愛情のケチ
相談を受けていて、時々やるせない気持ちになる事があります。
誰も悪くないという不倫と言えば語弊がありますが、時々、そう感じる不倫に出会う事があります。
もちろん不倫自体は不貞行為であり、法律には不法行為ですから、許される事ではありません。
でもその不倫を生む土壌には、「仕方がないな」と感じる事があります。
【事例⓵】生き方が変わってしまった夫婦
関西のある土地での事、その相談者の夫は、印刷業を営む父親から家業を継いだ2代目でした。
父の代の時代は、大変繁盛したらしく、地元ではちょっとした大企業でしたが、息子の代になって売り上げは右肩下がりで、相談者の夫は苦しんでいました。
相談者である妻は、幼い子供を幼稚園に通わせ、一生懸命夫と夫の実家を支えましたが、専業主婦の「支え」というのは夫には「内向的」な内向きのパワーでした。
そこに登場したのがパートとして入ってきたシングルマザーのA子でした。
A子は最初、工場の作業員として働いていましたが明るく積極的なA子は、数字に強く、パソコンも使いこなせた為、その内、発注の事務も任されるようになり、出入り業者との折衝も任せられるようになりました。
そして、A子の居場所は工場から事務室が多くなり、段々2代目社長の秘書のような役割を果たす様になりました。
その頃にはA子は社長のスケジュール管理から、商売のマーケティングのような事にまで口出しするようになり、社長も段々、A子を頼りにするようになりました。
私の所に相談に来られたのはそんな時期で、ちょうど、社長が東京へ出張に行くのに、A子が同行するというのです。
実際、ホテルを取るのも、新幹線の便もA子が全て手配したりして、社長からも絶大な信頼を寄せられていました。
どの世界でも、裕福な中で育った2代目社長というのは、実は弱いのです。
不況を跳ねのけるパワーには欠け、事業を盛り立てるより、保守的になりがちですが、A子は新たな空気を吹き込み果敢に挑戦していくアイデアは、社長の目には新鮮だったのでしょう。
実際、事業の業績も右肩上がりで、出張先では、新たな取引を生んだと言っていました。
こうなると、社長の右腕はA子になり、妻の存在がかすみます。
また妻にとっては、2泊も出張に同行するA子の存在は、歓迎すべきことではなく、夫を責めたりします。
しかし、実際は社長にはA子は公私共々、切ってはキレない存在になっていきました。
倒れかけた事業に新たな息吹を吹きかけ、会社を盛り立てたというA子は、相談者の家庭にも、利益を齎したことには違いが無く、夫はどんどんA子に傾いていきました。
ここで、少し立ち止まって考えましょう。
相談者の夫は、自分が子供の頃、父親の事業の多忙さで、母親も留守がちな中で寂しい思いをして育ったため、自分の子供には、母親が家庭を守って欲しいと願い、相談者はそれを忠実に果たしました。
その結果、専業主婦の相談者と比べ、外に出て働くA子とは、生きていく力も世の中を読む眼も違います。
A子が現れるまでは、夫も相談者の妻を悪く言う事はありませんでしたが、事業が傾いた中でもA子の存在は社長にとっては、無くてはならない存在になりました。
要するにA子は仕事が出来たキレモノだったのですが、2代目の社長というのは、孤独なものです。
家庭に帰って、妻に泣きごとをいう訳にもいきませんが、業界全体が衰退している中で、同じ業界の仲間に相談はできません。
そこで、A子の存在は、ボンボン社長には、心の支えと、事業という社会面での繋がりも強くなっていったのは、仕方が無かった事だと思うのです。
その内、夫は会社に寝泊まりしだし、家庭には帰って来なくなりました。また、お小遣いも豊富に使える社長にはA子と寝泊まりするマンションも借りて、結婚すると夫は言い出しました。
さあ、ここで、昔なら「夫はいつか、熱が冷めたらまた妻の下に戻って来るから、妻は黙って待っていなさい」というでしょう。
でも、現代は、そんな時代ではありません。
3組に1組が離婚をする時代です。
見渡せば中学校のクラスでも3分の1が母子家庭です。
【3組に1組が離婚】
妻が耐えて、夫を待ち続けるというのは、男性が愛人や妾を囲い、あくまでも妻の2番手と言う事で2号さんと呼んだ時代までです。
現代は、不倫を放っておけば、向こうとの繋がりが強くなり、妻との糸が切れてしまうのです。
目の前の愛人にしか目が行かなくなる中、妻や家庭に思慕は寄せません。
「夫はいつか熱が冷めて、妻の大切さに気付いてくれる」なんて、危険な賭けでしかありません。
妻は真面目に家庭を守っただけ。
そしてA子さんも、勤務先の事業を盛り立てる事に一生懸命になっただけ。
妻も、A子さんも誰も悪くないけれど、生きる方向性の違いが不倫を生んだと思えます。
もちろん、ここに善悪だけの線引きをすれば、法的にも判定は出るでしょう。
夫側も、余程、子供がかわいくて、子供と離れたくないというタイプであれば、子供がかすがいになるかもしれませんが、現代は離婚をしても、子供に会う権利は保証されるので、離婚をして平和な関係になった方が、むしろ親子が仲良く会えるという事も言えるのです。
離婚を言い出した夫と、愚直に家庭を守って来た妻は、生き方が違っていったのです。
事業再開は本来なら、夫が自分の力で、掘り起こせばよかったのですが、それは理想論です。
