ゴルフと「ジーンズ」

谷光高

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ゴルフ世界から嫌われている「ジーンズ」

日本だけでなく、世界中の多くのゴルフ場や競技規定のドレスコード(服装規定)で「ジーンズ」が禁止されている。ゴルフウェアだけでなく、ゴルフ場への入退場時の服装についても同様に禁止されている。
多くの球技でも「ジーンズ」をはいてプレーするといった競技は聞いたことがない。

しかし、最近ゴルフウェアとしてデニム素材を使ったストレッチパンツや綿素材のジーンズ風パンツなどが有名ブランドから数多く販売されている。
こうなると、どこまでが禁止の「ジーンズ」かどうかの区切りが分からなくなっても仕方ない。

「ジーンズ=ファッション」「ジーンズ=街着」というイメージが定着している現代では、パブリックコースや一部のメンバーシップコースで「ジーンズOK」のゴルフ場が出てきたが、まだまだごく少数といえる。

世界中でこれだけ禁止されているのだから、何か特別な理由があるのだろうか?

「ジーンズ」の誕生

誰もが一着は持っている「ジーンズ」。今では、アメリカ大統領や政治家まで愛用している。
ジーンズの歴史はアメリカの歴史とともに展開してきた。
ジーンズのデニム素材はフランスで生まれ、イギリスで織物技術が発展し、アメリカでジーンズの原型が完成したのである。
ゴールドラッシュ
労働着としてのジーンズの誕生は1870年代のカリフォルニア・ゴールドラッシュにまでさかのぼる
当時のズボンは作業中にすぐに切れてしまっていたので、労働者は上部なズボンを欲しがっていた。
そこで、1873年に生地商人だった「リーバイス」の創業者リーバイ・ストラウスが、白い綿帆布にリヴェットを打った丈夫なズボンを開発して大人気となった。これがジーンズの始まりである。その後、素材にデニムが使用されるようになっていった。

1900年代に入ると、当時流行していたカウボーイ映画の影響を受けて、それまでは労働着としてとらえられてきたデニムのズボンがファッションの一つとして定着していく。そして1920年頃、「ジーンズ」と呼ばれるようになった。
リーバイス社の製品が世界に広まるのは1950年頃のことである。

労働着からファッションアイテムへ

第二次大戦後、ジーンズは労働着としてよりも、マーロン・ブランドやジェームズ・ディーンといった映画スターの影響などにより、現在のような一つのファッションアイテムとして認識されるようになる。
ジェームズディーン
1960年代後半、ビートニクの影響やベトナム反戦運動・公民権運動などの社会運動を背景としたヒッピームーブメントがアメリカで起こる。彼らのヒッピーファッションには「自由・反抗」の象徴ともなったジーンズが採り入れられた。
60年代から70年代のヒッピー、パンクなどのムーブメントを通してデニム素材(ジーンズ)はアンチファッションのシンボルとなる。日本でも、70年代には学生運動やヒッピーファッションが流行し、女性も好んでジーンズを愛用、若者文化の象徴になっていった。

しかしこのような流れの中でも、カルバンクラインを始めとして時代を表現しようとするファッションデザイナーに着実に影響を与える。これまでのジーンズは労働着、反社会的なメッセージが強かったが、これに対してデザイナージーンズは、美しさやシルエットをいかにきれいに見せるかという点で「デザイン」されていた。
ジーンズは70年代後半から80年代半ばにかけてファッションデザイナーによって、急速に取り入れられていく。

ジーンズは、自由や反体制に対する象徴的なイメージ、誰もが持っていて大量消費的なイメージ、「色落ち」「汚れ」などヴィンテージを好むイメージ、さらにはファッション性の強いアイテムイメージなど、様々な様相を持ち合わせている特異なアイテムとなった。

このような様々な側面を持つジーンズは、反体制的で自由なカジュアルパンツとして地位のある人々から嫌悪されてきたため、世界中のゴルフ場で禁止されてきたのかもしれない。
アメリカのあるゴルフ場のドレスコードでは「ジーンズ」ではなく「ブルーデニム」と限定して禁止されている。「ブルーデニム」、「ブルージーンズ」に対する反ゴルフイメージは、特に根強いのかもしれない。

「ジーンズ排除」はこれからも続く?

ジーンズの歴史を見ると、王族や貴族から発展した体制的なゴルフの歴史と反目する部分が多く、徹底的に禁止されてきたことは理解できる。しかし、これからも「ジーンズ禁止」は続くのだろうか?

紺ブレやジャケットのズボンとしてジーンズをはく人が数多くいる。ゴルフというスポーツがカジュアル化してきた今、ゴルフ場はこのルールをこれからも変わらずに徹底していくことはできるのだろうか?
ジーパンでプレー
ゴルフの精神において、定められたルール、ドレスコードを守ることは当然のことではあるが、今の時代において、ある特定のゴルフ場を除いては、この「ジーンズ完全排除」のルールを続けていくことは非常に困難なことだろう。
調べれば調べるほどその思いを強くした。世代間のギャップがあまりにも大きすぎるのである。

「ゴルフ場が毅然とした態度をとり、規定は守るものとして応対すればよい」と書かれている本も数多くあるが、多くのゴルフ場の現状を見ると、それもなかなか無理な話。

ゴルフ場だけでなく、ゴルフウェアのメーカー、各競技団体、主催者、プロゴルファー、アマチュアゴルファーの各々が心配りをして柔軟に歩み寄る必要があるのではないだろうか。

デニム素材、またはジーンズ風のゴルフウェアが販売されている現在、「ジーンズ=ファッション」と思っている若い人に「ジーンズは何十年以上も前には作業着だったから」とか「1960年代から70年代にかけて反体制をイメージしていたから」という理由だけで、禁止することはできないと考える。

かといって「破れ」「汚れ」のダメージ・ブルージーンズをはいてくる若年ゴルファーがいると、世代間で分かりあえることはない。

3世代が同じフィールドで楽しめるというのがゴルフというスポーツの一番の特徴である。
このゴルフの一番良いところを維持していくためには、世代間のお互いの配慮がとても重要である。
ジーンズ
世代間のギャップを取り除いて、みんなが楽しめるように工夫していくべきではないだろうか。

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谷光高
専門家

谷光高(ゴルフ場経営者)

新有馬開発株式会社(有馬カンツリー倶楽部)

一部の人が楽しむゴルフから、誰もが気軽に楽しめるゴルフへ。日本のゴルフ文化を変えるため、ゴルフ初心者へのサポートや子どもたちへのレッスン、学校の授業などを行い、初心者にゴルフを楽しむ機会を提供している

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