日本のコーチングの現状<No.10> セッションでコーチは何をみているのか(1)
今、エグゼクティブコーチをつけている経営者の方が増えています。これにはどのような背景があるのでしょうか?
経営を取り巻く環境が大きく変化し、その変化のスピードは年々急速になっています。製造技術、IT技術、金融環境、労務環境などいずれも目を離せない状況になっています。さらにそれらの環境の変化が複雑に絡み合っています。
そういう中で、企業が今後も成長し続けるためには、社員一人ひとりそしてチームがそれぞれの専門性を高め革新し続け、自らの専門領域を超えて互いに情報を共有し、知恵を融合し、協力し合って、企業全体として成長し成果を出していくことが求められます。
しかし過去の成功への手法や経験則が有効に機能しない、経営に関する情報は処理しきれないほど溢れており意思決定の難易度が格段と高まっているうえに、社内で相談できる部下も限られている、など経営者にとって課題は満載です。
経営課題の解決のためには、幹部社員をはじめ多くの社員が経営能力全般・戦略立案力・実行力などを高めて課題解決できる力を身に付けていくことが大切です。そのために経営者自身が、客観的に自分自身を内省し、環境の変化に適合すうよう自己変革・自己成長し、自社組織を一層強化していく推進者になることが今まで以上に求められています。
エグゼクティブコーチは、経営者に代わって問題解決することはありません。したがって、コーチが調査・分析・戦略立案などをしてくれることを期待してはいけません。エグゼクティブコーチの目的は、あくまでも経営者自身が戦略的視点で意思決定していくことをサポートし、経営者と企業の幹部社員のさらなる成長を後押ししていくことです。
経営者がコーチングを求めている課題は、企業ビジョンの策定と組織内への浸透、一層の利益を生み出す組織への変革、チームビルディング、戦略的思考と意思決定、行動力や変革推進力の向上、後継者育成、部下育成などです。
もちろんエグゼクティブコーチは、ビジネス経験とくにマネジメント経験を踏まえて、レベルの高い訓練を受けた専門的なコーチであることが求められます。アメリカでは経営幹部はコーチをつけることが普通になっており、日本でも急速にコーチをつける経営者が増えてきています。これはコーチングを受けている経営者の方々が、そこに大きな価値を見出していることが、エグゼクティブコーチングの必要性を証明していると考えます。