見積書を出す前に決まる 沖縄企業の価格交渉を強くする準備
「ぜひ、お願いします」
商談の最後に、そう言いたくなる気持ちは分かります。時間をかけて準備して、提案書も作った。ここまで話したのだから、何とか契約につなげたい。
でも、お客さんからすれば、営業担当者が頑張ったことと、買う理由は別です。
僕は、営業でお願いをして売ろうとは思っていません。売り込むことも、最後に押し切ることも、できるだけしない。
そう話すと、「それでどうやって契約するんですか」と聞かれることがあります。
答えは、商談の最後ではなく、そこまでの会話にあります。
クロージングは、こちらが仕掛けるものではなく、お客さんと一緒に向かうもの。
何に困っていて、どうなればよくて、そのために何が必要なのか。それを一緒に確かめていった先に、「では、これで進めましょう」がある。僕は、そんな営業を目指しています。
会社紹介が終わった。提案書も説明した。さて、何が分かっただろう
例えば、こんな商談です。
最初に会社の沿革や実績を紹介する。次にサービスの特徴を説明する。提案書を一枚ずつめくり、料金を伝えて、最後に「いかがでしょうか」と聞く。
営業として、ひと通りのことはやったように見えます。
ただ、その時間で、お客さんについて何が分かったでしょうか。
なぜ今、その話を聞こうと思ったのか。今のやり方のどこに困っているのか。変えたい気持ちはあっても、何が気になって動けないのか。
そこが分からないまま資料を説明しているなら、やっていることは、こちらが伝えたい情報を順番に届ける「売り込み」です。
会社紹介や提案書が悪いわけではありません。安心して任せられる会社か、何をしてくれるのかを知るために、必要な説明もあります。
問題は、相手の事情が分からないうちから、用意した話を最後まで聞いてもらおうとすることです。
お客さんの悩みが何であっても、説明する順番も提案内容も変わらない。それでは「あなたのための提案」にはなりません。
「何かお困りですか」から、すぐ商品説明に戻らない
では、相手の話を聞けばいいのか。
もちろん、聞くことは大切です。ただ、質問をしただけで、売り込みではなくなるわけではありません。
「人手が足りなくて」と言われた途端に、「それなら弊社のサービスが役立ちます」と説明を始める。これでは、質問が商品説明のきっかけになっているだけです。
人手が足りないと言っても、忙しい時間帯だけなのか、特定の人に仕事が集まっているのか、そもそも減らせる作業が多いのかで、必要な対応は変わります。
営業の相談でも同じです。
「新規のお客さんを増やしたい」と聞いて、すぐにテレアポ代行を提案することはできます。
でも、話を聞いてみると、問い合わせは来ているのに返信が遅れていたり、商談後の連絡が止まっていたりするかもしれません。そうであれば、新しいアポイントを増やす前に、今ある機会を逃さないようにする方が先です。
僕なら、まず直近の一件を聞きます。
「最近の問い合わせは、その後どうなりましたか」
そこから、誰が対応し、何を話し、どこで止まったのかをたどる。「営業が弱い」という大きな悩みを、実際の仕事に置き換えていくんです。
すると、お客さん自身も「増やすことばかり考えていたけど、先にここを直さないといけないですね」と気づくことがあります。
この段階では、まだ何も売っていません。でも、話は前に進んでいます。
最後に押す必要があるのは、途中に置き去りにしたものがあるからかもしれない
商談の最後に、お客さんの返事が曖昧になる。
そこで「今日決めていただければ」と条件を出したり、「ぜひ一度お願いします」と頼んだりする。
その前に、まだ話し合えていないことはないか、考えたいところです。
効果が分からないのか。費用が気になるのか。現場の負担が増えそうなのか。社内で相談する相手がいるのか。それとも、そもそも今は必要としていないのか。
「検討します」という一言の中身は、それぞれ違います。
こちらが説明し終えたからといって、相手の判断材料がそろったとは限りません。
