第七話「あえて感じないようにする社会で、私たちは生きている。」

水が飲みたいと思う0.3秒前には、すでにグラスに手が伸びている。
神経科学者リベットの実験が示したように、私たちが「自分で決めた」と思っている行動の多くは、意識より先に始まっている。大脳は、その行動に後から理由をつけている。
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では、私たちの行動を先導しているものは何か。
イメージだ。
iPhoneは展示台の上で、手に取りたくなる角度に設計されている。揚げたてのチキンの映像と音響効果は、今日の夕食のイメージを書き換える。五感から入ってくる情報が、意識より先に身体を動かしている。
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そして、もっと深いところにあるイメージがある。
「いい大学に入れば」「安定した仕事に就けば」「結婚すれば」——その先に幸せがある、と私たちは教わった。
「幸せになりたい」と思う前に、すでに「その幸せの形」をインストールされていた。
教育とは、知識を与えるだけではない。イメージごと、渡される。意識より先に身体が動くなら、そのイメージが「誰のもの」かは、致命的に重要だ。
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情報が溢れる現代において、私たちはしばしば分からなくなる。
心から望んだイメージなのか、外部から与えられたイメージなのか。
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ハーバード大学の研究で、ピアノを弾いたことのない人々がイメージトレーニングだけを行ったところ、実際に練習したグループと脳の活性化パターンが類似していたことが示された。
イメージは、神経回路を作る。
与えられたイメージに神経回路を作られるのか。自分が選んだイメージに向かって神経回路を育てるのか。
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自分の本来のイメージをどう作るか。
まず、本当に在りたい姿をイメージする。いつ、誰と、どんな感情で、どんな香りの中にいるか——できる限り具体的に。そしてその喜びを先取りして、今この瞬間に味わう。
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認知と行動を一致させることは、難しいことではない。
ただ、そのイメージが本当に自分のものかどうか——一度、疑うことから始まる。
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次回は、その選択が社会とどう繋がっていくかを考えていきます。


