高齢者住宅に関する情報収集をスムーズにするには
不動産取引では契約の前に、宅地建物取引業法(以下、宅建業法)に基づいて重要事項説明が行われます。これは土地や建物の売買や賃貸を対象にしていますが、有料老人ホームでも重要事項説明が必要です。宅建業法のものとどのような共通点や相違点があるのでしょうか。
有料老人ホームでは、老人福祉法等に基づいて重要事項説明が行われています。そこでは土地や建物の項目に加え、施設で提供するサービスの内容、提供体制や費用負担などが説明対象になっている点が宅建業法のそれと大きく異なります。
今回は、有料老人ホームの重要事項説明を取り上げます、主な内容は以下の通りです。
1.宅建業法と老人福祉法の重要事項説明書の共通点と相違点
2.有料老人ホームの重要事項説明書の課題
3.情報格差の解消に向けて
1.宅建業法と老人福祉法の重要事項説明書の共通点と相違点
宅建業法で規定されている重要事項説明書(売買用)の主な項目は次の通りです。
①有料老人ホームと違って、仲介する業者名と宅地建物取引士名が記載されます。
②土地と建物の状況や権利関係の表示
③都市計画法や建築基準法等の法令に基づく制限の概要
④私道の負担に関する事項
⑤造成宅地防災区域内か否か
⑥石綿使用調査結果の記録に関する事項
⑦建物状況調査の結果の概要
⑧建物書類の保存の状況、建物の耐震診断に関する事項
⑨飲用水・ガス・電気の整備状況
⑩取引条件に関する事項
⑪契約解除に関する事項など
次に重要事項説明書(賃貸用)の主な項目は次の通りです。
①建物の状況や権利関係の表示
②都市計画法や建築基準法等の法令に基づく制限の概要
③石綿使用調査結果の記録に関する事項
④建物状況調査の結果の概要
⑤建物書類の保存の状況、建物の耐震診断に関する事項
⑥飲用水・ガス・電気の整備状況
⑦建物の設備の整備の状況
⑧取引条件に関する事項
⑨取引条件に関する事項
⑩敷金等の精算に関する事項
⑪管理の委託先など
一方、有料老人ホームの場合は宅建業法による重要事項説明書とは異なり、サービスや組織体制の内容が大部分を占めています。
①事業主体の概要
②施設概要
③従業者に関する事項
職種別の従業者の人数及びその勤務形態
従事者の経験年数など
④サービスの内容
介護サービスの内容、利用定員等
入居後の住替えに関する事項
施設の入居に関する要件
契約解除の内容
入居者の状況
施設・設備の状況
⑤利用料金
一時金方式
月払い方式など
2.有料老人ホームの重要事項説明書の課題
このように有料老人ホームの重要事項説明書は、施設の運営に関することが非常に多く記載されています。これらを一度に理解することは至難の業で、介護に関する知識が相当必要です。契約の直前に重要事項説明を受けても、理解するのは難しいのではないでしょうか。そもそもどこをチェックすれば良いかも分かりません。
しかしながら、高齢者施設の選択の段階では、各施設の重要事項説明書に記載している内容に目を通し、しっかりと確認することをお勧めします。そして、状況に応じて専門家にアドバイスを求めることも必要と考えます。
重要事項説明書には、本来、高齢者施設の状況を読み解く情報が掲載されているものです。ところが、直近の内容に更新していない要事項説明書も時々見受けますが、このような施設はコンプライアンスの体制が疑われます。第三者の助言も受けながら、契約の前に重要事項説明書に目を通し、施設の状況を事前に確認することが極めて重要です。
契約をしてから、「あツ、しまった」と後悔しても後の祭りです。
「こんなはずではなかった」と言っても、「判を押していますよね」と言われかねません。
しっかりとチェックすることをお勧めします。