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若手研究員がマネジャー候補になった“秘訣”とは

原島敏郎

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 ある企業で「うちの部に優秀で将来が楽しみな若手研究員がいる。彼をコーチしてほしい」という依頼があった。彼に会って話を聞くと「私は今、岐路に立っていると思う。研究のスペシャリストのままで進むか、マネジメントの世界に進むか?どっちにしろ、いったん決めたら、後戻りはできないことはわかっています」
 彼はある研究のテーマについての「テーマリーダー」という立場で、そのプロジェクトの推進を任されている。かなりの大抜擢だそうだ。しかし研究部門全体の中では、そのプロジェクトの優先順位はそれほど高くなく、プロジェクトメンバーにとっても、自分の本来の仕事もあるし他のプロジェクトのメンバーも掛け持ちしていることもあり、その仕事はついつい後回しになってしまう。プロジェクトメンバーの1人の研究結果が出ないと次の人が実践できない。そういうことがプロジェクトのあちこちで起こり全体の進行が大幅に遅れそうになっている。
 「上司からは、『あなたが皆さんにお願いして、早く実験が進むようにしてください』とだけ言われています。全員自分より先輩だし、テーマの優先度は低いし、お願いしても『できるだけ早くするね』としか回答が返ってこないのです」
 「そのプロジェクトがうまくいけば、プロジェクトメンバーの皆さんにとってどんないいことがありますか?」
 「新製品として市場に出れば、お客様から喜んでもらえる。プロジェクトメンバーも評価ポイントが上がる。でもそれはどの製品でもそうで、この製品に限ったことではありません。それぞれの製品のコンセプトがあって、それぞれのメリットもある。製品の魅力は優劣つけがたい。売り上げ予測からいけば、やはり二の次になってしまいます」
 「では、逆の立場だったら、どんな関わり方をしてもらうとプロジェクトの優先順位があがりますか?」
 「リーダーの“情熱”かな…。もともと個人的につながっている人、仲の良い人、仕事でつながりがあっていい関係になっている人。そういう気心が通じ合っている人に“熱く”語られるとその気になります。…労働組合の会合で仲良くなった人がメンバーにいるので、まずその人から巻き込んでみます」と瞬間にして顔が明るくなりました。
 1か月後のセッションでは、しっかりした口調で、
 「スペシャリストかどうかで悩んでいましたが、マネジャーになる道を選んだ方が、大きいプロジェクトを動かしていくことができます。そっちの方が面白そうです」と言っていました。自分が担当しているプロジェクトも少しずつ好転してきたようだ。

 会社のビジョンやミッションなども十分理解しており、いつも論理的で冷静な判断をしている研究員の人たちだからこそ、論理性と冷静さを越えた“熱い思い”がメンバーを動かしているということを教わりました。その熱い思いをもつことが研究部門でマネジャーになる“秘訣”なのでしょう。

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専門家

原島敏郎

有限会社ソリスナビタス

大手企業での長年のマネジャー経験を生かし、マネジャーが陥りやすい考え方や立場上の苦しさなどを十分に理解。マネジャーの上司や部下との関係を調整しつつ、実績を上げられる組織作りをサポートします

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