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部下のやる気を引き出す目標設定

原島敏郎

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 かつて私たちが営業で活動していた時代には、目標は 「数値目標」 だけでした。いわゆる 「成果目標」 です。営業担当者は目標数値が示されると、どの得意先でどれぐらい実績を上げることが出来るかを考え、従来のやり方では達成が難しいようであれば、なんらか工夫していきます。例えば展示会を開く、得意先向け勉強会を開催する、キャンペーンを実施するなど。これらをいつ、どこで、だれを対象に、どうやって、どの商品を扱うかを明確にする。成果を出すためにどのような行動をするのかを目標とする。これが「行動目標」です。
 数値目標しか念頭になく、会社からも目標数値の追求しかされなければ、やらなければペナルティという意識となって “やらされ感” で一杯になってしまします。ですから、「成果目標」 を達成するための 「行動目標」 が大切といわれます。しかし実は 「行動目標」 も、営業担当者にとっては、自分の “外” にある目標です。その 「行動目標」 も “自分にとって” 価値あるものでなければ、やはり “やらされ感” が残ってしまいます。そこで登場するのが 「成長目標」 です。「成長目標」 とは、目標を達成するために必要な 「知識や能力」 を明らかにして、それを身に着けることを目標としたものです。

 具体的な事例です。私のクライアントで営業マネジャーの方の例です。彼の部下の一人に入社3年目のA君がいました。A君は、今まで月平均6,000千円しか売った経験がありません。チームに大きな目標が来たので、A君にも「月10,000千円」という目標を展開せざるを得ない状況となってしまいました。A君は、ダメと思えば最初から、投げ出してしまう傾向があったので、そのマネジャーは、成長目標にフォーカスしてA君と話をしました。
 A君は、営業プロセスのなかで、「製品知識を豊富に持つ」 「得意先のニーズを掴む」 ことは、ある程度出来ていますが、どうも 「クロージング」 が弱い。お客様に買っていただく、その最後の言葉掛けができない、ということを自分で気づき、今期は 「クロージング力を強化する」 という目標も立てました。
 そのために営業手法の書籍を読む、複数の先輩と同行して、先輩のクロージング手法を学ぶ、という行動計画を立て実行しました。そして学んだことを自分の訪問先にも使ってみるようにしました。A君は、月10,000千円は意識しながらも、「クロージング力を強化する」ことを目標に活動したので、モチベーションを落とさずに、徐々にいくつかの新規先を獲得して、年度の終わりの方には安定して月8,000千円を売り上げることが出来るようになりました。A君は、その年度は未達成で終了したのですが、「営業マンとして自分は成長した」という実感を得ることが出来て、次年度に向けて自信がついたようです。

 この事例の場合、「月売上目標、10,000千円」 が 「成果目標 」で、「クロージング力を強化する」 というのが 「成長目標」 となります。高い成果目標の達成だけを求めていくと相手が苦しくなります。しかし成長目標の方は、部下自身がどう取り組むか、の行動面ですし、自分の成長を実感することが出来ます。ですから自分の “内側” にあります。「成長目標」 を設定することが “やらされ感” からの解放となります。部下は自分の成長を意識して目標達成に向かって主体的に活動してくれるようになります。

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原島敏郎
専門家

原島敏郎

有限会社ソリスナビタス

大手企業での長年のマネジャー経験を生かし、マネジャーが陥りやすい考え方や立場上の苦しさなどを十分に理解。マネジャーの上司や部下との関係を調整しつつ、実績を上げられる組織作りをサポートします

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