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社長から営業本部長人事の相談

原島敏郎

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 コーチをしている社長さんから、「今の営業本部長が、定年になるので次期営業本部長を決めないといけません。A支店長かB支店長のどちらかを昇格させようと思っています。」
 「社長のお考えは?」
 「A支店長」
 「理由は?」
 「A支店長の方が年上だし社歴も長い。多少独善的だが決断力がある。昔から販売力があった。その経験をベースに、みんなに檄を飛ばすタイプ。皆の雰囲気がキリッとしまる。その分実績は上がる」
 「B支店長を候補の1人にされた理由は?」
 「Bの方が、常に謙虚なところがあるので、他部門のメンバーとの交流も良好だ。部下の意見もよく聞いている。その分多少決断が遅いようにも思うが、みんなの意見を聞いて決めているから判断は結構的確だ。部下も他部門のメンバーもついてきている」
 「今、口に出されていかがですか?」
 「う~ん。Bだな」
 「改めて社長が営業本部長に求めるものは何ですか?」

 その後の社長との会話で、社長が営業本部長にもとめる資質が明らかになりました。営業本部長のように会社全体に影響を与える人に求めることと、課長や支店長に求めることとは違う。その違いは4つ。
1.全体最適の視点
 課長や支店長ですと実績をいかに上げていくかが問われる。しかし営業本部長は、会社の営業に関する考え方や姿勢が問われる。短期的な実績にしか意識がいかないようでは困る。私利私欲ではなく“公欲”。一休和尚が「小欲を捨て、大欲に立つ」という言葉を残している。自分だけ良ければいいという私利私欲につながる“小欲”を捨てて、この会社、この業界、この国全体が豊かになる“大欲”を持て、という話。目先の売り上げももちろん大事だが、会社を取り巻く人たちとの関係性、環境などに対してどういう姿勢で営業活動をしていくのかなどの方針を出していくことも必要となってくる。全体最適を考える視点が大事。
2.変革の姿勢
 また会社を取り巻く環境はドンドン変化していく。その変化に対応して、自分も会社も変革していこうという姿勢がほしい。そのためには常に謙虚に自分、会社を見つめて、変革するところは変革の旗を振ってほしい。お客様や部下、他部署の人たちの意見も常に耳を傾けることも心がけてほしい。
3.部下を育てる
 営業本部長になると支店長が直接の部下となる。短期的な実績ばかりに目が行っているわけにもいかない。支店長を育てる立場にある。支店長がいかに課長を育てているかをよく観察して、支店長のマネジメント能力をアップしてほしい。ましてや本部長が直接課長や担当者に実績追求することは避けたい。
4.会社の方針を自分の言葉で発信する
  「社長が言っているから」では心もとない。より上位職になると、発する言葉を特に留意する必要がある。それだけ“重み”がある。もしあまり発信しないでいると一言ひとことの“重み”はますます増す。誤解が生じたり、間違って伝わったりする可能性もある。会社の方針は、できるだけ社員の腑に落ちるように噛み砕いて説明してほしい。「10人に考え方を徹底するには10回言うのではなく、10通りの言い方を考えろ」と言う。
 
 社長とのコーチングで営業本部長に求める資質が出てきました。そのうえで「立場が人をつくるから、随分貢献してくれたA支店長を本部長にしてあげたいが、適性を考えるとB支店長だ。A支店長には別の任務をお願いしよう。B支店長もまだまだ物足らない部分もあるが鍛えることにしよう」ということで、社長は自信をもってBさんに営業本部長を委嘱しました。

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専門家

原島敏郎

有限会社ソリスナビタス

大手企業での長年のマネジャー経験を生かし、マネジャーが陥りやすい考え方や立場上の苦しさなどを十分に理解。マネジャーの上司や部下との関係を調整しつつ、実績を上げられる組織作りをサポートします

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