自宅の将来がご心配のシニアの皆さま、「お家のエンディングノート」を使って住まいの終活を始めませんか。
(背景)
住宅・土地統計調査(総務省)によると、約60年前の1973年(昭和48年)には住宅総数(約3106万戸)は世帯総数(約2965万世帯)を既に上回りましたが、いつ頃から空き家が社会問題として注目され始めたのでしょうか。
2010年(平成22年)に埼玉県所沢市で日本初の空き家条例が制定・施行されました。12年が経過した今日、少子高齢化の加速、高齢の単独世帯や夫婦世帯の増加、所有者不明土地問題、空き家対策特別措置法の施行など、空き家やそれに関連する話題をしばしば耳目にします。
そして、書店の不動産コーナーには空き家関連の書籍が数多く並んでおり、お盆や正月の帰省シーズンには、週刊誌などで実家の相続や空き家管理といった特集が掲載されています。
このように人々の空き家に対する関心は決して低くありませんが、既に住宅の約7戸に1戸が空き家になっている事実があり、今後も増加が予測されます。皆さんの自宅の周辺を見廻して下さい。今や、そこには数件の空き家が存在している時代です。
(地方公共団体の対応)
地方公共団体も既に様々な打ち手を講じています。2015年に全面施行された空き家対策特別措置法によって倒壊等の危険がある特定空き家に対し、立ち入り調査、撤去や修繕命令、解体撤去の行政代執行が可能になりました。特定空き家の件数も年々増加しています。
他にも立地適正化計画など都市計画と連動した空き家対策や、個々の空き家活用を目的に改修費や借上げ費用などを一部補助する制度などがあります。
また、一部の地方公共団体体は現存する空き家への対策に加え、空き家の発生予防や適正な管理を図る目的で住民への啓蒙活動を行っています。具体例として、終活と関連づけた家じまいセミナーなどの開催、リーフレットの作成と配布、相談窓口を設置するなどがあります。
(民間事業者・団体の対応)
NPO法人など非営利団体が行う空き家を活用したソーシャルビジネスは、公益性の高い事業が少なくありません。そのため、NPO法人が空き家を借り上げ子育て支援施設に転用するなど、多くの場合は行政からの助成等がビジネスの成立条件になっています。
民間事業者にとっては収益性が事業判断のポイントになります。空き家に纏わるビジネスも他のビジネスと同様、継続的なマネタイズ(収益性)は欠かせないため、事業機会は決して多くありません。しかし一方で、空き家の解体や管理で実績を挙げている事業者もあります。
空き家には事業化をしやすい物件としづらい物件が存在します。例えば、空き家バンクにはアットホームなどが運営する全国版から地方公共団体が運営する地域版のものまでありますが、登録している多くは、不動産会社の採算ベースには乗りづらい物件です。
(住宅所有者の対応)
終活がブームになってから10年以上が経過し、徐々に生活に定着してきた感があります。それに比べ住まいの終活は、相続対策と家財等の片づけや処分といった生前整理以外は余り注目されていない印象があります。
(株)クラッソーネが行った調査では、終活に比べ住まいの終活の認知度は低く、何をするのか、誰に相談したら良いかが分からないケースが多い結果が出ています。住まいの終活を知ればその必要性は理解するものの、次のステップにはなかなか進めないという現状が伺えます。
住宅所有者には、居住中に留まらず、何らかの原因で空き家になった以降も自宅を適切に管理することが望まれます。それには住宅所有者にも意識改革が求められます。また同時に、地方公共団体や民間事業者等による情報提供や相談機能など支援の強化も欠かせません。
(問題提起)
空き家の解消は一朝一夕にはできません。地方公共団体、事業者団体、住宅所有者等の主な対応を見ましたが、単独で出来ることは限られ役割分担が欠かせません。その中から次回以上のコラムでは、住宅所有者等の意識や役割・責任を中心に述べていきます。
現状の空き家対策は、発生した空き家をどう解消するかという事後対応が中心になっています。空き家対策特別措置法には空き家の適正管理を誘導する効果も期待できますが、あくまでも現存する危険な空き家の解消や規制が主な目的です。
費用対効果の点からは、事前対応の方が望ましいことは明らかです。事前対応できるかどうかは、事後対応以上に住宅所有者等の意識や行動に左右されます。如何に住宅所有者等の住宅管理に対する意識を高め、空き家の未然防止につなげるのが次回以降のテーマです。