マイベストプロ大阪
菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

住まいと終活②

2021年2月18日

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 相続税まちづくり資産管理

そもそも「住まいの終活」とは、どういったことを指すのでしょうか。相続が発生する前に、住まいの現在の所有者や相続人となる家族らが、次の所有者や利用者を決めてスムーズに引き継ぐために、情報を共有して条件整理や選択肢の検討をすることだと言えます。このような住まいの円滑な継承は、空き家の発生を防ぐことにもなります。

「住まいの終活」の具体例として、明治大学の野澤先生は以下の内容を挙げています。
①不動産にまつわる基礎資料(登記簿、契約書等)を取り揃える。
②土地の境界確定やマンションの管理状態等、不動産の売買や賃貸にあたり支障がないかを確認し、問題がある場合は早めに専門家へ相談する。
③周辺の相場や取引情報から、民間市場での流通可能性を検討する。
④住まいの将来の選択肢と信頼できる相談先を検討する。

ところで、2020年に(株)クラッソーネが自宅を所有する50歳以上の男女536名に対し、「住まいの終活」に対する意識調査を実施しました。その結果、「終活」の認知度が9割と拡大している一方、「住まいの終活」については約3割と認知が低く、また約6割の人が「住まいの終活」について不安を感じるなど、対応の遅れが明らかになりました。金銭面の不安以外にも「そもそも何から手をつけたらよいかが分からない」という戸惑いの声が多くありました。「住まいの終活」の重要性は理解できるものの、費用や進め方などの不安要素がネックになっている実態が浮き彫りとなりました。

「住まいの終活」に不安を抱く理由の一つに、「誰に相談してよいか分からないこと」があります。子どもや親族と相談している人が約25%に留まる一方で、専門家などの相談相手がいないとか、身近に相談できる相手のいないなどの悩みが聞かれます。終活アドバイザーなど「終活」の専門家はいても、「住まいの終活」の専門家は少ないのが現状です。また相続が発生しても現在、相続登記は義務ではなく罰則もありません。土地の価値が低いとか、手続きに費用が発生し面倒だと感じると登記は放置されがちになります。相続登記の義務化が2023年度に予定されていますが、制度的な課題も「住まいの終活」への対応が遅れている要因と考えられます。

このような状況のなかで、空き家の活用に留まらず、空き家の発生を抑えようとするサービスも登場しています。東急不動産は不動産ベンチャーの株式会社FFPと連携し、子どもの独立で住み替えを考える60代前半の世代をターゲットに、自宅の借り手探しと住み替え先の紹介をセットにしたサービス「たくす」をスタートさせます。また先に紹介した(株)クラッソーネは解体工事会社と空き家所有者のマッチングサイト「くらそうね」を立ち上げています。今後は、解体前の遺品整理や解体後の売買仲介など外部業者と連携していく予定です。

このような「住まいの終活」に繋がるサービスが増えていくことで、一人一人の「住まいの終活」への意識の高まりと相談先が増えていくことが期待できます。

以 上

この記事を書いたプロ

菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(住まいの消費者教育研究所)

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