残念ながら離婚にはなるかもしれないけれど、業績が上がったので、妻と子は離婚後の生活も保障されたのです。
では、どうすればよかったか、と言うと、もう少し早くに手を打っておけばよかったと思います。
A子のしゃしゃり出て来た段階で、会社の為、と言ってA子の存在を認めた事に、そもそも見逃した理由かと思います。つまり、A子を排除する方法とか、対策の話ではなく、タイミングを見誤ったという感じです。
でも正直言って、この事案は、どうしたって難しかったと言わざるを得ません。
ただこの事例は、とてもレアなケースです。
私が、指導したのは、夫婦円満に行くノウハウではありません。
とにかく悪あがきをして離婚だけは避けなさい、というアドバイスをして、離婚は回避できたようです。
この相談者は、ある程度の所で、腹を括り、夫婦が修復するという事は少し、横に置いて考えられるようになりました。
離婚を避けられたという事は、夫を待ち続けるという消極的な我慢ではありません。
でも、離婚だけはしないという踏ん張りが出来るようになりました。
夫婦が新婚の頃の様に元どおり、仲良く・・・・なんて高い望みを掲げると、ウェットになります。
耐えて偲んで、という演歌の世界ではなく、とにかく離婚だけはしないというドライな割り切りが必要です。
この相談者からは、1年前も、また相談がありましたので、まだ夫婦は続いているようです。
ラブラブな夫婦という訳ではないですが、今も離婚はせずにいるようです。
この事態が好転するかどうかは、正直言って分かりません。
でも、離婚にはなっていないという事は、その相談者の希望は叶えられたと、一安心しています。
私の所に相談にお越し頂き、私がコンサルサポートした案件は、離婚回避という点ではほぼ、叶えていると自負しています。
でも、何年かしてから、季節の挨拶のハガキが届き、そこには離婚をしたという事が記されている事もありました。
しかし、その文面には、当時の心境から立ち直り、勇気をもって人生を再スタートしたとお礼が綴られてあります。
相談に来られる方は「離婚をした方が良いか、どうか」という事を問われますが、問う段階での本音は、離婚をどうしたら避けられるか、と言う事で、人間は人に問う段階では、心はとてもウェットで、止めて欲しいというのが本音です。本当の意味で離婚はウェットな時には出来ません。離婚を決意される時は、もっとドライに割り切っている段階と言う事を知って下さい。
【離婚を決める時は心は晴れやか】
ある意味、離婚を決める時というのは、人はとてもサバサバしていると、私は感じて来ました。
だから、これを読んで「離婚か否か?」と人に問うている段階で、ベクトルは離婚へ向いてないという事なのです。
ま、余程の事がない限り、人は結婚したからには、離婚を望む人はいないのですが、離婚件数は増えています。
現代の離婚の割合いを思い出して下さい。
実際、年々増加の傾向にありましたので、残念ながら望まなくても離婚は増える一方です。
そんな中、相談に来られた方、全員の離婚を阻止できたか、というとそうではありません。
私は1回のカウンセリングで、今後、どのような方向に向かうかを分析します。
でも、その方向性が離婚だと見た時には何等かの対策をお勧めしますが、それを実行するかしないかはその人次第です。
そして、自分自身では、つい、教訓を忘れ脱線しがちな方は、3か月間コンサルを受けて頂きサポートさせて頂きます。
その甲斐あって、離婚が免れた方は多くいます。
でも中には、自分自身で強い意志をもって、突き進むという、コンサルを必要としない方もいます。
そういう方の場合は、自分で雪かき車のように、自分で結論を出されます。
その結果、離婚を選択する方もいるでしょう。
たった1回のカウンセリングで、生きる方向性を決められるくらい、勇気をもって下さった事に私も感謝します。
また中には私の回答の内容如何に関わらず、やはり自分で考えて答えを出すと言われますが、実は何もできずに、そのまま成り行き任せにされる方もいらっしゃいます。
何もアクションを起こしたくない方の本当の問いは、どうしたら何もしないで解決できるか?というのが望なのです。
この成り行き任せというのは、問題の本質を見極めて進むのならいいのですが、とにかく何もできずに、指をくわえて時が過ぎるのを、タダ、待つという方もいるので、どちらかというと、「その後の悲しいお知らせ」として
離婚の報告を下さいます。
その意味で、やはり離婚を避けられなかったケースと言う方は、何もせず、放置したケースに多いと言えるのです。
せっかく、相談というアクションを取られた訳ですから、その次の一歩を踏み出さないと、相談の甲斐がありません。
つまり、何もせず、今のままなら、今後も今のまんまです。
人生、自分は何もせず、何かを変えたいというのは単なるお祈りです。
おみくじや、おまじないに願いを託すのは お正月の初詣のお賽銭を投げる所まで。
私なども、100円のお賽銭に、幾つもの願いを込め・・・これぞ他力本願ですね。
自分の人生は、自分が決意して、自分が動くしかありません。
じっと待っているだけで物事が好転するなんて事は、ほぼありえません、
また、これからも事例を書いていきますね。
では今日はここ迄。