有料老人ホームにも重要事項調査報告書があることをご存知ですか。
前回までのコラムで、高齢者住宅に関する情報を収集する者(以下、情報探索者)の製品判断力(高齢者住宅の知識や良し悪しを判断する能力)が低い理由に、高齢者のニーズは多様で変化しやすい、高齢者住宅の種類が多様でサービス内容も様々、高齢者住宅への入居経験がなく選択基準を知らない、といったことを指摘しました。
そして、製品判断力が低い情報探索者は、溢れる大量の情報、並びに人的な情報源と呼ばれる相談窓口などへのアクセスが低い環境に置かれており、高齢者住宅のサービス内容やそのオペレーションに関する情報収集が阻害されていることも指摘しました。
では、どうすれば情報過負荷の中で、情報探索者は必要とする情報へアクセスし易くなるのでしょうか。ここでは、担当者と双方向で情報のやり取りができるという意味で、高齢者の選好性が高い高齢者住宅紹介センターなどの相談窓口を対象とします。
今やインターネットの検索機能を使えば、高齢者住宅の紹介業者などの相談窓口は数多くヒットします。しかし、それがゆえにどこへ相談したら良いか情報探索者は迷い、選択が難しくなっています。そして、これまで高齢者住宅に関する情報へのアクセスを如何にしやすくするか、という議論はそれほど活発に行われていない感じがします。
筆者が高齢者住宅の紹介業者などの相談窓口を利用した者を対象に実施したアンケート調査によると、約9割の方が地域包括支援センターなど他からの紹介を受けて来所していることがわかりました。地域包括支援センターなどが相談窓口への仲介機能を担っていました。
また、その利用者へのインタビュー結果から、情報収集の過程で地域包括支援センターなどの仲介機能を持つ場と接点がない者は、相談窓口の探索に苦労しているケースがありました。一方、相談窓口をスムーズに利用した者の多くは、知人などの紹介を得ていました。
このことから、フォーマル(地域包括支援センター等)またはインフォーマル(知人等)な仲介者からの紹介が、相談窓口へのアクセスをスムーズにしていると考えられます。
ただ、要介護状態になる前に地域包括支援センターや社会福祉協議会などの公的機関を利用することは、少々敷居が高いと感じられる方もいるようです。そこで、どうやって心理的な負担を少なくして気楽にアクセスできるかが重要になってきます。
そのためには、情報探索者にとり身近な存在である自治会や町内会などのコミュニティ組織、また生活インフラとして定着しているコンビニや買物施設などを相談窓口への仲介者や仲介の場として活用するのも効果的かもしれません。現に、ヘルスケアローソンといったコンビニと介護相談コーナーが同居しているケースもあります。
高齢者住宅に関する情報へのアクセスを改善するには、情報探索者と相談窓口とのつなぎ役となる仲介機能を拡充していくことが効果的ではないでしょうか。