介護福祉士のボーダーラインについての見解
ベストウェイケアアカデミーの馬淵です。
先日行われました介護福祉士の実技試験が公開されましたが
それについて少し解説したいと思います。
今年度は「車いす移乗」の問題でした。
第25回 実技試験問題
坂田トシさん(85歳)は、右上下肢に麻痺があります。
歩行器型杖で自室へ戻る途中、右膝に痛みを感じたので、歩いて自室に戻るのは「不安だ」と言っています。
坂田さんが歩行器型杖から車いすに移乗し、自室のいすに座るまでの介助をしてください。
車いすの点検は済んでいます。
坂田さんの返事は、「はい」または、うなずくだけです。
(試験時間は5分間以内です。)
【問題の整理】
1.「利用者」の状態
(1)坂田トシさん(85歳)
(2)「右上下肢に麻痺」がある。
(3)歩行器型杖で移動中に右膝に痛みを感じ、歩行が「不安だ」と言っている。
(4)返事は「はい」または「うなずく」だけ。
2.介護内容
(1)歩行器型杖(立位の状態)から車いすに移乗する。
(2)車いすから自室のいすに移乗する。
3.「試験環境について」(試験問題には、表記されていない内容)
(1)介助用車いすが折りたたんだ状態で置いてあった。
(2)自室のいすは、背もたれはあるが肘かけはなかった。
4.試験時間
5分間以内
【ポイント解説】
採点のポイントになりそうな点を「出題基準」と「介護の内容」「制限時間」にわけて考えてみたいと思います。
1.出題基準の点から
(1)安全・安楽
車いすへ移乗、いすへ移乗の際、車いすのブレーキを忘れずにかけたか。
歩行器型杖から車いすへ移乗する際、転倒・強打などの危険を伴う行為はなかったか。
車いすから自室のいすへ移乗の際に、転倒・強打などの危険を伴う行為はなかったか。
(車いすの点検は「車いすの点検は済んでいる」と設問にあるので省略可)
(2)自立支援
「車いすへ移乗」「いすへ移乗」の際に、左上下肢を活用するなど利用者の残存機能を活用する介護を行うことができたか。
(3)個人の尊厳
言葉遣いは適切であったか。
「坂田さん」と名前で呼ぶことができたか。
声かけの際は、目線を揃えて話しかけたか。
(4)事前の説明と同意
「車いすへ移乗」「いすへの移乗」際に、介助内容を事前に説明し同意を得たか。
(5)自己決定
移乗方法の選択など、自己決定を促す声かけができたか。
(6)健康状態の把握
「介護開始前」「車いすへの移乗の後」「自室のいすに移乗の後」などに「気分は悪くないですか」「大丈夫ですか」など、体調に配慮する声かけができたか。
2.「介護内容」の点から
(1) 歩行器型杖から車いすへ移乗
車いすを適切な位置にセッティングできたか。
安全・安楽に車いすへ移乗できたか。
衣服と姿勢を整え、フットサポートに足を乗せたか。
(2) 車いす操作
ブレーキを解除し、適切に車いすの操作を行えたか。
(3) 車いすから自室の椅子への移乗
車いすは、自室のいすの左側(健側)にセッティングできたか。
安全・安楽に左側(健側)から車いすへ移乗できたか。
車いすに移乗後は、衣服と姿勢を整えたか。
※今回の設問は、利用者が右膝の痛みに「不安」に感じている場面ですので、介護方法の選択に迷われた方が多かったのではないかと思います。
積極的に残存機能を活用する方法よりも、「安全・安楽」を優先して行っていくほうがより自然ではないかと思いますが、どのような介護方法でも利用者の同意(「はい」またはうなずく)を得て「安全・安楽」に行うことができていれば大丈夫だと思います。
3.制限時間
「5分間以内」に課題を終了することができたか。
合格基準
今年の実技試験は、昨年と同様、車いすを活用した「移乗」の問題でしたが、「立位(歩行器型杖を持った状態)から車いすに移乗」という場面は初めての出題でしたので、戸惑われた方も多かったのではないかと思います。
後半の「車いすからいすへの移乗」はオーソドックスなパターンでしたので、スムーズにできた方も多かったのではないかと思います。
今年の合格基準は、「歩行器型杖から車いす移乗」に戸惑われた受験生が多かったことが予想されますので、合格基準も例年同様に「約54点」くらいになりそうな気がします。
途中で制限時間を迎えた人も、5分間で実施した内容が、約54%(半分ちょっと)の出来栄えであれば大丈夫ですので、期待をもって合格発表を待ってくださいね(時間切れになったが合格したという方は例年たくさんいます。)