日本のコーチングの現状<No.10> セッションでコーチは何をみているのか(1)
若い後輩から「この10月からマネジャーになりそうなんですが、どうもいやですね」という話を聞きました。
「なぜ?」
「責任ばかり大きくて魅力を感じません。私の上司は優秀だと思いますが、いつも忙しそうで辛そうです。自分があの立場になると思えばたまりません。自信もないし不安です。魅力的なことは一つもありませんよ。あるとするなら、給与が少し増えることぐらいかな?」
「そう思うのは残念だね。一度あなたの上司にマネジャーの魅力を聞いてみるといいよ。彼だったら色々教えてくれると思うよ」
ということで、また後日彼と会って話を聞いてみました。
「上司に聞いてきました。マネジャーになったとき、チーム全体をみるという仕事が加わって、大きな仕事をしている実感があったそうです。そして、いちいち上司にお伺いを立てることも少なくなって、自分で決めることができる範囲が増えたし、周りのチームへの影響度も広がったので、自分がひと回り大きくなった実感もえられたそうです。それに部下が成長していくのを見るのが楽しい、と言っていました。私がマネジャーになるのも凄く楽しみにしてくれています」
「よかったね。マネジャーになると、一人ではできない大きなことをメンバーと一緒になって成し遂げることができる。皆の意見を聞きながらだが、最後は自分で決めることができる。裁量が大きくなる実感を得ることができる。それに仕事を通じて、メンバーが成長していくのがわかると楽しい。業務そのものができるようになることもうれしいけど、仕事の取り組み方とか精神力とか、例えば積極性、克己心、柔軟性、自主性とかがついてくると、本当にうれしいよ。ましてやあなたのような将来有望な人がマネジャーになってくれると、マネジャーをやっていてよかったと思うのではないかな?」
最近、管理職に成りたくない、という意見がよく出るそうです。理由は「責任ばかりが大きくなる割には、それに見合うだけの給与はあがらない。残業がつかなくなる分、実質的には給与ダウンかもしれない」といった考えです。収入が一番大切な価値基準となっている傾向があるように思います。では「収入がいくらあれば納得か?」と問えば「あればあるだけ」となります。収入が多い人が幸せかといえば、必ずしもそうではない。収入が少なくても幸せな人も大勢います。精神的な満足感や成長に価値を置く方が幸福感は大きいのです。マネジャーになると自分自身の成長と部下の成長に関わり、組織として大きな仕事ができるそんな関わりができる幸せ、充実感があります。