例えば、お客さんが心配しているのが導入後の手間なら、実績をさらに説明しても、その心配は残ります。誰が準備し、毎週どのくらいの対応が必要で、どこまでこちらが引き受けるのかを話す方が、判断しやすくなります。
契約に向かって押すのではなく、止まっている理由を一緒に確かめる。
その結果、「今は見送った方がいいですね」となることもあります。それも、相手が納得して決めるための営業だと思っています。
売り込まない営業は、提案しない営業ではない
ここは、誤解されたくないところです。
売り込まないからといって、相手の話にうなずき続けるだけでは、相談相手として物足りません。
話を聞いたうえで、「僕なら、まずここから始めます」と伝える。その理由も説明する。場合によっては、相手が考えていた方法とは違う案を出す。
そこは、きちんとやります。
例えば、新規開拓を一気に広げたいという相談でも、誰に何を伝えれば反応があるか、まだ分かっていないなら、最初は対象を絞って試すことを提案します。
何を確かめるために試すのか。どんな反応があれば続けるのか。反応がなければ、何を変えるのか。
そこまで共有できれば、お客さんは「営業代行を買うかどうか」だけでなく、「この進め方で確かめてみる意味があるか」を考えられます。
こちらのおすすめを伝えることと、こちらの都合で決めさせることは違います。
提案はする。でも、相手の判断を奪わない。
この線引きが、僕は大事だと思っています。
「では、どう進めましょうか」と聞くことは必要です
クロージングをしない、と言っても、最後を曖昧にして帰るわけではありません。
話を整理して、次に何をするかは確認します。
「まず、この範囲で試してみるということで合っていますか」
「進める前に、まだ確認しておきたいことはありますか」
「社内で相談されるなら、どんな情報があれば判断しやすそうですか」
こうした確認は、契約を迫るためではありません。お互いが同じ内容を理解しているか、無理のない進め方になっているかを確かめるためです。
費用や役割、開始時期、対応できないことも曖昧にしません。話が盛り上がったからこそ、きちんと確認する必要があります。
一般には、こうした合意の確認もクロージングと呼ばれます。
僕が「クロージングはするものではない」と言うとき、なくしたいのは確認ではなく、最後のひと押しで相手を動かそうとする発想です。
商談の途中から、一緒に判断材料をそろえてきた。その続きとして、次の行動を決める。最後だけ、急に営業担当者の都合に切り替えないということです。
提案書を閉じても、話せることがあるか
次の商談の前に、一度だけ考えてみてください。
提案書を開かずに、相手が何を変えたいのか説明できるでしょうか。
そして、そのために、なぜ今回の提案が必要なのか。逆に、今は勧めない方がよい条件は何か。自分の言葉で話せるでしょうか。
そこが曖昧なら、資料をもう一枚増やすより、相手に聞きたいことを考える方が先かもしれません。
営業を教えるときも、最後の決めぜりふだけを覚えてもらうことはしません。どんな話を聞き、何を確かめ、その提案に至ったのかを一緒に振り返ります。
「お願いします」と言わなくても、相手から「それならお願いしたい」と言ってもらえる。そのためには、こちらも、相手が選ばない可能性を受け入れて話す必要があります。
売り込む方が、ある意味では簡単です。用意した説明をすればいいからです。
売り込まないなら、相手の答えによって、自分の提案を変えなければいけない。だから難しいし、そこに営業のおもしろさがあります。
BLUE LEAFでは、営業代行だけでなく、商談の進め方や、社内で営業を教えられるようにする支援もしています。
説明はしているのに、いつも「検討します」で終わる。最後に押すのが苦手で、営業そのものが嫌になっている。そんなときは、決めぜりふではなく、商談の途中を一緒に見直してみませんか。
相談に来た方へ、最後にゴリゴリ売り込んでいたら、この記事が台無しなので。そこは安心してください(笑)。
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