空き家の発生予防行動期から習慣期へ移行する規定因について~住まいの終活シリーズ⑫~
(増加を続ける住宅総数)
新設される住宅戸数から除却される戸数を控除した残りがプラスである限り、住宅総数は増え続けます。それを上回る世帯数の伸びがなければ、新たな空き家の発生は避けられません。
2009年以降、新設住宅着工戸数(国土交通省「住宅着工統計」)は、年間100万戸を下回っているものの、依然として年間80万戸程度の住宅が新たに供給されています。。
(出所:「住宅着工戸数(国土交通省)」を基に筆者作成)
㈱野村総合研究所(2019年)によると、①移動世帯数の減少、②平均築年数の伸長、③名目GDPはほぼ横ばいなどの理由で、2030年度の新設住宅着工戸数が63~68万戸まで減少する見通しです。
一方の除却率(新設住宅着工戸数に対する除却戸数)は、1993年から2012年の間は約30~40%の間で推移していましたが、2013年~2017年は60%超まで上昇しました(㈱野村総合研究所2019年)。その理由の一つに、空き家対策特別措置法が施行によって除却が進んだとも考えられますが、仮に現在の除却率が続いたとしても、除却戸数を超える住宅が建設される限り住宅戸数は減少しません。
(世帯の高齢化と小型化)
人口は既に2009年をピークに13年連続で減少し、世帯総数は調査開始(1968年)以降増加を続けていますが、2023年をピークに減少へ転じる見通しです(国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(2018年推計))。
同研究所の推計によると、2040年には単身世帯の割合が39%に高まるほか、なかでも高齢単身世帯は17%と6世帯に1世帯の割合になります。これは世帯の高齢化と小型化が進行することを意味します。
ところで、高齢世帯以外の持家率が50%弱であるのに対し、高齢世帯の持家率は80%強と高く、高齢者の多くは相続の対象となる自宅を所有しています。
今後、高齢単身世帯が増加していくことを勘案すれば、高い自宅保有率は、相続や住み替えなどがきっかけに自宅が空き家になり、更にその一部が放置空き家になってしまうリスクを高めることを意味します(図表〇)。
㈱野村総合研究所(2019年)「2040年の住宅市場と課題~迫力を欠くストックシフト、本腰を入れた取組が必要~」