専門業者による買取りもあります。
仲介会社へ買主探しを依頼し、成約すれば仲介会社へ手数料を支払う流れが一般的です。これに対し買取業者等への売却は、仲介会社を介さず買取業者等が直接買い取り、リフォームして転売する流れになります。
この場合、仲介手数料は発生しませんが、買取業者等が転売益を確保するために、売却価格が市場価格より概ね10~30%くらい安くなることは知っておくべきでしょう。
(不動産会社選び)
不動産会社の仲介には、片手仲介と両手仲介という方法があります。片手仲介とは、共同仲介とも呼ばれ、売主と買主で異なる不動産会社が仲介するのに対し、両手仲介は、一つの不動産会社が単独で双方を仲介します。民法で禁止されている双方代理が宅建業法では認められ、両手仲介の手数料は片手仲介の二倍になります。
ところが、両手仲介は、売却の仲介を依頼された物件を意図して他社に紹介せず、自社で買い手を見つけようとする囲い込みに繋がりやすくなります。この囲い込みは宅建業法で禁止されており、売主の利益を損ないやすい問題点があります。
囲い込みを防止するために、依頼した不動産会社にレインズ(指定流通機構)の画面を見せてもらい、取引状況が「公開」になっているか、広告転載項目が「広告可」になっているかの確認をお勧めします。また、「両手取引に拘りますか。片手取引でも良しとしますか」とストレートに聞いてみるのも一手です。
次に注意したいのが、不動産会社が媒介契約を目的に非現実的な査定価格を提示する、高預かり問題です。高い査定価格を基に売り出すと買手が現れにくく、売却期間の長期化や売値が査定価格を大きく下回るといったリスクを伴います。
この問題には、「複数の不動産会社に査定を依頼する」「極端に査定価格が高い不動産会社は避ける」「査定価格の根拠をもって説明できない不動産会社は避ける」「査定価格の高低だけではなく担当者との相性も重視する」ことが大切です。
(売却のタイミング)
特に建物の資産価値の減少を回避するために、出来る限り早期売却を図ることです。空き家になると換気の回数が減りカビが発生しやすくなり、また雨漏りなどの不具合も気づかないなど、適切なメンテナンスが疎かになって老朽化が一気に進行します。
次は、税制上の特例を利用できるタイミングを考えて下さい。
一つは、被相続人が生前に売却するか、被相続人と同居している相続人が相続後に売却した場合に、譲渡所得の3000万円控除ができるマイホーム特例です。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること等が要件になります。
二つ目が、一定の要件の空き家を譲渡した場合の3000万円の特別控除です(2024年1月以降が、相続人が3人以上の場合、相続人ごとの特別控除は2000万円に減額になる)。この特例を受けるには、相続日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件となります。
(現状把握)
自宅の現状と課題を正しく把握できておらず、大切な点を見落としている所有者等も少なくありません。まず始めに登記事項証明書で名義人等を確認し、相続登記などの変更をしましょう。
次のような所有権以外の権利の有無も確認して下さい。「住宅ローンの残債はあるが抵当権を抹消できるか」「借地権が設定されていないか(登記事項証明書、借地権設定契約書を確認)」「他人の配管が敷地にないか、また自分の配管が他人地を通ってないか」「私道の共有持ち分があるか、費用負担はあるか」など。
その他に、隣地関係(境界確認や越境の有無)、遵法性(建築確認や完了検査の有無、接道条件など)を確認しましょう。そして、購入時の資料(売買契約書、請負契約書)や点検、修繕、リフォームの記録(契約書、設計図書等)も探しておいて下さい。
(不動産会社が取り扱わない物件)
ところで、空き家の中には、あまり需要が見込まれにくく、価格も低いことから多くの不動産会社は積極的に取り扱わないような物件もあります。このような場合には、そのような物件を中心に取り扱っている次のサイトなどを利用も役立つかもしれません。
空き家バンク
全国の 空き家バンク から物件を検索【アットホーム 空き家バンク】 (akiya-athome.jp)
家いちば
家いちば 空き家売ります掲示板 (ieichiba.com)
0円不動産
【みんなの0円物件】無償譲渡物件の不動産マッチング支援サイト-空き家,住宅,土地,店舗 (zero.estate)
空き家ゲートウエイ
空き家ゲートウェイ|YADOKARI×カリアゲJAPAN (akiya-gateway.com)
(まとめ)
まとめとして、自宅を高く売却するために知っておきたいことを挙げます。
〇囲い込みをしない不動産会社へ依頼する。
〇更地>更地渡し>古家付土地の順で高く売れる可能性
〇建物内の残置物を撤去し清掃する。
〇建物の修繕履歴を記録・整理する。
なお、リフォームすれば高く売れるかと問われれば、「費用を上乗せるのは難しい」「そのままの状態で清掃・美化する方が売れやすいことがある」と言えるでしょう。
以上