「サブ(予備)グリーン」の取り扱いルールについて

谷光高

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テーマ:これだけは知っておきたいゴルフルール

日本では、季節あるいは整備上の都合によって使い分けをするために、1つのホールに 2 つのパッティンググリーンを設けているコースがあります。
一般的にホール及びピンフラッグのあるパッティンググリーンを「メイングリーン」といい、ホール及びピンフラッグがなく使用していない方のパッティンググリーンのことを「サブ(予備)グリーン」といいます。
この「1ホール2グリーン」及び「サブグリーン」の取扱いルールについてお話しします。

ゴルフルール上の「サブグリーン」の取り扱い


現在のゴルフルールにおいて、「サブグリーン」は「目的外のパッティンググリーン“Wrong Putting Green” 」 (ゴルフ用語の定義62・規則25-3)として扱われます。

規則25-3では、「サブグリーン」を含む「目的外のパッティンググリーン」に乗ったボールは、罰なしに球を拾い上げ、救済のニヤレストポイントから1クラブレングス以内で、かつホールに近づかない場所にそのボールをドロップして処置します。これに違反した場合は2打罰が科されます。

欧米とルール上の解釈が異なっていた「サブグリーン」

欧米では、以前からこのルールに基づいて処置されてきましたが、JGA(日本ゴルフ協会)では違うルールを適用しており、2012年までは「サブグリーン」は「目的外のパッティンググリーン」ではなく、「スルーザグリーン」として扱い、ゴルフ場や競技ルールにおいて、「サブグリーン」上からのプレーを禁止したい場合は、「サブグリーンはプレー禁止の修理地とする。」というローカルルールの採用をするように勧めてきました。
ローカルルールの採用がなく、「スルーザグリーン」として扱うという場合、「サブグリーン」上から、ボールをそのまま打たなければならないということになっていました。

しかし、ゴルフ規則の「用語の定義62、規則25-3 “Wrong Putting Green”」は、JGA訳の「目的外のパッティンググリーン」というより「誤った(間違った)パッティンググリーン」が本来の意味ともいえます。
欧米の解釈では、現在使用しているパッティンググリーンが「正しいパッティンググリーン」なら、それ以外はすべて「誤ったパッティンググリーン」と考えられています。そして、この「誤ったパッティンググリーン」に乗ったボールは、規則25-3に従って処置してプレーしなければならないという解釈につながっています。

解釈の違いから起こったトラブル

「救済のニヤレストポイントからのドロップ」と「そのまま打つ」という2つの解釈。JGAの解釈は、世界共通の解釈と異なり、プロ競技においても長くトラブルの種となっていました。

2004年、滋賀県大津市の瀬田ゴルフコースで行われた米LPGA主催の「ミズノクラシック」。日本女子プロのトップスター、宮里藍(当時19歳)選手は、2日目3番ホール(パー3)で、サブグリーンに乗った第2打を、JGAの解釈に基づいてそのまま打ちました。
ところが同組でのアメリカ選手に「規則違反」とアピールされ、駆けつけた米LPGAの競技委員にゴルフ規則25-3「目的外のパッティンググリーン (Wrong Putting Green)」に違反したとして、即座に2打罰が科されました。宮里選手は納得のいかない表情をしていたそうです。

逆のトラブルもありました。
1999年の太平洋クラブ御殿場コースで行われた「太平洋マスターズ」では、特別招待のS・ガルシア選手が、最終日最終18番でサブグリーンに乗った第2打を欧米の解釈であるゼネラルルールに従って、当然のごとく救済のニヤレストポイントを決めてドロップしたところ処置違反と見なされ2打罰となりました。ガルシア選手も「欧州ツアーでは可能だ」と言い、信じられないといった表情だったそうです。 太平洋クラブ御殿場コースでは、この一件があったからかどうかは分かりませんが、この後に1グリーン化へとコース改造をされました。


2012年 JGAによる解釈変更

たったひとつのゼネラルルールなのに、この日本と欧米との解釈の違いはなぜ起こったのでしょうか。
欧米のゴルフコースではほとんどが「1ホール1グリーン」、もしくはイギリスの歴史あるリンクスコースなどに見られる「2ホール1グリーン」のいわゆる「ダブルグリーン(double greens)」。「1ホール2グリーン」のゴルフ場は、まず見られないようです。
「1ホール2グリーン」を日本独自のゴルフ文化として捉えることによって、ゼネラルルールの適用とはせず、日本だけであるがためにローカルルールでの適用で対応しようとしてきた結果なのかもしれません。

海外では「1ホール2グリーン」のゴルフ場でのプロ競技はありません。しかし、日本では昔から多くのプロ競技が行われてきました。近年では日本のプロ競技への海外選手の参加が増え、また「ミズノクラシック」のように日米LPGAの共催競技もあります。そのためにトラブルも発生しました。それらの矛盾から2012年のJGAの解釈変更につながったと思います。

2012年以前のJGA発行ゴルフ規則では「付属規則Ⅳ」に「予備グリーン(プレー禁止の修理地とする場合)」としてローカルルールの採用を勧めるという記載がありましたが、現在、「予備グリーン」という文字は、ゴルフ規則内に一切出てはきません。

日本で2グリーンが必要だった理由
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谷光高
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谷光高(ゴルフ場経営者)

新有馬開発株式会社(有馬カンツリー倶楽部)

一部の人が楽しむゴルフから、誰もが気軽に楽しめるゴルフへ。日本のゴルフ文化を変えるため、ゴルフ初心者へのサポートや子どもたちへのレッスン、学校の授業などを行い、初心者にゴルフを楽しむ機会を提供している

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