書籍紹介シリーズ③「年寄りは集まって住め~幸福長寿の新・方程式~」
高齢者住宅に入居するために情報探索する者(以下、情報探索者)は、高齢者住宅に対する理解(製品判断力)が必ずしも高くありません。その理由として、高齢者のニーズが多様で不確実であること、高齢者住宅も多様でサービス内容などが変動すること、高齢者住宅の居住経験が殆どないことからくる選択基準の未知などが挙げられます。
情報探索の現場では、多様で不確実性の高い高齢者のニーズに対応しようとする情報提供サイドの意に反し、インターネットを中心とした網羅的かつ膨大な情報量や情報の複雑さと曖昧さによって、情報探索者の選択を混乱させ情報過負荷が発生していると推察できます。情報探索者は、製品判断力の低いため情報過負荷に陥りやすいと言えます。
このような状態を改善するには、要約された情報で高齢者住宅の特性と情報探索者のニーズを関連づける必要があります。それにはインターネットのような網羅的かつ多様な情報を提供する情報源よりも、高齢者住宅の特性と情報探索者のニーズを十分に関連づけることのできる相談窓口などの人的情報源の活用が有効だと考えます。
人的情報源には、情報をやり取りできる「双方向性」と相手や状況で情報の内容を変えることができる「個別性」が備わっています。個別ニーズを把握して、それに応じた要約された情報が提供されれば、膨大な選択肢を絞り込むことも容易になります。筆者が行った調査でも、情報探索する者はネット情報よりも人的情報源を選好する傾向が強いと言えました。
ところが、相談窓口を利用したいがアクセス方法を知らないため利用できない、という趣旨の発言が多くありました。このことは相談窓口などの人的情報源へのアクセスがスムーズとは言えない状況にあることを意味しています。高齢者住宅に関する情報源や情報量は増加したものの、選好性が高い人的情報源へのアクセスビリティが十分に確保できていないことが課題だと言えます。
情報源が情報源として機能するには、情報源の有無や存在する拠点の数である「社会資源」、情報ネットワークや情報を必要とする者に確実に届ける仕組みである「環境条件」、そして「消費者の能力や特性」という要素が揃わなければなりません。特に、情報探索者に届ける仕組みである環境条件が十分に整っていないことが示唆されました。
その結果、高齢者住宅の中で提供される付帯サービスとオペレーションに関する事実情報や評価情報、そして個々人にカスタマイズされた情報などが十分に届けられていません。
次回は、情報探索のアクセシビリティをどう改善できるかを考えてみます。