日本ゴルフの特別ルール『前方特設ティー』の使い方
ティーショットの打ち直しOK!「マリガン」
アメリカではプライベートなラウンドに限り、スタートホールのティーショットが気に入らなかったら、もう1回「打ち直し」を認めるという慣例があります。これを「マリガン(mulligan)」といいます。
いつでも何回でも「打ち直し」ができるというわけではありません。
ハーフごとに1回、最初のホールのティーショットに限り適用されるというのが一般的です。いうまでもなく、このようなプライベートルールの適用には、同伴プレーヤー全員の同意が必要です。
そうじゃないと「何、勝手なことやってんだー!!」と喧嘩になってしまいます。
「マリガン」の由来に関しては、USGA(全米ゴルフ協会)のホームページにも書かれていますが、その中でも色々と説があるようです。
その中で広く受け入れられているのは、1920年代のカナダ・モントリオールのセント・ランバートCCのデイビッド・マリガン氏の名前を由来とする説です。マリガン氏は、カナダ及びニューヨークで手広くホテルを経営していました(マリガン氏が医師と言う説もある)。
このマリガン氏による一番目の説は、或る日、マリガン氏がロングドライブを打つものの真っ直ぐ飛ばなかったので、衝動的に打ち直した。あまりにも素晴らしい当たりだったので、マリガン氏は「打ち直したボールを正式なショットにする」と言ったので、友人がこれを「マリガン」と命名したという説がひとつ。
二番目の説は、マリガン氏がいつもスタート時間のギリギリにやってきて、急いでティーショットを打って、それが必ずミスショットとなっていました。これを見て可哀想に思った友人たちが、「マリガン!もう一球打ちなよ」と言って、「プライベートルール」にしたのが始まりではないかという説です。
その他にもUSGAでは説を載せています。
本家アメリカのゴルフ総本山USGAの見解でさえ、これだけ諸説あり、今となってはどれが真実かは分かりません。
しかし、この特別ルールは、あっという間にアメリカ中に広がっていきました。
「マリガン」はプライベートルール
アメリカのゴルフコースには、”マリガン禁止”と書いてある所もあります。それほど、「マリガン」は一般に普及しており、またプレーペースの問題にもつながっているということです。
日本では「マリガン」は一般的ではありませんが、同様の特別ルールがあります。
「ティショットがOBの場合、特設ティから前進4打でもプレーできる」という「特設ティーによる前進4打ルール」です。
初心者にとって、スタートホールのティーショットの重圧は相当なもの。それを救ってくれるのが「マリガン」ということですね。
同じように「前進4打」の看板をみて、「ああ助かった」という初心者ゴルファーも少なくないでしょう。
しかし「マリガン」は「プライベートルール」、前進4打は「ローカルルール」という、共に本来のゴルフルールからは逸脱している特別ルールだということを理解しておきましょう。
プライベートルールとは、ゼネラルゴルフルールとは全く関係なく、ゴルフ場がコース状態にあわせたローカルルールとも違う、プレーヤーたち自身で決めたグループのルール。それこそ「英語禁止ホール」と同じレベルです。
「ビリガン」
元アメリカ大統領のビル・クリントンは、最も「マリガン」を駆使したプレーヤーと言われています。またゴルフのスコアの信憑性について、ビル・クリントンほど疑われた大統領はかつて例がありません。
大統領在任中に「80を切った!」と言ったが、アメリカのゴルファーの多くからブーイングを浴びました。
クリントンのゴルフは、「マリガン」が当然で打ち直します。それも「マリガン」と言えるほどはっきりと宣言するわけでもなく、巧妙に何発も打ち直します。その結果、どのボールがインプレーのボールだったか分からなくなり、一番良い位置にあるボールをインプレーのボールとしてプレーを続けるのです。もはやクリントン自身が発明したと言ってもいい打ち直し方でした。これにより、ビル・クリントンの「マリガン」は「ビリガン」と呼ばれて軽蔑されていたといいます。
ビル・クリントン元大統領は語ります・・・
「私のマリガンは大袈裟に言われ過ぎだよ……いいかい、マリガンを使えばゴルフがうまくなるんだ。マリガンを使っていなかったら自分の実力がほとんど出せていなかったことに気付いて、きっと驚くよ。」
■参考文献
「大統領のゴルフ」ドン・ヴァン・ナッタjr.著/春 具・吉田晋治:NHK出版
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