コラーゲンで結ばれる「美肌」と「歯周病」の意外な関係
4回シリーズの最後となる今回のコラムはクライマックスの「コラーゲン作り」について。
食べた栄養が「消化」→「吸収」→「運搬」され、やっと実(コラーゲン)になる場面です。でもこの場面、必要な栄養素が揃っただけでコラーゲンがつくられるわけではありません。作り手となる細胞や作るための道具となる(代謝)酵素などが必要になってきます。当然、作り手となる細胞は元気のある細胞がいいですし、道具である酵素もきちんと手入れされ整備された状態がいいです。
例えば、元気な細胞をエネルギーに満ちた、と考えると細胞のエネルギー源はミトコンドリアですので、ミトコンドリアがしっかり機能している細胞と言い換えることができます。そしてさらに、ミトコンドリアの中にも複数の酵素が働いていますので、しっかり酵素が機能している細胞ともいえるでしょう。これはある意味当然のことで、ヒトのカラダの中でコラーゲンなどの「モノ」を作るときには化学反応を引き起こす必要があり、その化学反応の起点となったりサポートする役割が酵素というわけです。
「酵素」がコラーゲン作りに直接的にも間接的にも重要な役割をしていることは何となく理解していただけたでしょうか?
なぜ、コラーゲン作りを語るのにこんなにも「酵素」を取り上げるのか?疑問に思われる方もいらっしゃることでしょうがもう少し「酵素」についてお話いたします。
ヒトの体内の酵素は大きく分けて2種類、「代謝酵素」と「消化酵素」があることは以前のコラムでもお伝えした通りです。そして、実際の酵素の種類としては実に1万種類以上!1万3000種類ともいわれています。当然、酵素も様々な栄養素からできていますので何かの栄養素が足りない場合は、十分に機能できない酵素となってしまうわけです。ちょっとは何の栄養素だか気になってきました?
ここは単刀直入に申し上げます。ズバリ!「ミネラル」です。その中でも「亜鉛」です。もともと、酵素自体がその構造に微量ミネラルを含んでいる場合が多いのですが、亜鉛は300種類以上の酵素に含まれているといわれています。1万種類からすると少ないと思われるかもしれませんが、代謝酵素として、細胞内でのエネルギーを作る場面やコラーゲンを作る際の化学反応を引き起こす場面ではなくてはならないミネラルです。ほかにも、マグネシウムなども多くの種類の酵素に含まれており、重要な役割を果たしているのですが、なぜ「亜鉛?」かというと、男女関係なく皆さんが「少ない」「足りてない」からです。正確に言うと、私の医院には歯科でありながら非観血的に体内の各種ミネラル濃度を測定する「オリゴスキャン」という体内ミネラル計測機器があるのですが、その測定の結果、これまで亜鉛が適量以上という方をほとんど見たことがありません。逆に、微量ミネラルでありながら「足りない」「欠乏」である方がほとんどで、かくいう私も最初の結果は「不足」でした。
「不足」だったらサプリで補って・・・・と思われるかもしれませんが、それでうまくいく人はあまりいないのではないのでしょうか?もちろん、足りてないだけだったら補えばいいのは確かです。しかし、足りない理由が摂取量が少ない以外に
・腸の状態が悪く吸収されにくい
・添加物などの摂取が多く、吸収されずにそのまま排泄されてしまっている
などの理由がある場合にはまず行うべきは「腸活」で、それからサプリメント補給です。
ここまで、美肌と健康歯肉というテーマでコラーゲン作りについてお伝えしてきましたが、歯肉だけでなく骨にもコラーゲンがたくさん含まれています。歯周病(歯周炎)は歯肉と骨が破壊されていく病気です。もちろん、原因は歯周病原性細菌ですが、栄養(亜鉛)不足では破壊されやすくなるのも容易に想像できるのではないでしょうか?皆さんも聞いたことがあるであろうインプラントは骨に金属(チタン)を打ち込んで支えにしています。支えとなる骨がコラーゲンリッチで丈夫だといいのですが、栄養不足のスカスカの骨だとしたら・・・最先端の技術も台無しです。
栄養学を学んでいる人たちの中には「カロリーベースの栄養の考え方は終わった」「今からはそれぞれの栄養素に着目して・・・」、と言われる方もいらっしゃいますが、今回お話ししたように食べるだけ、摂取するだけでは「実」にならないことも多いようです。「実」にならないのでサプリメントをいつまで続けたらいいの?ほかに何が足りないの?などの質問はその典型と言えるかもしれません。そういった経験がある方も是非、今回シリーズでお伝えした「消化」→「吸収」→「運搬」→「代謝」の流れをスムーズに機能させることができるよう、食事はもちろん生活習慣など様々な面から一度見直してみてはいかがでしょうか?
今後の皆さんの健康づくりのお役立ち情報になると幸いです。
また、何かわからないことなどあったらお気軽にご相談ください。