ゴルフ場の歴史的こだわり! 来場時の「ジャケット着用」
なぜ襟のある服装が必要最小限のマナーとなったのか?
ゴルフにふさわしい服装とはどういう服装なのだろうか?
相手に不快な印象を与えず、上品さや優雅な印象の中にも機能性が宿るものでなければならない。
今この問いはゴルフ界全体において答えのない疑問となっている。
ゴルファーの服装は、スイングと同じように一人ずつ個性があるので異なっていて当然。また個々のセンスや感覚も異なっている。世代間の違いはさらに大きいもの。こういった異なる感覚の中で、ゴルフでの適切な装いを決める方法として考えられるのが、現在に至るゴルフの歴史から見てみるべきではないだろうか。
『なぜ襟のある服装じゃないとダメなの?』
このひとつの事柄をとっても、ゴルフの歴史を紐解くことによって見えてくる。
初期ゴルフの発展に欠かせない「スチュワート王家」の“作法”
「ゴルフの歴史はマナーの歴史である」とゴルフエッセイストである故夏坂健は著書の「王者のゴルフ」で述べられている。
その著書の中で1400年代からゴルフの発展の中心的役割を果たしてきたスチュワート王家(当時のスコットランド王家)には、次のような家訓があったとある。
「相手に敬意を払い、周囲に不快感を与えない服装こそ“作法”の第一と知るべし。服装は自分のために非ず、相手に対する衷心(※意:心の底)からの礼儀なり」(スチュワート家の歴史、第2巻より)
つまり 自分さえ満足すれば、何を着ても良いということではなく、自分の身だしなみを見た相手が、どのように感じるかが問題だということである。
この「スチュワート家」の作法書に従って「服装は己のために非ず、相手に対する礼儀なり」と定めた貴族のゴルフでは、以来機能性より儀典性が重んじられるようになった。ネクタイにスーツ姿でゴルフをするのはつらい話だが、なにしろ相手に対する礼儀が最優先、たとえ窮屈でも我慢するしかなかった。
ネクタイにスーツ姿でのゴルフプレー
スコットランドは典型的な西岸海洋性気候で、冬は緯度の割には暖かく最寒月平均気温は2〜6 ℃。夏は最暖月でも14~19℃程度と涼しく比較的穏やかで過ごし易い地方である。そのような気候とはいえ、ネクタイにスーツ姿でゴルフをプレーするのはつらかっただろう。
その後、1822年に出版されたゴルフのレッスン書には「プレーに臨んで、なるべく腕の付け根に余裕のあるスーツ着用が望ましい。最近ではゴルフ用と銘打って、かなり余裕のあるスーツが売られている」と当時のゴルフウェア事情が書かれている。
現在のような機能性を重視した形状や素材など存在しない選択肢がない中で、少しでも楽にプレーできるように試行錯誤していたということである。
ゴルフウェア革命はアメリカから
ゴルフウェアに革命の嵐が吹いたのは1910年代以降のアメリカが舞台となった。
1888年、ニューヨーク郊外にアメリカ最古のゴルフ倶楽部「セント・アンドリュースゴルフクラブ」が誕生。これがアメリカンゴルフのスタートと言われている。その後、またたく間に東海岸でゴルフが普及していった。
しばらくのあいだ、アメリカンゴルファーはゴルフの伝統に敬意を払って、スーツにネクタイ着用の決まりを遵守していた。
1894年に全米ゴルフ協会(USGA)が設立され、全米アマチュア選手権や全米オープン選手権などの競技会の開催がアメリカでのゴルフ発展の牽引となって、ゴルフ熱に火が付きアメリカ全土に広がっていった。
その後、気候に恵まれたフロリダやカリフォルニア地方に多くのゴルフ場が建設されていく。
気候が良いとはいえ、摂氏30度の猛暑が多い地域でのゴルフである。スコットランドの伝統を守り続けるというのはなかなか困難な話である。まずスーツの上着が脱ぎ捨てられ、ネクタイが解かれ、ワイシャツの袖とズボンの裾が半分に切られた。
全米ゴルフ協会ではこれ以上脱がれることを恐れて「しかし襟だけは付けておきなさい。これはゴルフゲームに対する畏敬の念であり、相手に対する礼儀でもあるのだから」と1927年に「服装規程」を発表した。
「Men must wear shirts with collars.」(男性は襟付きのシャツを着用しなければならない。)
ゴルフウェア革命が本場イギリスにも上陸!そして世界へ
この革命は本場イギリスにも影響を与える。
軽装になったアメリカンゴルファーが競技出場のためにイギリスに乗り込んでいくと、アメリカンゴルファーが試合で勝ち続けた。
軽装でのびのびプレーしたことが勝利につながったと考えられたのである。そこでイギリス人も長年脱がなかった上着を脱ぎ、ネクタイを外し、ニッカボッカーズにはき替えるようになったということである。
とりわけ選手だけでなく、これまで礼服でのゲーム観戦を強要されてきたギャラリーが一挙に開放されて大喜びしたという話しも残っているほどである。
そして、世界的に「男性は襟付きのシャツを着用しなければならない」という規定が確立されていったのである。
これがゴルフにおける服装の歴史の1ページとして「襟付き」ルールができた背景である。
「襟付きシャツ」着用の遵守
この「襟付き」が、現代では「タートルネック」や「ハイネック何センチ以上」とまでに拡大解釈されている。これは自然な流れだと考える。
寒さや紫外線から首を守ることはとても大切なこと。ただし「Tシャツ」などの襟のないシャツは、服装規定で「TシャツでもOK」「服装自由」という文言がない限り、歴史的背景から考えるとゴルフウェアとして着用することは控えなければならない。
また、「ジャケット着用」がルールとして定められているゴルフ場で、クラブハウスへの入退場時にジャケットの下に「Tシャツ」や「タンクトップ」を着ている人を見かける。
ゴルフ場内で「何があってもジャケットは絶対に脱がない!」ということなら何も言えないが、「暑い場合は脱ぐかも・・・」と思うのなら、ジャケットの下にも襟付きシャツを着るようにしてほしい。
ジャケットを着用の必要がないゴルフ場では、なおさら襟付きシャツを着用してほしい。
それが周囲のゴルファーに対する配慮といえる。
これらのことは、それぞれのゴルフ場で服装規定として細かく定められているかもしれない。
初めていくゴルフ場では、あらかじめホームページや直接問い合わせをして確認するようにしてほしい。
■参考資料
「王者のゴルフ」夏坂健著
「ゴルフの歴史」石川洽行著
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※インターネットでゴルフ規則の全文をダウンロードできます。
公益財団日本ゴルフ協会(JGA)サイト
http://www.jga.or.jp/jga/html/rules/rules.html
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