戸建住宅の維持管理を考える

菊池浩史

菊池浩史

テーマ:住まい教育・消費者教育

(はじめに)
ハウスドゥが2022年に実施した「老後の住まいとお金に関する調査(N=702)」の中に、「あなたの今の住まいについて、老後に不安を感じることがありますか?」という質問があります。それによると「建物の老朽化」と「修繕・リフォームの心配」が52%、42%と上位を占めています(複数回答)。

経年劣化する住宅への備え方は、マンションと戸建住宅では異なってきます。多くのマンションでは管理組合が責任者かつ実施者として長期修繕計画を作成し、管理費や修繕積立金を準備しています。それに対して戸建住宅では、所有者の自己責任ですが、所有者の9割が修繕費を積み立てていないという調査結果もあります(アットホーム調査)。

(住宅の寿命)
住宅の寿命に影響を及ぼす要因には次のものがあります。
一つ目は、住宅の使用に伴う経年劣化や損傷といった物理的要因
二つ目は、技術の進歩による設備の旧式化、機能不足、効率低下といった機能的要因
三つ目は、地域が人口減少などで衰退し市場性が低下するといった社会的要因

そもそも戸建住宅の寿命はどの程度なのでしょうか。税法上は木造住宅は22年、住宅ローンの返済年数を寿命とすれば35年、また長期優良住宅は100年住宅とも呼ばれています。一方、取り壊された戸建住宅の存在年数は、平均すれば30数年といったところです。


このうち物理的要因には、雨漏りや水漏れなどによる木部の腐食、シロアリ被害、床の軋みや傾斜、外回りでは外壁のひび割れや屋根瓦の破損などがあります。

戸建住宅の寿命は捉え方によって差があります。元々の品質や性能が優れているかどうかの影響も大きいですが、維持管理によっても寿命が異なってきます。定期点検やメンテナンスを適切に実施したか、何もしないかによって、住宅寿命だけでなく資産価値にも差が出ます。

(維持管理とは)
住宅を適切に維持管理するのは次の目的によります。
①健康に暮らすため
②経済的に暮らすため
維持管理にお金を掛けても、建替えずに長く住み続けることで経済的に暮らせる。
③エコに暮らしため
長寿命な住まいで資源を大切にすることで環境に優しくできる
④資産価値の維持のため
維持管理をしっかりすれば将来、売却する時に高く売りやくなる

また、維持管理は実施する時期によって次のように分類することができます。
①日頃からすること
手入れをして綺麗な状態を保つ
②定期的にすること
各部位を点検する、必要に応じて部材や部品の補修・交換、修繕を行う
③災害時に備えること
例えば、雨樋や排水口を点検する
④修繕履歴等を記録すること

(日頃から行う維持管理の事例~結露対策~)
結露から発生するカビは、気管に入り、喘息、アレルギー、胃腸炎、肺炎の原因になるなど人の健康に甚大な影響を与える場合があります。その防止には日頃から日常の暮らし方が大切になってきます。
①水蒸気の発生を極力抑える
調理中は換気扇、入浴後は蓋を閉めて換気、加湿器の過度の使用を控える 等
②暖房する部屋と他の部屋の温度差を小さくする
 窓や壁の断熱性を高める、雨戸を閉めて風を防ぐ、住宅全体の暖房に努める 等
③部屋の通風、換気をよくする
 カーテンを閉切りにしない、押入の壁や床にすのこ、家具は壁面から5~10㎝離す
④カビが発生したら
  すぐに取り除く、クロスなどは張替え

(不定期に行う維持管理の事例~寒さ対策~)
「冬は寒く夏は暑い」という住まいに対する不満は少なくありません。特に冬の寒さはヒートショックを惹き起こす原因になります。そのため、近年は外皮と呼ばれる屋根・壁・床・床下・窓の高断熱化や高気密化された住宅への関心が高まっています。

冬の暖房時に暖まった熱の約60%は窓などの開口部から外へ流出し、夏の冷房時には外から入る熱の約75%が開口部から流入します。そのため、快適・経済的・健康的な暮らしの実現には、窓を中心に断熱対策が望まれます。

次に、二重窓のイメージ図と断熱リフォーム(部分断熱、内断熱、外断熱)のイメージ図です。

(二重窓のイメージ図)
内断熱
(断熱リフォームのイメージ図)
外断熱
内断熱
部分断熱

(定期的に行う維持管理の事例)
定期点検の時期は、概ね10年周期です。物件によって異なりますが、屋根や外壁など外回りの修繕費用は、床面積120㎡程度であれば、10年目に約80万円、20年目に約150万円、30年目に約450万円で合計700万円程度が一つの目安です。

室内では、築20年以降に床や壁の張替え、水廻り設備の交換が発生することが多く、10年目に約40万円、20年目に約100万円、30年目に約450万円で合計600万円程度が一つの目安で、屋外と合わせて1300万円程度になります。

なお、外回りの点検時には、次の点をチェックしてみて下さい。
屋根:台風や地震などで瓦がずれていないか、壊れていないか、排水口が詰まっていない
か。
床下:木部の腐朽やシロアリの被害がないか。設備配管からの漏水はないか。基礎に深い
ひび割れはないか。
外壁:ひび割れや剥がれがないか。外壁材の継ぎ目にひび割れや剥がれがないか。

(業者の選び方)
毎日のようにリフォーム業者のチラシが入り、手抜き業者やぼったくり業者による被害報道を目にすると、どこに頼んで良いか分からなくなります。また、相見積もりで一番安い業者に頼んだら安かろう、悪かろうだった、大手だから知名度が高いから選んだら、期待外れだったという失敗談も耳にします。

業者を選ぶ前に、まずはどんなリフォームをしてどんな暮らしをしたいかを具体的に考える必要があります。次に、その希望を実現してくれてコミュニケーションの取りやすい、相性が良い業者を選ぶことです。そして、工事後の保証やアフターサービスがどの程度充実しているかの確認も忘れてはいけません。

次のような団体に登録している業者かどうかを確認するのも一つの方法です。
・住宅リフォーム事業者団体登録制度
事業者団体登録制度|事業者検索TOP|住宅リフォーム推進協議会 (j-reform.com)
・リフォーム評価ナビ
リフォーム会社の評判・一括見積もりは口コミ豊富な【リフォーム評価ナビ】 (refonavi.or.jp)

(まとめ)
戸建住宅も当然にマンションと同様に維持管理が大切で、建物の寿命や資産価値に影響します。次の3点を本コラムのまとめとします。
◆出来ることから始める。・・・日頃から手入れをして綺麗な状態を保つこと
(美装が行き届いた住宅は売れやすい)
◆建物や暮らしの現状に応じた必要なリフォームは行う。
(但し、リフォーム費用をそのまま価格に上乗せするのは難しい
◆契約書や図面などは保管する。
(修繕履歴を記録・整理しておけば、買主は安心する)
例:住まいの管理手帳版book_shop_dl_house_06.xls (live.com)


以上

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菊池浩史
専門家

菊池浩史

住まいの消費者教育研究所

住まいにまつわるビジネス経験や、不動産鑑定士としての専門的知見を活かし、顧客ファーストで「住まい教育」を普及・実践。住まい選びやメンテナンス、そして家仕舞いまで、ワンストップでトータルサポートします。

菊池浩史プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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