「退職金はいくら残せば安心ですか?」 ― まとまったお金を受け取る前に考えておきたいこと

三重野徹

三重野徹

テーマ:老後

大分で活動しているファイナンシャルプランナーの三重野徹です。

「退職金が入ったら、住宅ローンを全部返した方がいいでしょうか?」

「銀行に置いておくのはもったいないですよね。NISAで運用した方がいいですか?」


50代後半になると、こうした「退職金」に関するご相談が増えてきます。

何十年も働いて受け取る退職金。人によっては、これまで手にしたことのない大きな金額になるでしょう。

だからこそ、

「失敗したくない」

という気持ちが強くなります。

ところが、退職金について考えるとき、
多くの方が最初から「運用するか」「住宅ローンを返すか」といった方法論を考えてしまいます。

実は、その前に確認してほしいことがあります。

今回は、相談事例をもとに、退職金を受け取る前に考えておきたいことをお伝えします。


相談事例「退職金2,000万円をどうすればいいですか?」


今回ご紹介するのは、59歳のAさんです。

60歳で定年を迎える予定で、退職金は約2,000万円の見込み。

預貯金もあり、住宅ローンはあと数百万円残っています。

Aさんは相談の冒頭で、こうおっしゃいました。

「退職金で住宅ローンを返して、残りは運用した方がいいですよね?」

インターネットで調べると、

「退職金は運用しないともったいない」

という情報も目にするそうです。

そこで私は、すぐに運用方法を考えるのではなく、別の質問をしました。

「退職後、毎月いくらで生活する予定ですか?」

Aさんは少し考えて、

「そう言われると、ちゃんと計算したことがありません」

と答えられました。

退職金の使い方は「老後の収支」を見てから


退職金の使い方を考える前に確認したいのが、

老後の毎月の収支です。

例えば、

年金などの収入が月22万円、生活費が月27万円なら、毎月5万円の不足です。

単純計算では年間60万円。

20年間続けば1,200万円になります。

もちろん実際には、生活費や年金額、運用状況などは変化します。

しかし、このように大まかな数字を出してみるだけでも、

「退職金のうち、どの程度を老後の生活費として確保しておきたいのか」

が見えてきます。

退職金は「臨時収入」ではありません。

多くの方にとって、これから20年、30年の生活を支える大切な老後資金なのです。

退職金を3つのお金に分けて考える


Aさんには、退職金を一つのお金として考えない方法をご提案しました。

それが、

「使う・備える・育てる」の3つに分ける考え方です。

① 使うお金

例えば、
・住宅ローンの返済
・車の買い替え
・旅行
・自宅のリフォーム

など、数年以内に使う予定のお金です。

② 備えるお金

・病気や入院
・介護
・住宅設備の故障
・予想外の生活費

などに備える現金です。

③ 育てるお金

10年以上使う予定がないなど、
当面の生活に必要のない資金については、
NISAなどを活用した資産運用を検討する余地があります。

この3つに分けると、

「退職金を全部どうしよう?」

という大きな悩みが、

「このお金は何のために使う?」

という具体的な問題に変わります。

「退職金を全部運用」は慎重に


特に注意していただきたいのが、退職金を受け取った直後の資産運用です。

まとまったお金が入ると、

「銀行に置いておくのはもったいない」

と感じるかもしれません。

しかし、投資には値下がりする可能性があります。

例えば退職金の大部分を投資して、その直後に大きく値下がりしたらどうでしょう。

老後の生活費として必要なお金まで値下がりしてしまえば、不安から売却してしまう可能性があります。

50代・60代の資産運用で大切なのは、

「いくら増やせるか」より「いくらなら値下がりしても生活に困らないか」

という視点です。

住宅ローンは一括返済すべき?


