短パンにはハイソックスじゃないとダメ?
2021年夏、新型コロナウイルスの第5波が猛威を振るう最中、有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)では甲南大学(兵庫県神戸市)の体育ゴルフ授業「Gちゃれ」を開催した。
さらに、第6波が猛威を振っていた2月にも流通科学大学(兵庫県神戸市)の社会科学部のゼミプログラムの一環でゴルフ体験プログラム「Gちゃれ」を行った。
大学ゴルフ授業「Gちゃれ」とは?
大学の体育ゴルフ授業とは、一般教養科目の体育授業のひとつとしてゴルフ未経験の学生が多く受講する正課の授業である。全国述べ580の大学で実施され、年間数万人~10万人の学生が受講する人気の講義となっている。(※2014年大学ゴルフ授業研究会調べ)
しかし、授業に使用するゴルフ用具は古いものが多かったり、ほとんどの大学授業は学内施設のみで、学生たちは実際のコースを経験できていない。
そこで、こういった問題を解決するために、発案された大学授業とゴルフ場との接続プログラムが「Gちゃれ」である。
「Gちゃれ」とは、大学でゴルフ授業を受講した人向けの課外教育プログラムとして、(一社)大学ゴルフ授業研究会と(一社)日本ゴルフ場経営者協会が協力して発案したプログラムである。
実際のゴルフ場を通じてプレーやマナーを学び、本物のコースを体験することで学生のゴルフ継続意欲の向上を目的としている。
関西地区Gちゃれ推進担当
2016年、私はこの取り組みに賛同し、当時はまだ東京でしか行われていなかった「Gちゃれ」を関西でも広げるため、自ら「関西地区Gちゃれ推進担当」を名乗り、各大学のゴルフ授業を担当されている先生に呼びかけ、ゴルフ場での「Gちゃれ」開催を促す活動をはじめた。
先生方のお話を聞くにつれ、課外授業での「Gちゃれ」というよりも、問題ある正課授業の改善を目的にした「Gちゃれ」の開催を考え、提案するようになっていった。
有馬カンツリー倶楽部では、これまでに甲南大学のほか、追手門学院大学(大阪府茨木市)、流通科学大学(兵庫県神戸市)、大阪学院大学(大阪府吹田市)、武庫川女子大学(兵庫県西宮市)などの大学ゴルフの正課授業や課外授業のお手伝いをしている。
甲南大学の「Gちゃれ」開催のきっかけ
甲南大学の「Gちゃれ」のきっかけは、授業の受講定員12名という少ない人数が問題となっていたことだった。
当時の授業は、学内やゴルフ練習場で事前練習をしたのち、単位取得の最終授業が近隣パブリックコースでのラウンドプレーとなっていた。
話を聞き、この授業の最終目標を「18ホール完走」としていたことに問題があると感じた。
最終組でのラウンドスタートとはいえ、後半のハーフを折り返すトップスタートの一般プレーヤーがすぐ後ろを付いてくるため、どうしてもプレーファーストが要求される。
ある程度練習場で事前授業をしているとはいえ、やはり初心者学生には高いハードルである。
3名の引率教員が面倒を見るには3組12名が限界。先生はプレーヤーではなく指導者としての帯同となるが、それでも一般プレーヤーからクレームが出てくる状況が続いていた。
ゴルフ場は低価格での協力はしてくれるものの、その他に人的な協力はなく、発生するすべてのトラブルは、先生及び大学の責任となる。校外授業の存続自体が難しい状況となっていた。
この状況を聞いた私は、以下の3点を提案することにした。
①技術指導からラウンドプレーまで全面的にゴルフ場が協力する。
②最終組の後半スタート後や休場日などコースの空き時間帯を効率的に利用し、一般プレーヤーと切り離して授業を進める。そうすることでレベルに応じたペースで授業を行えるようにする。
③ゴルフ場側から受講定員限定の要求はしない。
未経験若年者のゴルフ場デビューについて研究したいと思っていた私にとって、甲南大学の状況は、これからゴルフを始める人に対し、ゴルフ場がどのような環境を整えればよいかを実践する良い機会だと捉えた。
そして、2017年冬――。
第1回目の甲南大学「Gちゃれ」を開催。3日間の集中授業として、有馬カンツリー倶楽部での新たな体育ゴルフ授業がはじまった。初年度の受講学生は29名。これまでの2倍以上の受講者となった。
そして2018年夏、2019年夏と続けるに従い、30名超えて年々受講学生が増えていった。
コロナ禍のゴルフ授業
そんな矢先に、コロナ禍の2020年夏――。
今から考えると、大学側は授業開催をよくOKしたなと思う。7月までの前期授業のすべてが、休講かオンラインによる授業のみで、対面授業をまったく行っていない状況。にもかかわらず、はじめての「対面授業」がこのゴルフ授業だった。
そのため授業に際して大学側の要望はとても細かいものだった。
①屋内でのミーティングは行わない
②クラブバスは定員の半数乗車で「3密」を回避
③授業中においてはソーシャルディスタンスの徹底
④手洗いの徹底
⑤使用するゴルフ用具の消毒の徹底
⑥レストランでの食事は一般来場者と異なる場所で行う等々。
様々な要件をクリアして、ようやく開催にこぎつけた。
先生方も開催の認可を得るまで大変なご苦労をされたことだろう。もしも授業でクラスターが発生すれば責任問題になりかねず、相当な覚悟を持って授業開催に踏み切られたと思う。
国内約800ある大学は、少子化の波をもろに被り、大半が定員割れの状況と聞く。今後、廃校や統廃合が進む中で大学教員のリストラも深刻化する。ましてコロナ禍でクラスター感染が発生すれば、わが身が危うくなるのは必定。
一言で「覚悟」といっても、そんな諸々を考えると、私たちゴルフ場側も中途半端なことは絶対にできない。改めてそう決意したが、8月酷暑期の開催のため、同時に熱中症対策にも万全を期す必要があった。
こまめな水分補給はもちろんのこと、以前小さなブームを起こした「ファン付き日傘」を全員に貸し出し、「シャツクール」をスプレーし、氷や塩飴も随時補給するなど、考え得る万全の態勢で授業に臨んだ。
鬱屈を晴らすような屋外での対面授業
参加学生は例年の半数以下の12名でしたが、よく参加してくれたなと思う。クラブバスでの移動中、乗車している学生にそれまでのコロナ禍生活を聞いてみた。
「授業もなく、ずっと自宅に引きこもっていた」「どこにも遊びに行っていない」「久しぶりに身体を動かせる!」といった声が多く、学生たちも悶々としたコロナ下での生活を過ごしていたように感じた。
ゴルフコースでの対面授業で、そんな不自由な思いを少しでも晴らせたなら嬉しい限り。
授業はケガもなく無事に終了。その後も新型コロナウイルスの感染者が出なかったかと心配したが、9月に入って大学側から翌年の見積り要請があったので、胸をなでおろした。
そして、今年2022年夏も開催する予定となっている。
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