これも非常によくあるご質問です。

「借金がなくなる」という安心感は大きなものです。

一方で、住宅ローンを一括返済すると、手元の現金が大きく減ります。

例えば、定年直後に住宅ローンを完済し、その数年後に、

・自宅の修繕
・車の買い替え
・親の介護

などが重なる可能性もあります。

そのため、

「ローンが残っている=すぐ一括返済」

ではなく、

金利や残りの返済期間、手元資金、今後の支出などを総合的に考えることが大切です。

退職直後は「使いたくなる時期」でもある


もう一つ、意外と見落としやすいのが退職直後の支出です。

長年仕事を頑張ってきた反動から、
「これくらいはいいだろう」
と、

・高額な旅行
・車の買い替え
・リフォーム
・趣味への支出

などが重なることがあります。

もちろん、退職金を楽しみに使うことが悪いわけではありません。

大切なのは、

「安心して使える金額」を先に決めておくこと。

老後資金の見通しが立っていれば、旅行にも趣味にも、罪悪感なくお金を使いやすくなります。

Aさんが選んだ方法


Aさんの場合も、最初は「住宅ローン返済+残りを運用」と考えていました。

しかし、老後の収支や今後予定される支出を整理していくと、

「全部を急いで動かす必要はないですね」

という結論になりました。

退職金の一部は将来必要になるお金として確保し、余裕資金については時間をかけて資産形成を考えることにしました。

何より大きかったのは、

「何のために残しておくお金なのか」が分かったことです。

「いくら残せば安心?」に正解はない


退職金について、

「1,000万円残せば大丈夫ですか?」

「2,000万円あれば安心ですよね?」

と聞かれることがあります。

しかし、残念ながら誰にでも当てはまる正解はありません。

必要な金額は、

・年金額
・毎月の生活費
・住宅費
・何歳まで働くか
・どんな老後を送りたいか

によって変わります。

だからこそ、

退職金の金額だけを見るのではなく、老後全体を見ること

が大切なのです。

今日の小さなアクション


退職金を受け取る予定がある方は、紙に3つの欄を作ってみてください。

・「使うお金」
・「備えるお金」
・「育てるお金」

そして、今考えている支出を振り分けてみましょう。

金額まで決めなくても構いません。

まずは退職金に「役割」を持たせることから始めてみてください。

FPからのワンポイントアドバイス


退職金のご相談で私が特に大切にしているのは、

「受け取ってから考えるのではなく、受け取る前に考える」

ということです。

退職金が口座に入ってから運用商品を探すのではなく、その前に、

年金・生活費・預貯金・今後の大きな支出

を一度整理する。

そのうえで、

「使う・備える・育てる」

に分けると、判断しやすくなります。

退職金は「増やすこと」が目的ではありません。

これからの人生を安心して楽しむためのお金なのです。

まとめ


退職金を受け取ると、

「どう運用する?」

「住宅ローンを返す?」

ということに目が向きがちです。

しかし、本当に最初に考えたいのは、

「これから、どんな暮らしをしたいのか」

ということです。

そのために、

・毎月いくら必要なのか
・年金はいくら受け取れるのか
・これから大きな支出はいくらあるのか

を整理する。

そして退職金を、

使う・備える・育てる

に分けて考える。

退職金は、人生最後の「大きなお金」になる方も少なくありません。

だからこそ、焦って動かす必要はありません。

大切なのは、

「いくら増やせるか」ではなく、「このお金でどれだけ安心して暮らせるか」。

50代のうちから退職後の生活を見える化しておくことが、退職金を上手に活かす第一歩です。

今回のテーマついて質問や相談がある方はみらいマネープランニングにご相談ください。 初回無料相談にてサポートいたします。


新NISA制度や資産形成について基礎から学びたい方は、お金の小学校大分校で一緒に学びませんか?

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

三重野徹
専門家

三重野徹(ファイナンシャルプランナー)

みらいマネープランニング

ファイナンシャルプランナーとしてだけでなく公的保険アドバイザーとしても年金や健康保険、介護保険等といった公的な保障をアドバイスし、将来を見据えた「未来設計図」をお客様と一緒に作るお手伝いをしています。

三重野徹プロは大分朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

お金の不安を取り除き必要なプランを立ててくれるプロ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ大分
  3. 大分のお金・保険
  4. 大分のライフプラン・人生設計
  5. 三重野徹
  6. コラム一覧
  7. 「退職金はいくら残せば安心ですか?」 ― まとまったお金を受け取る前に考えておきたいこと

三重野徹プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